変身したい

ピアスの穴を開けに行こうかと思う。

お婆、65歳過ぎやないけぇ。今さら何を考えとんじゃぁ?!
来年66歳でおます。それがどうした。

アイ子ちゃんともよく話すのだが
・人生やりたいことをやる。
・新しいことに興味を持つ。
・新しいことを試してみる。
・できなくなったことはくよくよ考えない。
とか、いろいろ続くのだが、近頃、冬の時間はたっぷりあって、そのくせ庭は休眠に入ってしまう。
気温が低くなると外出もおっくうになって、コタツムリで動画をあさるのも倦んでくる。
ムンク」の「叫び~」みたいな気分になってくるのだ。

そうだ!気分を変えたい。身なりを変えてみたい。美容院で髪型を変えてみようか?ショートにでも?とおじちゃんに提案した。
おじちゃんも私も前世紀からポニーテール一本。

お気に入りの美容師さんが東海岸に行ってしまったり、ある人は日本に帰国するということで行きたい美容院が少なくなってしまった。

その後起業して美容院に行く絶対的時間がなくなった。
通勤を含む仕事時間が13時間睡眠時間が8時間。残った時間が3時間で食事とその他を済ませる。社交時間はゼロ。そんな生活だと美容院に行く時間が惜しくて惜しくて、2005年12月から美容院に行くのは諦めて、お互いの髪を切りっこして済ませてきた。

いま時間はたっぷりあまっている。日本の田舎は美容院と車屋はよりどり見取りだ。プロの美容師なら毛先をきちんとそろえてくれるだろうし、髪染めもうまいに違いない。
おばちゃんは自分が提案したにも関わらず、なんだかいまいち気分が乗らない。

何故か考えたら、一ぺん行ったら3か月ごとに美容院に行き続けると思うとなんだか面倒くさい気がする。歯医者のチェックはおっくうでないのに。
あれこれ注文を付けていいのだろうか?仕上がりが気に入らなかったらどうするのだ。チップはいくらか払うのか?そんなことを考えているとますます気分が乗らなくなった。

もしおばちゃんがショート髪の素敵なシニア化に失敗し、老けた和田アキ子になったらどうするのか。おじちゃんもそんな予想を思い浮かべたのかもしれない。知り合った19の時からずっとロングヘアだったよ。(ショートだと後ろ姿で男と間違われるんや)今更ショートにしなくても。

なんだか変身願望は不発ですっきりしないままNetFlixで前から見ようと思っていた「The Old Guard」を見た。
これぞ私の見たかったかっこいい女
Charlize Theron!

もともとこの人の顔がむっちゃ好きなのだが、The Devil`s Adovocateではブロンドのあどけなくキュートなキアヌの妻だった。NYにキアヌがヘッドハントされた後は弁護士の専業妻としてだんだん神経を病んでいく。舌ったらずな英語で泣き窶れていくキャラは“役”なんだが、なんか違うと思っていた。この人はあどけなく美人なだけの人ではないのではないか。

そこでThe Old Guardである。
クールで冷酷で強靭これぞ私のヒーロー。
ブルネットのショートヘアーは戦う役にピッタリである。後ろ姿はほっそりとした青年とも見える。おばちゃんの体系みたいな。

白人の頭は長頭でショートにしてもカッコいいが、昭和生まれの日本人おばちゃんの頭は絶壁なので、後頭部にボリュームを持たせて刈り上げるとか、、。
あかん、ますます和田アキ子化しそうだ。

ショートヘアでも女性とわかるものとか、、、そうだピアスがあるではないか。
若い時はバイク乗りだったのでイアリングをつけるとメットがかぶれなかった。だからピアスをつけることは考えたこともなかったのだが。
美容院はちょっとペンディングにして、先にピアス穴を開けに行ってみよう。ぴらぴらしたピアスをつけてみたかったのよ。

追記

検索して見つけた近場の整形外科に電話をかけて、ピアス穴を開けたいのですがと言うと、どなたか知り合いの方がいらっしゃるのですね、と受付に言われた。
違うわい。アタシが行くんや。

屋根の葺き替えと冬支度

今朝は5度だった。
ウチは平屋だというのに12か所もある窓。傾斜地にタカイタカイをしてる家なので、床下は空気=外気温だ。12月に入ったことだしそろそろ窓の冬ごもり支度をしようと思う。

先週は屋根の張替えのために足場が組まれてしまった。家の周囲をすべて足場が取り囲み、どこの窓からも足場の鉄柱が見える。トイレの窓やベッドルームの窓から大工さんや屋根屋さんとコンニチワができる体制である。

皆さん朝が早そうだからベッドルームのおばちゃんの寝起きとか、リビングでパジャマとダウン姿など、見苦しい姿をお見せしては申し訳ない。オフィスは雨戸を閉めてエアシートで窓を隙間なく封鎖した。トイレの窓もふさぐ。お風呂は庭がよく見えて露天風呂気分になれる窓だが、1月にはバスタブに氷が張る冷凍庫並み気温なので外から断熱材のスタイルフォームを張ってしまう。

洗面所もエアシートで覆い断熱パネルでふさいでからカーテンを閉める。キッチンとよく使うデッキの窓はふさいでないが冬眠用の薄暗い穴倉のような冬支度が完成である。これで気温が4度あったかい。

屋根の葺き替え工事で心配なのは紫音。
人がいるはずのない屋根や窓の外から物音や振動や人声が聞こえたら神経質な紫音は怯えるに違いない。
足場ができたからには外の外壁もペイントし直すのがベストなのだが、今回は雨戸の戸袋だけおじちゃんが自分で塗りなおしたいという。

傾斜地なので平屋と言えど、ベッドルームの外は2階建ての2階分に相当する。試しにおじちゃんが足場を歩いてベッドルームの外の戸袋をチェックしたところ、紫音はうなり声をあげてリビングに逃げた。人がいるはずのない外から人影が見えたので仰天するのも無理はない。これはちょっと厄介かもしれない。

屋根の葺き替え作業自体は正味2週間くらいのものだが天井から音がしたり窓の外から人がのぞいたりした紫音の神経が持たないかもしれない。
テンは?

FIPから生還したアメショーのテンはキャットタワーで爆睡していた。微動だにしない。
足場が組まれていくときにはテンは驚いておじちゃんに助けを求めるようなそぶりを見せたが、大丈夫よと言ってやるとうなるようなことはなかった。

猫友のY子さんが、アメショーってちょっと頭が悪くない?って聞かれたが、正直なところ、おばちゃんもアメショーは鈍いのではないかと感じてる。そこがかわいいのだが。先代のテンも去勢手術のためにクリニックに連れて行ったところ、手術が始まるまでキャリアーで爆睡していたそうだ。だから先生には大物と呼ばれていた。

超食い意地がはったシャムの紫音と比べると、テン・ジュニアはちょっとスローな末っ子という感じがする。

来週から大工さんが作業を始める。

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古家、屋根の張替え始動2

不動産屋のKさんがまた見積もりを手にしてやって来た。
よかったですね、切りがいい数字にしてくれました。

よかった!数万円浮いた。
家のリフォームで町の補助金が出ないかと調べたのだが、建築年が昭和XX年以前なら町の指定建築業者で耐震診断書を出さないといけない。
考えてみればわかる。耐震構造にもなっていない家に補助金を出して地震でつぶれれば、補助金を捨てたことになる。だから町は耐震診断書を出させるのだ。おばちゃんの古い家にはそんなもの出るわけがないので自腹でやるしかないのだ。

おじちゃんが心配していることが一つある。
屋根の吹き替えにはテレビのアンテナを一時撤去するはずだが、そうすると工事中はテレビが見られないのではないかという疑問である。

Kさんに確かめてみると、やっぱりアンテナを下すんだからテレビは無理でしょう。でもネットを光にしてたら有線が家まで来ているから、いっそテレビも契約に追加したらどうですか?と言う。そうしたらアンテナなんかもう必要ありませんから。

そういわれればそうだ。
光ケーブルで固定電話とネットを契約しているから電話して聞いてみよう。すると工事は3週間ほど待つそうだ。

ここから夢が広がり、いっそスマートテレビにしよう、NetFlixをテレビで見られる。電気店によれば今の東芝を下取りしてくれるという、500円で。リサイクル料5000円を支払うよりはましだ。

一番先にテレビ契約と工事を済ませてしまい、それからスマートテレビに買い替えて屋根の吹き替え工事中もおじちゃんはテレビを見ていられる。

不動産屋のKさんはなんだかウキウキしていて、今はXXXさんの別荘の後始末をしてるんですという。XXXさんはおばちゃんも日本のテレビで見たことのある人である。ご高齢で現役を退いて山荘を売却し、Kさんは中身の処分に頭を悩ませている。

値打ち物はすでにご家族が引き上げた後だが、おびただしい衣装や用品を始末せねばならないらしい。スパンコール付きの衣装などちょっと引き取り手もないので困っているんです、と嬉しそうに言う。
はは~っ。なんだか楽しそうだ。

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駐在員時代

●”会社は家族” 説が崩壊した日

米国年金の秘密1

1ドル151.43円である。

そろそろ日銀の介入が入ってくるかしら?円ドル為替の高値・低値を毎日記録しているのだが、月が替わってそろそろ危ない。
米国年金の振り込み日が迫っているからである。

今日なまじ151円を超えてしまったから、ここで介入されると支給日に150円を割るかもしれない。微妙なところだ。
150円で入金されると、米国年金・標準モデル夫2000ドル /月を仮定すると、日本円で30万円/月 になり、妻が配偶者年金とすると、夫婦で3000ドル=45万 /月になる。

レートとしては非常においしいが、住民税・健康保険料・介護保険料が半端にならない金額になってくる。

おばちゃんはすでに猫FIPの治療費として軽中古車一台分を使って年内に屋根の吹き替えを行うので税金分のへそくりが出ていく。あ~ぁ。

以前の記事でも書いたが米国年金のリスクは為替リスクである。
SSAからのドル送金を日本の米国系銀行で受けるとその日のレートで日本円に変換されてしまう。この点は待ったなしである。ドルのままで置いといてんかぁ、と言っても選択肢はない。有無を言わさず現地国の貨幣に交換されてしまう。
(帰国前に年金受給の手続きをして米国内の銀行で受け取るならドルだ。)

レートがいい時なら大歓迎だが、リーマン不況の時は80円を切ったのだから、リスクヘッジはしたい。もし可能だったらドルでドル口座に入金+キープし、レートが好転したときに円に替えられるのにねぇ。現在日銀は金利1%を目安にしているが、日本経済がデフレを脱出し金利が上がれば日米の金利差が縮小していずれ円ドルは相応のレートに落ち着くだろう。これが為替リスクだ。

というわけで月初めの為替レートは要注意だ。(米国年金は毎月振り込み
税金が安くならんかなぁ、と調べてみるのだが、、。
まず日米租税条約で2国間の二重の税支払い発生することはないことになっている。つまり米国で所得税を支払ったら日本での所得税の支払いは免れるということだ。

SSの年金決定通知の金額と振り込みの金額を見ると源泉徴収として税金は引かれていないようだ。そのまんま。ところがSSサポートページなどを見ると、収入が年金だけの場合、タックスリターンの必要もないと書いてある。別のページでは夫婦ジョイントなら支給額の半額プラスその他の収入を足した金額が35000ドル以下なら所得税はゼロとある。
その他の収入とは日本の年金も入るのか?為替レートはいくらで計算されるのか?

もし、仮定として「年金X1/2+その他収入<35000ドル以下」なら米国内で非課税、$0を納税したとしてW-2などを手に入れられるとする。すると日本では$0を納税済みとして米国年金は申告しなくてもよいのか?

日本の国税局・海外年金の申告条件としては「源泉徴収がされていない海外年金は確定申告で申告義務がある」とある。
米国ですでに$0を納税の場合は、この条件に当てはめれば申告の義務がないのではないかと思われるが、。ところがこの「源泉徴収」を深堀していくと、この源泉徴収は「日本国の源泉徴収」だということが分かった。

はぁ?!
米国からの振り込みに日本国の源泉徴収が介入できるはずがないではないか。つまり米国年金収入は日本の税務署に申告せねばならない。米国内で所得税を支払ったならそれを証明する書類をつけろと、。さらに帰国者先輩諸氏が日本国相手に訴訟を起こして敗訴しているのが分かった。

まあ、そうだろうな。
日米租税条約はまず所得税の2重払い免除するものだが、日本の住民税や国民健康保険とは無関係だから。租税免除で米国年金額を申告しなければ、日本の健康保険と住民税の課税対象収入が分からない。日本は所得税よりも国民健康保険と住民税が高いのである。

米国年金は管轄地の年金事務所を通して米国大使館に申請することになっている。これは受給者が申告漏れを起こさないように管轄事務所が受給者をがっちり把握するために決まっている。


駐在員諸氏は駐在年数がたとえ数年でもSS米国年金を受給できることがある。駐在年数X200ドルなどという書き込みもある。少額でも申告の義務があるので心するように。
次はだれも書かない米国年金の禁断の秘密2

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アメリカの年金を申請する

Notice of Award 来た~

米国年金 番外編

古家、屋根の張替え 始動

さて不動産屋のKさんは屋根の吹き替え修理の見積もりをもってやってきた。
会社のヘッドレターで。なんや、Kさん、会社を畳んでへんかったのか?

いやぁ~、来ましたか。
大変な金額になりました。驚かんでください。
こういう金額になりました。

流しの屋根屋が最低でもこのくらい、と言っていた金額である。ふ~ん。やっぱりこんなものか。おばちゃんが驚きも怯えもしなかったので、Kさんはおやっと思ったみたいだった。

Kさんはどのくらい自分の手間賃を乗せているんだろうか?
Kさんが帰った後、おじちゃんとあれこれ推量した。
家の登記は帰国直後の住所でされているから、この際現住所に登記変更もしていた方がいいでしょう、とKさんは先回りして住所変更申請の委任状まで作成してつけている。申請料の二人分4000円だけだから代行料はいりません、実費だけでこれはおまけです、ということか。すると実質のKさんの仲介料は15万くらいかなぁ?

明日委任状を取りに来た時に、オンラインでいま着手金を振り込むので10万まけて、と言ってみよう。通るかな?

ニュースのヘッドラインでは来年は建築資材が爆上がりするそうである。インフレがヒタヒタと押し寄せているし、コロナのせいでユニットバスや便座やらいろいろ品薄になった後、暴騰していたのを知っていたから今年中に屋根の張替えを済ませたい。

おじちゃん、これでうちの屋根は30年大丈夫ね、南海トラフさえ来なければ。

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コタツよ永遠に

たかがミカンされどミカン

おばちゃんの世界発見 YouTubeの窓から

最初はロシアかと思った。
太ったばあちゃんはスカーフをかぶって野外のキッチンで肉を刻んでいた。顔は白人系でスラブ系とも見えるし。東ヨーロッパかな。

ばあちゃんは次に粉を取り出し卵を割り入れると水を足してこねだした。パンを作るのだろう。2次発酵が済んで綿棒を取り出すと小口に分けたドウを伸ばし始めた。
アレ?ロシアではないな。

伸ばした生地は直径40から50センチ、厚みはパイ生地くらいである。薄いパンね、、。
これが四角ならイラン系か、それとも小さな丸形ならピタパンでトルコ系か?
野外キッチンの周りの風景はなだらかな草原である。オリーブのように見える木があるかも。ロシアよりずっと気候があったかそうだ。

おばあちゃんはかまどの上に平たく大きなフライパンを置き、伸ばした生地を焼き始めた。ロシアではないな。トルコの近く?
牧場の仕事が終わったと見える野良着のじいちゃんが大きなジャグを持ってきてかまどのそばの金属製のポットに水を注いだ。ポットの口に口金をセットすると真ん中にかまどから火ばさみで取り出した燃えかけの薪を入れた、2本。

あっ、これはサモワールではないか!
するとこの国はロシアの南だろう。はて、。

ばあちゃんは濃い紅茶をカップに注いでサモワールから湯を足した。紅茶は薄めるものなのか?
ふ~ん。紅茶カップはウグイス色の地に何かの幾何学模様である。お世辞にもあか抜けていない。トルコの東、。黒海の北。アルメニアとか、。
この辺でおばちゃんの地理知識がつき、チャンネルのアカウント説明を開いた。アゼルバイジャン!なるほど!

あちゃんは大葉のように見える野草の葉っぱを摘んでいた。大葉に似ているが大葉と断言するには雑草に似ている。
ばあちゃんは大ざる一杯の雑草を刻んでそこにたっぷりの溶かしバターで炒めたみじん切りの玉ねぎを加え、生卵を二つ割り入れて混ぜた。

おばちゃんは雑草が気になってキャプションにでた「Nettle」を調べた。毛が生えたイガイガの、、。えっ!まさかイラクサ?あの雑草を食うのか?!!

ばあちゃんは粉を取り出し卵を割って捏ねてまとめるとラップで包んで寝かせた。アゼルバイジャンにもラップはあるんだ。生地を小さくちぎって小さな綿棒で伸ばした。小皿ほどの大きさに。

おお!これはまさか!
まさかの餃子でないか、いや、アゼルバイジャンならペリメニかも。
ばあちゃんはスプーンでイラクサ餡を掬うと皮の真ん中に落とし二つ折りにして端を閉じた。時々襞をつけたりしてどこからどう見ても餃子である。中身はイラクサだが、。
ギ酸があるとか危険とか翻訳に書かれているが、婆ちゃん、大丈夫か!

ばあちゃんは包んだ餃子をかまどの鍋で茹でた。
じいちゃんも食卓にやってきて大皿からイラクサ餃子を自分の皿に取り分けた。

それからテーブルの真ん中に置かれた青染付のボールから木のスプーンで白いソースを掬って餃子にかけた。多分サワークリームであろう。じいちゃんは嬉しそうにフォークを握ってイラクサ餃子を食べた。
う~ん、味の想像が付かん。

世界発見
Kənd Dadı | Taste Village
https://www.youtube.com/@kend-dadi

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ロングビーチ ルート47 

馬酔木

united フライト3411

心が疲れた時は

Set foots to others shoesという慣用句がある。

他人の靴に足を入れてみる、、、他人の気持ちを考えてみる という意味だが、。

もしこの人の靴に足をそっと入れてみて歩いてみたらどんな気がするだろう? この人の人生に成り代わってみたらどんな風かしら?と、それ以上に解釈したいときもある。

文字通り他人の靴に足を入れてみて、その生活の一編を味わえる個人動画がYouTubeにあふれている。
コタツから一歩も出ずに他人の靴に足を入れて人生を覗きみちゃうのね。

テンのFIP治療、屋根の吹き替え、車の修理、Thinkpadの買い替えなどがつづいて、おばちゃんもヘロヘロ笑ってばかりいられなくなってきた。おばちゃんは35歳で酒もやめてしまって庭も休眠で草取りもできず気を休めるものがない。

スイッチを切ってしまいたい。
手術の全身麻酔はまこと最高だった。プチンと意識が途切れる。マイケル・ジャクソンがはまった理由もわかる。あ~あ、意識が切れたらいいのに。ブラウザーでお気に入りを巡回しているとOff Gridと、キーワードが目に留まった。
Off Grid !ええやん。

斧一本を手にして北極圏の針葉樹林でシェルターを建てる男。文明から逃れて山の岩陰に一人入れる避難小屋を作る男と犬。手にしているのは斧かノコギリ。明かりはロウソク一本。
はぁ、静か、、。

動画サイトのおすすめはOff Gridばかりになり、ふと気をそそられたのは、アジア系のお姉ちゃんが竹を切る動画である。竹を切って家を建てている。

竹で家を建てる?
おばちゃんはぐっと興味をそそられた。どうやらベトナムのようだ。
竹藪やバナナが無造作に生えている野っぱら。ベトナムお姉ちゃんが手にしているのは無骨なナタである。

ナタをふるって竹をたたっ切り穴を掘って支柱として建てる。竹を割って枝折り戸のように編んで壁と垣根を作る。屋根を葺くのはその辺にいくらでも生えているニッパヤシの葉だ。

竹で家が建つのか?!
何もなかった野っぱらに竹の家が一軒建った。電気はない。
昔、曽野綾子がバナナの育つ国では人はたやすく生きていける、との意味を書いていたが、おばちゃんはそれを、バナナを食べれば生き延びられると解釈していた。どうやらもっと広範囲の意味のようだ。

バナナが無造作に育つ気候の国では、竹も無造作に伸び、年中タケノコが育ってヤシの実、果実、山の芋、カエル、淡水貝などが無造作にとれる。

Ly Thi Caというプリプリとした健康そのもののお姉ちゃんは、無尽蔵の竹を切り出して鳩小屋、ヤギ小屋、鶏小屋を作る。太い竹を縦に割れば犬や猫や家畜のご飯皿代わりになる。
タケノコは茹でて塩漬けにすれば保存がきくし、タケノコを刻んで塩と唐辛子を混ぜて調味料を作り、また竹は節をぬけば樋となって渓流の水が引ける。
建ててよし、食べてよし。竹はバナナより活用の幅が広いのではないか?

二の腕もぱっつり張った健康そのもののリー・チー姉は庭や畑では裸足だ。冬に長袖スエットを着るくらいで、半そでのシャツ姿。土間の竃には長いままの竹を燃料としてくべる。きちんと切りそろえて薪にせんでもええんやで、という新鮮な常識!果物のチェリモヤに似た釈迦頭を枝からもぎ取って皮を剥き、その場で無造作にかぶりついて、タネはぷっと吹き飛ばす。衒いもない自然体のリー・チー姉さん。

ある日、近所の製粉所に出かけていくと米を買いその場で挽いてもらってさらに麺にしてもらっていた。ベトナム・フォーだ。角がなくソウメンのように丸いやつ。もしかしてブンというやつかな。おばちゃんは人生でベトナム麺の製造過程をこの目で見ることができるとは思ってもみなかった。NHKよりよほど有益である。チャンネル登録をした。

ジャーナリストで作家の近藤紘一は、かつてベトナム駐在派遣員の時にベトナム女性と結婚した。彼がジャーナリストとして著作や会社業務で悩んでいるときに、ベトナム人の奥さんは、辛かったら会社なんか辞めればいい。ベトナムの田舎ならコメとヌクマムがあれば生活費がかからないから、と彼に提案していたが、リー・チー姉さんをみるとどうやら本当だ。

リー・チー姉さんが飼う豚やヤギや鶏は小柄だがみんな健康そうだ。挽いたトウモロコシやミミズ野菜くずなどを食べ庭で走り回って育っている。人生、生きていくには大したものはいらないんだ。必要なら竹で作ればいい。

おじちゃんも姉さんの動画をタブレットで見ている。
時々この動画は誰が撮ってるんだと疑問がわく。
おじちゃんは絶対映さない母屋に衛星アンテナと太陽光パネルと最新型マックがあるんじゃないか?と毒を吹き込むので止めてくれと思う。

心が疲れた時のおばちゃんのおすすめ動画は

イギリスの草刈り動画Home Renovation Dreamer
Off Gridでシェルターを建てるLuxon Bushcraft 
アゼルバイジャン村の生活Kənd Dadı 
ルーマニアのJohanna’sさんDIY
トルコの獣医 Tugay İnanoğlu
ベトナムの粉瘤つぶし(とても器用で手際がいい)

別荘地に冬の兆し

とうとう来た。
屋根の吹き替えである。

おばちゃんはこの家が気に入っているが築年数は経っているので、屋根と水回りと浄化槽の修理はそのうち必要になると心づもりしていた。

スレートの塗装は10年持つと塗装屋が言ったのに、台風や豪雨が多くて猛暑も劣化を速めたようである。そろそろヤバイなと思っていた。

台風は来んかな?集中豪雨は来ないか?
台風19号の時は、この別荘地でも被害があり水道が止まり、道路が崩れて家が一軒がけ下に落ちた。

災害である。
自然災害には火災保険が使える場合もある。税の控除も使えたりする。
経年劣化は何もない。持ち出し。うむ~。
助成金はないか?外壁塗装や耐震工事の助成金はあるが、屋根はない。何もないのだ。

去年と今年は台風が来そうで来なかった。
お向かいの桜の木は誰もトリミングをせず、電線ネット回線などの上に野放図に張り出しており、雨の後には枯れた枝が重くなりポキンと折れて電線を切断する。それで今年の6月には停電になった。また枯れ枝は道に落下して道路をふさいだりする。

バイト先の主任は雨上がりの朝いちに出勤すると山の生活道路(昔の樵道か?)に一抱えもあるブナの幹などがド~ンと落ちていて自分ではとてもどかせないので一本道をバックで麓まで下りていくのだという。山の生活あるあるだ。

台風などで風が強ければお向かいの桜の枝が吹き折られて、おばちゃんチに飛んでくることもあろう。
もし枝が飛んで屋根を突き破れば自然災害である。保険がきく。被害が広域であれば役所で災害認定・被災証明が取れる。税金が安くなる。
台風が来んかなぁ?と胸算用をしていたのだが、天はおばちゃんを中心に回ってなかった。

それでこの間の雷雨の時にとうとう雨が漏った。広域災害が出るような豪雨でもなかったから被災でもない。これはもう自分で治すしかない。うむ~。

家を買った時の不動産屋Kさんに電話をしてきてもらった。

ガリバリュウム合板ですかね。
そうなるよね。
おばちゃんたちもカリフォルニアでビフォア・アフターを見ていたのである。近所にも屋根の上にガリバリュウム屋根を張った家を見ていたので、一番簡単かなと思っていた。
屋根屋と工務店を連れて下見に来るという。

そうしたら数日後ワンボックスが道に止まり若い作業服の男の子が下りてきておじちゃんと話している。不動産屋手配の工務店ではなかった。流しの工務店であった。

この山の別荘地では塗装屋、屋根屋、工務店が流しているのである。別荘地の中を車で走りながら家を見てどんな修理が必要か持ち主と話して名刺を置いていく。

おばちゃんが見るところ、山の別荘地の住人(定住者)の1割は工務店である。
別荘の修理に必要な工務店がそのまま住み着いている。
別荘を建てたいと思う人は懐に余裕がある人であった。特に昭和末期から平成にかけて、バブルの資金にあかせて趣味や好みを詰め込んで建てた別荘地の家であるのだ。

今や持ち主も代が変わり、何度も補修やリモデルもなされた別荘であるが、その当時の建築や補修を請け負った工務店が、これぞという物件が売り出されたときに買って住んでいたりする。

話を戻すと、その流しの工務店の話には適当に付き合い、大雑把なところガリバリュウム屋根の相場を聞いた。やはりこちらの心づもりの金額と近い。相場が分かったから、あとはKさんと工務店と修理内容を詰めていくだけだ。

若い流しのお兄ちゃんは、不動産屋紹介の工務店だと不動産屋が手数料を取ってるでしょ。と言う。
それは承知の上だ。
工務店は仕事を紹介してくれたKさんにいくらか礼金を払うだろうが15%のアイ子ちゃんほどではないだろう。

Kさんは、この間亡くなったお向かいの順子さんに40年前に家を世話した不動産屋さんである。
以来、修理を手配し庭木の伐採までまるで便利屋のように順子さん使われていた人である。もう72歳でとっくに不動産会社は清算し、生活に不足はないので手数料が目的ではない。動いていないと死んでしまう人なのだ。
そのうち下見に来るだろう。年内に吹き替えが住むといいなぁ。雑損益は使えるかしらん?

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胆嚢がん 1年4カ月 

テンの治療も終わりが見えてきた。
おばちゃんは、おなかが痛い。
3週間ほど前から、背中と右わき腹が痛い。微熱と下痢。
なんだろう?胆管炎だろうか?9月の検査まで待つのをやめて予約の前倒しをした。

おじちゃんにちょっと調子が悪いから明日は病院に行くと言うと、殴られた子犬のような眼をして黙ってテレビを見ていたが、しばらくすると眠ってしまった。

次の日、病院はお盆の直後で台風がやっと通過したばかりだったから患者が待っていた割には血液検査とCTは早めに済んだ。

血液検査の結果は、炎症はなし、CA-19 は6月より上がっているが正常値。CEAも正常値。内臓に怪しい影はない。背中が痛むのでと言うと主治医は背中を触診して、どこかで捻りましたか?と聞く。

胆管炎の可能性は?と聞くと、胆管炎は高熱が出ますが痛みはないと言う。
おばちゃんは何だろう?もしかしてアレかな?

バイトは立ち仕事だったからぎっくり腰予防に腰痛ベルトをしている。日本に帰国してきてから新しい腰痛ベルトを買ったのだが、その時たまたま商品のMサイズが売り切れていて、SとLしか残っていなかったので、Sサイズを買った。ちょっと短かった。

悔しいのでおばちゃんはふんっと息を吐いてからベルトを締めて仕事をしていたのだが、もしかしてそれが悪かったのだろうか?

見栄をはってSサイズのベルトをきつく締めたのが肝臓に悪かったですかね?と
タヌキ主治医に言うと、
いや、そういうことで痛むことはないですよ。
主治医はケケケと笑った。重くなりがちな診察室の空気を少し明るくしてあげた。

遺伝子パネル検査は結局この病院でできるのかどうか。`6月に主治医は調べると言っていたのに、宿題をしていなかったようである。もう一度調べてみると言った。

おばちゃんも調べものついでに、病院のウエブをチェックしたら胆のうガン患者数が掲載されていた。ここの消化器外科では年間十人だそうだ。意外と少ない。

おばちゃんが貴重な患者のデーターを増やして差し上げるから、主治医に少し興味を持ってもらえるといいのだが。


手術前の診察では、胆のうガン患者の術後の成績はどうなっていますかと質問をしたのだ。その時の主治医の返事は、「手術と外来で手一杯。患者の予後までとても追っかけて記録していられないのでわかりません。」とぬかした。

年間たった10人の胆のうガン患者の予後など記録をとるまでもあるまいが、。どうせ半々だから余計なことは言うまいとしたのだろう。ホント、大事なことは何も言わぬ主治医だ。

とりあえず痛みからくる不安はなくなったので、おじちゃんとスーパーに寄って帰ることにした。テンの投薬は来週が最後なので、終わった後はどこかに出かけたい。次の朝も暑かったが、おじちゃんとどこへ出かけるか考えていると、玄関のベルが鳴った。

ベルが鳴るのは宅急便くらいだが近頃何も買っていない。おじちゃんが玄関に出ると、家を買った時の不動産やさんKさんが居た。

Kさんが運んできたのは訃報だった。
お向かいの中野のおばちゃんが亡くなって明日告別式だと、、、?!

おばちゃんは中野の本宅を耐震構造に改築中で、山の家にそろそろ来るはずだった、台風も通過したことだし。おばちゃんは82歳だったけど、音大の声楽科で鍛えた声は語尾までよく通り朗らかで、死の影なんかどこにもなかった。
先月は心臓の動脈が細くなっていて動くと息が切れると自分では言っていたが、何せ声に張りがあるのでおしゃべりをしているといつも年齢を忘れるのだった。

おばちゃんが主催しているコーラスの生徒さんは、おばちゃんより年齢が上の人も多くて、本人はいつまでも生きるつもりだった。来月に心臓のステント手術の予定だと言っていたし、何しろ長生きするつもりだから、自宅の耐震工事もやっていたのだ。

山の家にやってきて、庭仕事が一段落すると、静岡のおいしいお茶とおばちゃんのお土産の東京の銘菓をいただきながら、おじちゃんが帰ってこいと電話があるまでおしゃべりを楽しんでいたのに。

中野のおばちゃんが居なくなったら、わたしは、誰とおしゃべりをしたらいいのか?
赤いおそろいの長靴を履いて、宿根草の手入れをするはずだったのに。
困るわ、順子さん。

園芸素人が6年目を語る

長文ですーーー

おばちゃんが美しい5月の今日に、記事をしばらくぶりでアップする理由は、庭仕事が好きな人にはぴんと来ると思う。
雨だからで・す。

そうなんです。雨で明日も雨で庭に触れません。五月は1度しかないのに。
去年の今頃は手術が終わって退院したばかりかなぁ。今年はリベンジのために毎日お庭に出ずっぱり~のつもりだったのに。雨!
明後日にならないと雨がやまないらしい。つまらない。

ただ、ここんとこあちこち体に支障が出てるので2日くらい休養もいいかな。
右手首がすごく痛くて手箕を持とうとすると痛みが走る。ハサミの使い過ぎだろうか?毎日花柄を切ったり、グラスを切ったり、切りすぎ?
昨日は右耳の後ろがズキズキと痛くて、吐き気もしたので昼食を飛ばした。Advilの片頭痛用も効かなかったので、夕食後におじちゃんにマッサージをしてもらったら左の肩が特に凝っていたようだった。

園芸動画では、終わりかけの芝サクラは花柄を切ったほうが次の年きれいに咲くというので、バリカンでやれば一気に終わってしまうから、夜なべにシュルシュルとお婆が研いだ花切狭でサクサクと芝サクラを切ったね。

汚い花びらを残すよりハサミで切り落とすとすっきりする。冬の間、コタツ寝たきり老人で動かなかったのに、いきなり朝から晩まで好きに手や足を動かしたので体が悲鳴を上げたのかもしれない。


園芸はN〇KよりUtube
動画は勉強になる。
6年前、山の家を買うまでは雑草一本抜いたことがなくて、宿根草も1年草の違いも知らずに、花というのは咲けば種をつけて次の年にまた出てくるものだと思っていた。
それは大いに間違いだったのだが、勉強になると思った日曜日の朝のN〇K―趣味の園芸を毎週5年間見てもちっとも勉強にならなかった。N〇Kの番組はどうしてあんなに退屈なのだろう。

園芸王子の三上君はかわいかったが、彼から覚えたのは「植えるときは3角形」だけ。
おじちゃんはそれすら覚えず、ユリとチューリップを植えるときはいまだに碁盤の目だ。きっとかわいい三上君に嫉妬を覚えていたためだろう。

おばちゃんはコンピューター・オタクだったのに、Utubeの動画は苦手だった。
せっかちだからだ。

文字であれば要点だけを抑えてあっという間に情報をとれるのに、動画ときたら本題に入る前ダラダラと前振り。要点がどこから始まるかわからず、イライラして見てられないのよ。
30分の動画があっても重要な情報・画像は3分くらいだったりする。ちがうか?

それでも見る価値がある動画はあったわけで、おばちゃんは庭から引き揚げて記事を書いていた時間のかわりに、ずっぷし園芸動画にはまるようになった。
土の選び方とか、差し芽の仕方とか、たい肥のやり方とか。

個人庭拝見!なんて思いもかけなかったものも発見。
個人の庭だから何が出てくるかわかんないから。120年経ったサイロが庭に2塔あるとか、川が流れているとか。バラが屋根まで覆いつくそうとしているとか。うむ~、深い。

ブームと本物
日本というのは流行があれば日本全部が染まってしまう。
憧れの木がブームになると、園芸屋さんではブルーベリーの苗とオリーブとオーストラリアの樹木でいっぱいになってしまう。

おばちゃんはカサカサの元砂漠の州から帰ってきたから、今更オーストラリアの樹木を見てもこれは乾燥した土地に合う木だから、雨の多い伊豆にはそぐわないと思う。ブルーベリーには苦い思い出があるので育てたくない。日本で育てるブルーベリーはあまり大きくもなく甘くないし。

オリーブの木は乾燥しているカリフォルニアには気候も合ったのだが、ショッピング・モールのオーナーは、リモデルの後植えられた駐車場のオリーブの木を見てIt’s not enough fancyといいやがって、オリーブは全部引っこ抜かせた。

代わりにマグノリア(風と共に去りぬかよ)で陰鬱な黒い葉っぱだけの木が植えられた。
正面にはCherry Treeなら素敵というので、どんな木かと期待したら馬酔木だった。
なんだこれ。Marina Del Reyのヨットハーバーのロット付きの豪邸に住む現役の弁護士で、モールのオーナーにはオリーブの木より馬酔木がおしゃれだったのさ。

んで、憧れというのは人それぞれ違うもの、だが日本の気候風土を考えず憧れを植えてしまうのは感心しない。だって、似合わないもの、周囲に。

家の反対側にはエノコログサやスカンポやススキが生えてんのよ。道の向こう側は日本よ。
自分の庭だけイギリスやオーストラリアにしてもね。

正直、カリフォルニアの植物相は美しいとは思えなかった。州の州木はJoshua Treeで15号線の砂漠で見たけど、禿げかけの病気のサボテンかよって。

カリフォルニアの日系テレビではあるCMがあった。
「あなたの中の日本が不足してませんか」っ~の。


このCMを聞くと、そういえばしばらく日本食を食べてないけど明日のランチはお蕎麦を食べに行くか、とか、xx Gardenに和風庭園があったから久しぶりに行ってみるわけだ。

すると、妙にピンクが濃い桜があったり、日本灯篭が白っぽくカピカピで、これまたヒネこびた松のそばに建ってたりするわけ。盆栽を並べている有名庭園もあったのだが、20鉢ばかり並んだ松柏の盆栽は正視に堪えなかった。あまりにも過酷なカリフォルニアの直射日光にさらされて化石みたいに見えた。カリフォルニアに盆栽は似合わないよ。乾燥しすぎているから。

日本の梅の木はカリフォルニアに植えると、実はうす甘くなってしまう。梅よりPlumになってしまうのよ。梅干しにはもうできず梅酒にするしかない。

形だけ物を別の国に持ってきても風土気候に合わない。そこには薄まった日本や偽物の日本があるだけ。CMが言う“薄まった日本”になっても、偽物の日本はいっそ見ないほうがまし。

イギリス人のポール・スミザーが清里に作った「萌え木の村」の植栽は地元の植物で作られているという。バラも日本の野バラの子孫のようだ。だから周囲の山や自然と乖離していないし気候に合っているので病気にもならないらしい。すごい人だね、一度行ってみたい。

日本の庭好きがコッツウォルズの壁を作ったり英国のオールドローズを植えたり、パーゴラを作ったり、そこに英国(日本人が思うところの)を再現しようと思うわけ。

おばちゃんは日本人の熱意と執念で、これでもかぁとイギリスを再現しようというその熱意に胸が詰まってしまう。
ただ、イギリス人がそんな庭園を訪ねたら、“ちょっと違う“と思うのではないか。
まず、空が違う。空気が違う。芝生が違う。
レンガの壁と英国製手作りの鉢を飾っても亜熱帯の日本の空気は湿って重たいと思う。

じゃあ、日本ではどんな草木がいいのさ?
といってもおばちゃんは園芸素人なので、日本の園芸店で売っている草木のどれが日本の気候から生まれた日本種なのかわからない。デルフィニウムが青がきれいだから毎年植えたいし、アカンサス・モリスはその堂々たる花をみてひとめぼれした。

ただ、おばちゃんはカサカサ乾燥育ちのカリフォルニア人が日本の何(本物)に反応するかはわかる気がする。それは雨上がりのしっとりした苔だったりシダだったり。湿気が多い日本の空気だからこそ育つ植物。

おばちゃんも、家を買って庭を発掘した後、先代のおばちゃんが築いた溶岩石に苔がついているのを見て狂喜した。これこそ日本よと思う。しっとりとした雨と黒い土。
これから梅雨で苔はますます美しくなる。隣はヒノキの林なので、細かいヒノキの落ち葉が入り込んだりすると苔が痛むから、ダイソーで買った洋服ブラシで苔についた落ち葉を払い、大事に大事に育てていくの。

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