海外在住何十年の後、伊豆の山に惹かれて古い家を買ってしまい、 埋もれていた庭を掘り起こして、還暦の素人が庭を造りながら語る 60年の発酵した経験と人生。

移住1年目

小輪
花を植え始めてから私はハタと気が付いた。
私は小輪の花が好き!
小さくて可憐な、花が群れを成して咲くとうっとりしてしまう。

最初にとりこになったのが、リナリアとネメシア。春にメダカが群れるような黄色のリナリアが咲き誇ると、ステップを踏みたくなるほどうれしい。

2色の花弁のネメシアが咲くと、ゴージャスなレースのフリフリ服に見えないかしら?
春にはぜひ咲いてほしいので、リナリアとネメシアをしつこく植えるのだけど、10月には枯れてしまい、次の春にも地面からは音沙汰がない。種もこぼれているのよ。

10月に透明ビニールで囲いを作っても、やはり枯れてしまう。どうも、気温のせいではないらしい。
しつこくホームセンターの花売り場を物色していると、「宿根リナリア」とラベルを発見!私が宿根草に目覚めた瞬間である。毎年、山ほどリナリアを植えて、枯らさなくていい!宿根草なんて素敵、でも高い!

リナリアの次に取り込まれたのは、ガウラ 
道端に生えていたガウラを一目ぼれしてガーデンセンターで買い集め。これはまぎれもない多年草よ。

毎年植えなくてもいいことよ。買ったときは20センチほどの苗だったのが、夏に向かってみるみる育ち、花壇の手前に植えたもんだから奥の勿忘草が隠れてしまった。
しまった!

背が高くなるお花は奥に植えなくては!おばさん、空間認識の発見である。ついでに時間認識も発見した。

背が高くなったり、横に張り出す未来を考え、前後左右に空間を置くべし、。この奥義を発見するまで、ほぼ3年という月日がかかった。

愛しのダーラ
ピンクで小輪の花ならダーラ。
ダーラは小輪でコケティッシュで愛らしい。山の冬を越してくれるのは数株なので、毎年ガーデンセンターを巡回して買い足す。外国産の種がオンラインで一店舗だけ売っていて、でも、種から育ったのはたったの一株。種まきって難しいわ。

朝には高いトーンでなくホトトギスがいる。若い歌い手の気がする。
キンちゃん鳥も歌う。キンチャ-ン キンチャン キンチャン と三回鳴く。たま~にPeople get her  People get her People get herと鳴く鳥がいる。何の鳥だろう?

風が見たい

山梨県の忍野八海(おしのはっかい)なんと雅な名前!ここに行ったとき、人家の植え込みに見事な風知草ががあった。ご近所に何軒も。風知草がこの辺のトレンドらしかった。おばちゃんも、伊豆の山を渡る風が見たくて風知草を植えてみたた。

ベランダの窓から庭を覗いても、風があるかどうかわからない。風知草があれば風が見える。さよさよと美しい風が見える。

これはアミガサ茸だろうか?
チャイニーズ・スーパーで確か見たことがあるわ。そんな高級なキノコがおばちゃん山の庭に生えていいわけ?
レストランでもアミガサだけはかなり、高価な料理だったわよ。うちの庭の日陰に生えてきたブツ。さわった触感はゴムのようにかなり弾力がある。とりあえず写真を撮ってみて、なんか嬉しい。

思えば、前世紀の南加の日本スーパーでは生のナメコはなかったの。赤だしでナメコの味噌汁は好きだったのに。ちっこ~い缶詰のナメコが一缶6ドルで、とても買う気になれなかった。

たかがナメコに、6ドル出してたまるかと。
永住権が取れて、7年ぶりに帰国したらスーパーに袋入りのナメコが山と積まれていて、ナメコだ!わ~い、ナメコがある。とはしゃいだら恥ずかしいからやめてと、姉に言われた。

一時帰国するまで日本で食べたかった食べ物は、シャ〇エッセンとラーメンと日本そば。シャ〇エッセンのような肉製品は輸入制限があって、アメリカで見ることもできなかった。
食べたくて食べたくて、7年間夢に見たシャ〇エッセンを一時帰国の時にスーパーで早速買って茹でて食べたとき、舌はとっくに味を忘れていたのよ。
アメリカのスパイスが効いた肉製品を食べていると、気が抜けて感じられるたのね。悲しい思い出。

今?
今はIn & OutのハンバーガーとCalifornia Pizza Kitchenの4チーズとジャンバラヤそしてPho, Pho, Pho!!!を夢見るわ

カリフォルニア園芸事情または水事情

南カリフォルニアに園芸文化があったかというと、あったのかもしれんが、公でも私でもあまり素晴らしい庭を見た記憶がない。

雨が降るのは冬の12月か1月で1週間くらい。ランチスタイルの一軒家でフロントヤードとバックヤードがあっても芝刈りが面倒くさいとブロックを張ってしまう家もある。

植物があれば、スプリングクラ―や水の供給パイプを張り巡らさないと、カリフォルニアの庭の植物は間違いなく枯れ死する。

庭づくりイコール水やりに必要な水道代を考えるとする。
ウチの水道の請求書はどうであったかというと、2枚つづりの詳細には、ウチの水道使用量・今年1月からの使用量・棒グラフ ”近所の隣人の使用量”の棒グラフが並んでいて、さらに”水道会社が予想する”ウチの使用量”が同じく
棒グラフで予想されている。

ウチが予想量を越して使うとペナルティをくらうんである ー罰金。
さらに、アメリカの罰金システムというのは懲罰的であって、反省がなければ倍になる。つまり、罰金を払っても使用量を減らさなければ、罰金はだんだん倍になるよ?システムである。賢く教育的である。

一軒家にメキシコ系のご一家が暮らしていたりすると弟夫婦も、おじさん夫婦も、ヘタすると従妹とか大人数で暮らしていることがある。シャワーだけでも水を使いすぎて、とても庭に撒く余裕がない。

すると、左右お向かいのお家の芝生は緑色でイキイキ、当大家族のお家の芝生だけがまっ黄色でハゲちょろ、という景観が出現する。

地区のアソシエーションは黙っていない”見苦しい、通りの美観を損ねる・家の価値を落とす”などのワーニング・レターをもらってしまう。
 
ここまでが水事情。

土の事情というと、たしかPearlBuck が書いた

「Good Earth」の2章に中国を脱出した2世代目中国人が、サンフランシスコの地に渡って、
つぶやくシーンがあった。「故郷の黒い土地と違ってこの土地は、 まだ人がそんなに埋まっていない土地」

その当時はこのフレーズが何を言っているのかさっぱり分からなかった。
今ならわかる。

中国の黒い大地は、数え切れぬ中国人が生まれ死んで、それらの体が大地に埋葬され土に返って人間の体の有機物が大地を豊かに黒くしてきた。

カリフォルニアの大地は、新しく発見された土地で準砂漠のガサガサで砂利交じり、ちょっと掘ると粘土質の大地。白っちゃけて有機物が少ない。人間が肥やさず、人間が埋まってこなかった土地なのだ。

カリフォルニア南部の乾燥地帯は、水がなくても耐えられるヤシの木やユーカリ、ジャカランダ、ブーゲンビリアやハイビスカスの生垣がよく見られた。

有名記念館や公園もやせた土地の芝生を緑にしていくのがまず大変。
ローズガーデンと名前をつけても、まばらな葉っぱのバラの木がスカスカに照り返しを浴びているというがっかりな光景が見られるのであった。

その中で、唯一元気であったのは、Desert Parkだ。おばちゃんはどうしても好きになれなかった。
とげのあるサボテン、毛のあるサボテントゲも毛もないサボテン。根っこのなさそうな干物みたいなエアプランツ。日陰のないカンカン照りの埃っぽい庭園?!
サボテンは今でも嫌いだ。

園芸家の12か月

カレル・チャペク「園芸家の12か月」はおかしな人達の話だった。
せっかちでこらえ性がなく、思い道理にいかないことに怒って変なこだわりがある人たち。人を笑っていたころが懐かしい。

11月も終わりになると、伊豆の山も雑草さえ休眠の準備に入る。春のためのチューリップを植え付けるのが最後。寝ている子を起こしてもしょうがないので、春になったら何をするかなぁと空計画を練る。
ブックオフで買った趣味の園芸 宿根草編をなめるように見る。

サルビア系をもっとそろえてみようかとか、カンパニュラの小輪が欲しいとか、クレマティスを生垣に這わせて、薄ピンクの小花がびっしり咲く種類が欲しいなぁと空想をたくましくする。

お気に入りの園芸店を訪ねてみるが、お花はほとんどなくてさびれている。がっかりして、何も買わずに帰る。

1月、
下界の町は水仙が伸びてとっくに花を咲かせている家もあるのに、山の庭は水仙もチューリップも音沙汰がない。朝、寒すぎて庭に降りる気もせず、ああ、霜が5センチもあるのかとベランダから覗く。

2月
イライラして来る。
3か月も庭をいじっていない。暖かい日もあるのだから、チューリップもムスカリももっと伸びていいはずだ。今のうちに肥料をやった方がいいかしら。

3月
春だ、もう春よ。
ガーデンセンターと園芸店をぐるぐる回る。1年草でもなんでも、とにかく花を植えたい。ぱっと明るくなる黄色い花を植えたい。それにしても何故ウチのムスカリは葉っぱがスパゲッティのように長く伸びるのだろう?

4月
チューリップの咲きがわるい。
球の小さいものが悪かったようだ。今から買って植えるのは遅いだろうか?代りにグラジオラスを買って、生垣のすき間に植えてみる。

5月
去年からの園芸計画が評価されるシーズンである。3月に焦って買ってしまったシーズン草はやっぱりすぐ終わってしまうので、宿根草にすべきだった。リナリアが耐寒性・宿根性が出ていたので、
飛びついて買う。ああ、春の花が終わってしまう。しまった、夏の花の準備ができていない。ガーデンセンターと園芸店を回る。

6月
ウの目タカの目草取りの目になってしまう。

雨が降って、1日油断すると雑草が伸びる。ツツジの根の間からドクダミが生える。雨が降ると庭を見ながらぶつぶつ言う。

7月
よそのお宅では咲いていてヤキモキしていたグラジオラスがやっと咲く。
〇が少ない通知表をもらったようだ。ウチの子もなかなかだと思う。

8月
山の緑に負けそうだと思う。真夏の花は期待していたより少なくて、もっと植えておけばよかったと思う。植え木が伸びすぎて枝を伐採するときだ。しまった、切りすぎて日陰のヒューケラが丸出しになってしまった。西日が強すぎる。何とかしないと。それとも高温に強い花を探さねば。

9月
庭はまだまだいける。
菊の株が少ないかな。もっと増やすには、クロッカスをどうにかしないといけない。台風よ!

10月
また台風よ!ウチの庭にも紅葉するツタがあればよかった。春に手に入れことにしよう。
チューリップも八重が欲しい。ガーデンセンターは球根が出はじめる。

11月
雑草が伸びないわ。
土が固い。掃いても掃いても落ち葉が出る。もう嫌。

最初に戻る

熱い人

中伊豆で園芸用の土を買い来年の春用のマーガレットの苗を買って、でもおじちゃんはいい葉物の苗がないという。
三島の園芸店で買ったブロッコリーは一番元気がよくて三島のお店に寄りたいという。

三島の園芸店は敷地の半分がメダカ屋さんになっていて、えらく高そうな金銀のメダカがひしめいている。あとから来たお客さんが店主らしいおっさんにパンジーやビオラはまだないの?と聞くとおっさんはオヤッということを客に言った。

奥さんね、ほかの店ではビオラがもう出てるのは知ってるの。あるのよ。でも俺は売らないの。なんでかっていうとまだ気温が高いのよ。いまビオラやパンジーを買うと1週間で2倍に伸びちゃうよ。冬の花は気温が20度を切らないとダメ。だからうちにはまだないの。

おばちゃんは2人の会話を背中で聞いていてふう~んと思った。2週間前にビオラを植えちゃって、ひょろひょろを伸びた
茎を見るととても来年まで持ちそうになかったから。

おじちゃんの白菜の苗をお会計してもらうときに思い切っていろいろ質問してみた。

おば:パンパスが欲しいんだけど。

おっさん:パンパスの植え時は、春だぁ。

おば:じゃあ、春に買う。

おっさん:仕入れてもいいけど根つくかどうかわかんないよ。修善寺から三島までだいたい同じような気温だけど、
5度を切ると根つかないかもしれない。ダメなものはダメなんだね。土地には土地にあった植物があるんだ。

おば:なるほど。

おっさん:それとね、昔と気候が違っちゃったのよ。夏の気温が半端なく高くて、、。生活も変わっちゃったのよ。今の若い人は共稼ぎでやっと家を買って、庭に庭木を植えてももう手入れができないでしょう?

夏の庭は暑すぎて水もやれないし。だから、庭を造る人がいなくなって年間で2000店園芸店が閉店してるのよ。うちも昔は売り場が倍の広さだったんだけど、縮小したのよ。

おば:(は~ん、それで半分メダカに宗旨替えしたんだ)じゃあ、気温が高くなっちゃってるから、冬のお花はいつ買ったらいいの?

おっさん:11月だね。11月になったらいろいろ入るから。

おば:私はヒューケラがすごく好きなんだけど、うちの庭にはどうしても元気よく育たないの。どうしてだろう? かんかん照りがだめだから垣根の根元に植えたの。

っさん:土壌でしょう。ヒューケラは木の根元に植えたがるのよ。みんな。でも木の根元っつうのは根が張ってるのよ。ヒューケラが根を伸ばせないのよ。

おば:!なるほど!
(20年物の満天星ツツジの根元は根が張りまくってておばちゃんは浅くしか植えられなかった。)

おば:でもうちの庭は西日がかんかんに当たるので、日影がいいとおもったから。

おっさん:ヒューケラはね一ぺん根つけば、西日くらいへーき。土壌が大事なのよ。

おばちゃんは、今までの疑問がぱ~っと溶けて植物を熱く語るおっさんに目を見張った。

おばちゃんはこれまでなん十株というヒューケラを買い、写真に映えそうな苔の生えた溶岩石の根元だの、桜の根元だの、シダと苔が張った山際だのに植えてきてことごとく失敗して枯らしてきた。

園芸店でヒューケラを買い足してそのたびに、また、そいつ?とおじちゃんに嫌味を言われながらそれでも私はヒューケラが好きなのよ、さし芽で増やそうと2年頑張った。庭のどこかできっと育つはず!!!と懲りずに植えてきた。

親父の代から数えると、60年園芸店をやってるという。気候と社会が変わっちゃって園芸への情熱を半分メダカに移さざる得なかったおっさんに敬意を払って、おっさんの店に通うことにしよう。

実をいうとメダカも好きだ。
おじちゃんとおばちゃんは結婚した後に5年以上熱帯魚に入れ込んでいたから。

春先に植えた時と3分の2のサイズになってしまったヒューケ。アジュガを半分抜いてヒューケラのナーゼリーにしてみた。

ここは山の土じゃなくて園芸用の土でできてる場所なので、多少日当たりは悪いけど回復してくれると信じたい。

ダイバーシティ

おばちゃん、玄関でしゃがんで一心に草取りをしていたら郵便屋さんが来て、ハローって言われてしまったわ。しょっちゅう海外郵便が来るから、もともと疑われていたわね。

コロナの前でも熱海の梅園に梅を見に行った時に、売店のお兄ちゃんにハローって言われたから、二人とも雰囲気が変なのかしらね。

お兄ちゃんも客商売で熱海の観光客を長年見え来たはずで、たぶんおばちゃんたちは日本人に見えなかったのだろう。服装と表情と身のこなし。

おじちゃんの顔は大陸か半島か?区別がつかない風の顔で、オレンジ・カウンティでも日本語をしゃべると、日本語がお上手ですね?って言われてたし。

私はジョイスによると、どこのProvinceか分からないけど、絶対大陸の中国人顔なんだそうだ。中国スーパーでもしょっちゅう中国語で話しかけられていたしね。まあ英語をしゃべれば発音で日本人ってばれちゃうけど。

おばちゃんは客商売をしていたから、最初の一瞥でアジア系のお客様なら、顔の輪郭と目、頬骨などから中国系、韓国系、ベトナム、タイを大体75%~80%判別できる。声をかけて声を聞けば95%くらいまで識別可能だわ。

たまに韓国系でも日本人そっくりの人がいて母方のおじさんのまんまの人がいてどう聞いてもおじさんがしゃべっているとしか思えない人もいるのよ。新家のおじさんじゃない?

ところがアメリカで生まれて育った2世になると物凄く識別が難しくなるのよ、同じアジア系なのにね。
ファッションはアメリカンキッズだし、声を聴いても訛りが無いからね。

日本人でも2世顔があるけれど韓国と中国も2世代目は顔の輪郭が変わってくるの。主に食べるものの違いであごの発達が変わってくるのね。だからみんな2世顔になる。

この山の住人はそれほど人種は賑やかではないわ。色んな人がもっといてもいいのにね。おばちゃんたちがAwayな気分もちょっと薄らぐかも。

このブログの書き始めは、日本語がなかなか出てこなかった。
ぽつぽつとしか書けなかったのに、書けば書くほど日本語がbrush upされてきて、その代わりのものすごい速度で英語の綴りがダメになるのよ。

bussy ってたしか”S”だよね”z”じゃないよね?簡単な単語すら出てこなくなるからものすごく怖い。
スピーチもメタメタというより、喋ってないから!だって、人がいないし。

Toeflのテストの有効期間がたった1年てのは驚いたけれど、それはそうだわ。言語能力なんてあっという間に消えゆく能力かも。

税務調査 Audit

アメリカでスモールビジネスを立ち上げたら、10年以内に大抵税務調査が入ると言われていた。
幸いおばちゃんが選んだ会計士はIRSを退職した優秀な会計士だったので一度も調査に入られたことがなかった。

起業して5年以上生き延びられる企業は25%という統計があったから、たとえ監査が入っても入る程長く経営できるのはそれなりに誇るべきことかもしれない。

知り合いのご夫婦はレストランを経営していたが、調査に入られた。
この店には3か月に1度くらい、ローカルのTaxOfficeからシステム異常で督促状が届くのだそうだ。

ローカルのTaxOfficeもシステム異常は把握していて”督促状は無視していいよ”、と言っていたにも関わらず、(州のOfficeは異常を直す努力はしなかったようだ)夫婦して律儀に、売り上げとTaxReturnのコピーを持参して件のローカルオフィスに説明に行っていたのだという。

おばちゃんは、へぇ?督促状が届くたびに行くの?
そう。
どのくらいの間?
15年間。
えぇ! だって督促状は無視していいって言われていたのでしょう?
そう、でも心配だから届くたびにオフィスまで行っていた。

この律儀な夫婦に税務調査が入った。どう考えてもIRS側がなにか怪しんで調査に入ったとは思えず誰かが密告したのだとかしか考えられない。
アメリカの日系社会は狭くて人間関係が繋がっているから、誰かに恨みを持たれて無いこと無いことIRSにリポートされる場合がない訳ではない。

もしかしてこの人があそこの会社の内部情報をIRSにリポートした本人ではないか、との疑惑を持たれている人の名前も聞いたことがある。

なぜかというと、疑惑の人が務める会社に調査が入り、かの人が辞めて次の会社に移るとやはり調査が入った。不思議なことに、2つの会社の調査の時期に彼女自身は夏休みだとかで日本に滞在中であったのだという。

おばちゃんの知り合いのご夫婦のレストランにかの疑惑の人が勤めていたと記憶はないが、とにかく調査が入ったのであった。

IRSから通知が届く。小売業なので調査のオフィサーがやってきて1週間キャッシャーの背後に立って売り上げを監視したという。

お女将さんは内心大いに修羅場だったと思うが、そこは客商売でよくできた人だったから、調査官の飲み物などに気を配り、調査官も調査後半にはこんなことは不愉快だろうがちょっと我慢してね。と形だけ監視の体制になったという。

調査の1週間の売り上げとそれ以前2年間の売り上げを比較しても何らの異常が無く調査は終了した。IRSが紳士的であった例は極めてまれだと思う。

えげつない調査の話も聞いたことがある。会計監査をする権利はどうかすると営業するショッピングモールのリース契約に盛り込まれている場合がある。テナントのレントだけでなく売り上げのコミッションなどがついている契約がある。
人の往来がある人気のショッピングモールは売手市場である。OC地元だった某大手不動産は市のほとんどのショッピングモールを所有し、横柄横暴で有名だった。

そこに中華スーパーがオープンし当時人口の20%以上がアジア系であったので、スーパーは当たった。そこでモールのオーナーの不動産屋が売り上げが少ないと調査に踏み込んできた。

スーパーのキャッシャーを全部開けさせ集計した。この時の屈辱と恨みで中華スーパーは市内に独自で土地を取得し中華ショッピングモールをオープンした。現在、この市はさらにアジア系人口が増え、おばちゃんが帰国を決めた時で33%で市長がベトナム系になっていた。

白人系は家を売って南のアジア系の少ない土地に逃げ始めた。
土地を持って逃げることができない某大手不動産屋は人口比が変わっても営業を続けるしかないが、キャッシュを持っているのは中華系で、中華系のテナント入居希望を排除をしていてはテナントに穴が開く、ほ~ほっほっ、。。

中華 対 サメ の戦いに
おばちゃんは高みの見物だと思うのである。

山の家と除湿器

おじちゃんとおばちゃんは乾燥に強い。
真夏のヒートウエーブが襲ってくると、唇がひび割れ笑うと切れて痛い。口を開けるとひゅっと口が乾く。まつ毛が枝毛になる。

脱水をしたジーンズをうっかりベランダに掛けて忘れていると、2時間でカリカリに固まる。そういう元は砂漠みたいな土地で何十年もさらされているうちに、皮膚の皮脂腺が多分活発になって乾燥に拮抗した結果だと思われる。

今はTVで加湿器のCMが盛んだが、ウチにはない。除湿器が今も稼働している。

ぽつんと一軒家が大人気だが、山に移住する人に一言言っておきたい。山の家は湿気る。ウチの家は足がタカイタカイしているので、まだマシのはずだが、夜服を脱いで床に放置すると朝起きた時にじんわり湿った感じがする。

山の自然というのはヒノキ、杉木、シダ・クマザサなど草木に囲まれていて、なおかつ呼吸する黒い大地の上に家が建っている。だから冬でも湿気はある。

山側に面する窓は一年を通して開けない。家の構造で外に近い押し入れは物がカビるので注意。
ホームセンターで売っている「湿気取り」なんて気休め。2.3Lの除湿機を入れて稼働させると一晩で水が満杯になる。

うちよりさらに標高の高い所に家を建てた人によると、皮製品は置き場所がどこであろうとすべてカビが生えたと言っていた。
革靴と皮のバッグが全滅。その家は富士山を独り占め!と真正面に見えるほど景観が良いのだが、標高が高いので下の里で晴れていても、家ではうっすらと霧が漂っていたりする。

平らな大地で基礎の上に建てられている。が、コンクリートの基礎を深く打っても湿気というのはコンクリートから
這い上がってくるらしい。夏でも空気は涼しいがカラッとしているわけではない。

おばちゃんの家は足がタカイタカイをしているので、湿気についてはまだましなのだがなんせ砂漠から来たイラン人と同じで湿気が気持ち悪いので真冬でも除湿器をかける。

山の向こうのミカ子さんチは、ダ~ンと駿河湾を見下ろせる崖に建ってるすごい家だ。すごいというのは豪奢という意味ではない。ベランダから身を乗り出しすぎると、相模湾に転げ落ちそうな崖に建っている。

玄関は道路に面してリビングに入れる。突き当りの窓からは濃紺の相模湾が見えて遮るものは何もない。ついでに床下も何もない。高所恐怖のおばちゃんは窓際に寄れない。こんな素晴らしい景色って見られて幸せとミカ子は気に入っている。

斜面に合わせて部屋があるのでお風呂とトイレは階段を下りる。日本に来れないときは家が湿気るので、ホームセンターに行ったら「水とり象さん」とか「湿気とり」を見つけてものすごく感心し、(だって、そんなもの30年前にはなかったから)
こんなすごいものが日本にあるんだ!と驚喜していくつか買い込んで押し入れにいれたから大丈夫と安心していた。

コロナ騒ぎでラスベガスから来れないので家じゅうカビちゃうから早く来たほうがいいよ、とおばちゃんが注意を促すと、「湿気取り」があるから大丈夫と言うので、そんなもん役に立つかい、一晩で1L以上水がたまるのにと念を押した。

おばちゃんは今日も押し入れの除湿器のスイッチを入れ、布団乾燥機のホースをベッドとマットレスの間に突っ込んで湿気を追い払っている。

12月についにミカ子は山の家を売ったとLineが来た。コロナでおいそれと日本にこれなくなって売りに出したらリモートワークで別荘地の物件が大人気でたった1週間で売れてしまったという。

アメリカで起業する

アメリカの移民はスモール・ビジネスが多い。
なんでか?
アメリカの企業が雇ってくれないからだ。英語に訛りがあって、米国の大学卒でもなく、正体も分からないからだ。だから、移住者は自分でビジネスを始める。
屋根屋、洗濯や、大工、電気屋、レストラン、ヘアサロン、不動産屋、会計士、弁護士。

客から考えた場合、
同じ日系人のビジネスなら騙されないという安心感がある。いい加減なことをすれば、狭い日系コミュニティですぐ噂が広がるし、多少高めでも行くのである。アメリカでスモールビジネスを起業すると、同胞は客として見込めるのだ。

永住権を取得していて技術があって資金があるなら、アメリカで起業をすることはさほど難しくない。一番簡単なのは、すでに稼働しているビジネスを買い取ることだ。

ショッピングモールを観察して洗濯屋でも、これ!といったビジネスが欲しければフラワーショップでもギフトショップでも、不動産屋が売買を仲介しいてくれる。

自分の手持ちの資金でビジネスの規模が決まる。
10万ドル、20万ドルの規模なら小売店のパパママで経営するビジネスの経営権が買えるだろう。
流れを書いてみるなら
まず、自分の資金で手が届くビジネスを見つけたとする。不動産エージェントに連絡し、相手オーナーに買いのオッファーを出す。相手からカウンターオッファーが返ってくる場合もある。
買い手売り手双方が金額に同意したとして、次のテージはモールの審査だ。

モールの管理会社が新テナント候補の審査をする。むろん審査を落とす場合もある。資金・資産不足、経験不足など。
インタビューの予約を取り、(審査予約で申請料を取るモールも多い)自分が経営することになるビジネスモデルを作成してインタビューでプレゼンテーションをする。

事務能力・スピーチ能力に自信のない人は会計事務所とか弁護士に代行を頼むこともできる。小売り・サービス業を開業しようという人間が事務能力とプレゼンテーションの能力がないとは、はなはだビジネスの将来が頼りないのであるが。

審査には資産状況、学歴、職歴の開示が必要なのは言うまでもない。アメリカでの逮捕歴や交通違反でもDUIなどの違反が出てきてしまうと、ビジネス・ライセンスが下りない場合がある。

モール側の審査が通れば不動産売買の仲介会社Escrow会社が間に立ち、売り手と買い手の双方に売買のアサイメントを指示してくる。

買い手はエスクローが支持してきた手続き:会社の設立、営業名称の登録、ビジネスライセンスの取得、銀行口座の開設などをこなしていく。

連邦は州のライセンスを取るのにさらに面接があったりするわけだが、必要フォームに記入して提出するだけのライセンスもあるし、辛抱強くこなしていけばライセンスは取れる。時間が多少かかるライセンスもある。

営業に必要なライセンスがすべて取れたら、次は実際営業をするテナント内部のリモデルの計画を遂行する。業者に必要な見積もりを出し業者の選定をし、営業開始日からさかのぼって施工の予約をる。

言語能力?そんなものはできるのが当たり前のこと。

言語能力だけあって実務能力がなくてもこれまた困るのだが。日本で生活している中国人、ベトナム人イラン人、が何ができて何ができないか?
他国で生きていくために何が第一に必要か彼らを見れば答えがわかると思う。

タックス・リターン

トオル君はその時まだ未成年で学生だったから、TaxReturn/税申告はお父さんとジョイントだったと思う。
バイトのペイロールからごっそりひかれていた税金が戻ってきたと喜んでいた。次の年、アニメ関係であぶく銭を稼いだけど、お父さんに扶養家族になれと言われて、またタックス・リターンでちびっと税金が戻ってきた。

”夏には日本のコミケ行くんすから。航空チケット代を稼がないと。”
アニメグッズでおいしい思いをしたので、2世仲間と会社を作って日本のアニメグッズを輸入して売ろうという夢を見始めた。

トオル「おばちゃん、会社を作るにはどうしたらいいんですか?」
おば「個人会社だと簡単だねぇ。Retail License を取って、ビジネスネームを登録する。銀行口座はそれでできるから
物を売るの? 
「ふ~ん」
おば「それから、タックス・リターンはセールの額で違うからね。」
トオル「タックス・リターン?」
怪訝な顔のトオル君を見て、おばちゃんぴ~んと来た。

おば「あんた、所得税のIncome Tax申告だと思ってるだろう?」
トオル「4月にガバメントから帰ってくるやつでしょ?」

おばちゃんはチッチッチッと顔の前で人差し指を振り
「Wroooong! あんたは2つの勘違いをしてる。第一にIncomeタックスではなくて、Salesタックス/消費税よ。小売業だと消費税が発生するから。

毎月か3か月に一回タックス・リターン。第二にタックスを返してくるのがガバメントだと思ってるでしょう?

間違い!
消費税はもともとガバメントの物なの
それをガバメントの代わりに小売業が消費者から徴収して、ガバメントに返すReturnするのがタックス・リターンとアンクル・サム(古いな)は考えている。
自分の物だと思ってるから、消費税を申告しない奴、返さない奴はどこまでも追っかけてくるよ」

トオル君、ワンコがスカンクの屁を嗅いだように憮然としていた。おおかた、片耳で聞いたいろんな控除を使えば税金なんかへいちゃらと考えていたに違いない。Wrooong!

文化のはざま

あなたは異文化をどこまで許容できるだろうか?或いは、自分の文化をどこまで守って、どこから先は移住国に合わせられるだろうか?

リセッションでガラガラになったショッピング・モールに入ってきたビジネスはいくつかあった。モールの管理会社にとっては、金を持ってさえいれば猿でもカバでもよかったのかもしれない。

新しくネイル・サロンが入った。ベトナム人経営のビジネスで、雇われている女の子は最低限の英語しか話せない。しかし、指先が器用で料金が一番安いので、ベトナムのネイル・サロンは割と人気なのだ。
客はほとんど白人だった。オーナーはおっさんで、店にいたことがないのでモールの誰もがほとんど知らなかった。

ここからは、ジャネットの情報だが、おっさんは一言も英語が分からないのだという。YesもNoも言えないのだという。

管理会社のローランドとフレッドがノーティスをだしたり、電話を掛けたりしてもおっさんは英語が分からないので、一切通じなくて困っていた。

唯一英語がわかるのは、おっさんのハイスクールに行っている娘だけ。ええ歳をしたローランドとフレッドが娘を捕まえようとするのだが昼間学校に行っているので、大変らしい、と。

ベトナム人が馬酔木を縁起の悪い木として嫌がってモールの馬酔木を枯らしてしまったことがあったが、おばちゃんはベトナム文化にいちゃもんつける気はなかったし、それはネイル・サロンの美観の問題であったのでスルーしていた。

ところが、困ったことが出てきた。
ある日おばちゃんが裏口をあけてリサイクル缶に空瓶を捨てた時、ベトナムの女の子たちが何かを地面に撒いているのを見てしまった。これが初めてではなく、何度か同じ光景を見た記憶があるが調べなかったのだ。

この時は、いったい何を撒いているのだろうとおばちゃんは見に行ってみた。むろん、女の子たちが全員引っ込んだ後で。

米だった。
おばちゃん、深田祐介も、近藤紘一も大好きだったから何をしていたかわかってしまった。彼女たちは野生の雀に餌をやっていたのだね。ベトナムなら放生すべきところ、放つ生き物もいなかったからせめて養うため/生かすために米を撒いていたのだと思う。

これは困る。
たぶん先進国ではみんな衛生基準に引っ掛かる。米はRodentsを呼び寄せるのだ。平たく言うとネズミ。ネズミが居つくとビジネスが困る。保健所がでてくる。おばちゃんは管理会社のフレッドも大嫌いだったけど、これはビジネスの存続に関係するので報告するしかなかった。

彼らにとっては生き物がスズメだろうが、ネズミだろうが、ゴキブリだろうが一視同仁。生きし衆生を慈しむのは仏教を生きることだったと思う。ベトナムならOKなんだろうけどね。

アメリカは自由の国だ。
それぞれの宗教信条は尊敬を払われるべきだったけど、この場合は衛生基準にさわらない方法にしないと。動物園とか、保護施設とかに金銭を寄付するとかね?

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