アメリカの年金 日本で暮らす-5

アメリカの年金の平均受給額はSSAの統計によれば夫婦で$2700である。在米の人からもっと詳しい情報もあるのでコメントを参照されたい。
2023年度は一人で$1826という発表もある。リタイアする年齢が65歳か、満年齢66歳+アルファかで、金額がばらける。

理論上の満額は$2500ドル/人月額、例外的な場合では$4000以上行く場合もある。
ローカルのSSオフィスに相談に行ったときに$2500ドルあればまずまずということを言われた。大雑把に平均的アメリカ人夫婦が、ひと月にもらう米国年金は$2700-$3000/月とみなしてみる。

意外と少ないかもしれない。平均値は常に実情を示していないから。
夫婦で共稼ぎが原則で、専業主婦などほとんどいないアメリカで、どうして$2700という数字になるのか?
それは転職のせいだ。失職・首切りのせいだ。
とにかく経済によって自分がいつ首を切られるかわかんないからね。月曜日に会社に入れないかもしれない。

首を切られた後、次の職がすぐ見つかるか誰も知らないから。
アメリカ人はよく移動する。家のローンを持っている期間は平均4~5年。どういう意味かというと、家を買ってローンを払っている期間が4~5年。利率が下がるならリファイナンスもやる。あるいは転職のために家を売って引っ越し。次で家を買いまた新しいローン。子供が生まれてまた引っ越し。よく移動するので長く同じ家に住んでいない。

大学を卒業して入った会社を40年務めて退社した、ってそんなライフスタイルは私の周りにはいなかった。在職25年はいた。CAエジソン 電力会社だった。アメリカでは自分の能力をいかに高く買ってくれるか、会社とポジションを求めて生涯移動するのが標準ライフスタイルだと思う。

会社は人が欲しければ募集するし、いらなければレイオフする。会社自体が存続するかは会社と社会経済状況次第だ。日本のように新卒で入社し40年勤めあげる終身雇用制は存在しない。退職金?どうだろう?401K も次に行く会社が持っているとは限らない。

そういうアメリカ社会であるので浮き沈みは日本より激しいかもしれない。
うまくやるカップルの場合は、あっちこっち働いて引っ越して、フルリタイア・エイジの66歳の頃にはローンの残っている自宅を売る。ローンを始末した残りをもって、田舎の州、アーカンソーとか、ワシントン州とかに小さな家をキャッシュで買う。
家の売却金の残りと貯金と年金でのんびり暮らすという設計が多かった。

人数は多くないが、移住は移住でも国境を越えて南に移住する老後を選ぶアメリカ人もいた。同じことを考えたアメリカ人のコミュニティは国境の南にあちこちあるので、スペイン語が理解できなくても、そんなコミュニティに移住すればアメリカ人向き御用達しのサービスがふんだんにあって、アメリカ国内と同じように暮らし、よりゆとりのある生活ができるので昔から人気だった。

自宅を売らず都市部の物価が高い州で暮らし続けるなら、家のローンが残っていれば引退後の年金だけでは生活資金は全然足りない。仕事をしないと暮らせないし、固定資産税、家の管理費などの諸物価が高い。

50代が押し詰まってくると我々夫婦は考えた。
アーカンソーで親戚の婆ちゃんが生きているわけでもなく、スペイン語と英語をチャンポンに話しながら、ぱさつくメキシコで暮らす気もなれなかった。辛い唐辛子やきつい香辛料が好きではないんよ。タイ料理や東南アジアの料理も口に合わないのだった。アメリカ経済の行方や自宅の評価額や資産などを考えて、日本に永久帰国を決めた。
その当時は1ドル115円から118円くらいを上下していたと思う。

このレートなら贅沢をしなければ日本でアメリカの年金で暮らしていけるだろう。不動産は売り手市場だったから売りに出したらたった一日で売れた。
株は一部をのこして始末した。帰国時のレートは116円前後だったからとても全部円に替える気になれず円口座は円のまま送金、日本にドル口座を作ってドルを送金した。

コロナで大きく狂ったのよ。
まさか、人類へ疫病が襲ってくるとは60年生きてても予測ができなかったわ。老後の貯金を減らしたくなかったのに、コロナで日本のおじちゃんの職場がなくなり、1年後におばちゃんの職場も閉鎖。この春に設備を改装してオープンするが、仕事に復帰できない理由ができた。

今月アメリカの年金が振り込まれる。待機期間中の分も一括だ。
8月に申請したときに疑問だった「満月齢あるいは申請月から振り込みが始まるまでの待機期間の年金分」はいったいどうなのだ、というやつ。答えはSSAは最初の月に一括で全部くれる。

すると、今年2023年度の米国年金収入は16か月から18か月分の分が入ってくるので、税金の不安におびえる老夫婦。申請して6か月も待たされて、税金がぶったくられるってどんな罰?去年のうちに6か月分くれてたらどんなに楽だったか。税金を払うのが嫌いだ。もらうのが増えるより、嫌い。

米国年金のインフレ・スライド制度COLAで我々の年金はたぶん毎年上がる。
COLAが加算しなかった年は過去20年の間で、2009 年2010年 2015年の3回だけ。自分で投資して運用損を出すよりは安心かもしれない。税務署には丸見えだけどな。

そのうち為替レートは118円前後に落ち着くとして、今年からおばちゃんの日本の老齢基礎年金も入ってくるので、おじちゃんの厚生年金と合わせると、住民税・国保料は3倍増し決定である、生涯。ああ。
税金を払うために来年は稼がないといけない。稼ぎすぎれば年金が止まる。くそ。

こういうことを書くときっと「ずるい」と言われる。日本の年金は下がるばっかりなのにと。
ずるくない。長年海外で暮らして帰国してきた人間に対して、日本の社会の一部は老年になって日本に帰って、日本のいいとこどりをするつもりなのかとか、日本に横入してなんとなくずるいと思われることがあるようだ。

おばちゃんたちの米国年金はアメリカの現役世代のSS Taxから来る。老年から日本に横入して、日本の現役世代から年金分を取り上げるわけではない。反対。アメリカで稼いだお金を日本で使うことになる。

それにアメリカに移住した時は、国民年金継続支払い手続きをわざわざ探して、毎年国民年金をアメリカから払っていた。ところがその払い込みの金額に比べて、おばちゃんが受け取れる国民年金は猫のごはん代くらいの金額で、計算したらこの先40年受給しても元が取れない。いったいどうしてくれる?日本の年金基金は運用がおかしいのではないか?


以上おばちゃんたちの赤裸々な米国年金事情でした。

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mikie@izu について

海外在住何十年の後、伊豆の山に惹かれて古い家を買ってしまい、 埋もれていた庭を掘り起こして、還暦の素人が庭を造りながら語る 60年の発酵した経験と人生。
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1件のコメント

  1. こんにちは、確かにアメリカでは一つの会社に一生と言う人は少ないですね。

    ポンポンと職場を転職します。それも二通りでしょう。

    こっちでは簡単に首を切られますのでそれで会社を辞める人と、
    自分の能力を生かしてより高額で自分を買ってくれる会社への転職です。

    私の娘もその旦那もこれまでに結構会社を転々としています。
    幸い彼らにはその実績があったので転職する度に立場と給料が上がってます。

    私はニューヨークのマンハッタンで20年間、自分でデザイン・スタジオを経営してましたのでその間の転職はなしです。

    そして後半の20年間はこのLAに移ってから同じ会社にいました。
    珍しいかもしれませんね20年もの間転職もしないなんて。

    でも結構働きやすい会社だったんですよ。

    社内での束縛は何もないし、自分のプロジェクトさえやっていれば
    誰にも文句は言われないと言う専門職でした。

    しかもその上に退職年齢がない。
    その気になれば体さえ元気ならば75歳になってもまだ働けていたでしょう。

    ただ世の中そう上手い事ばかりではなく2020年の12月に会社が倒産しました。
    私が69歳の時でした。

    でも69歳まで働いたんだからまぁいいか、と言う事で今は完全リタイアして年金生活を送ってる次第です。

    Gen

  2. Mikieさん、 Gen(匿名さん)さん、アメリカの年金の受給額についてご教示有難うございました。Genさんも40年もアメリカで頑張ってこられて、リタイアされて素晴らしいですね。

    私が参考にしたアメリカの年金平均受給額は、US Census Bureau dataによると、retirement incomeの平均は47620ドル2021年だそうです。ですので、年金以外の収入も含まれているでしょうから、私の前回のコメントは間違いでした。訂正させて頂きます。Genさんの仰ることが正しかったです。

    ネットでまたアメリカの年金平均額を調べたところ、SSAによると、リタイアしたカップルで、年金月額は2725ドルぐらい(円換算354000円)とも出ていました。これもMikieさんが仰るとおりです。

    それでも、やはりアメリカの年金が日本よりは多いのですが(為替により日本の最高額よりも多い)、税金の事等を考慮すると、どちらがどうなのかはわかりません。医療も日本の方がいいでしょうし。

    アメリカの年金をもらっているアメリカ在住の方々が、日本へ帰国されると、日本にとってはとてもいいですよね。海外から帰国したくなるようなシステムになればいいのかな。。例えば、住居とかも借りやすくするとか。。

    • これは私がこちらのSosial security Office から引き出したレポートなんですが、ここで言うRetired Worker と言うのは66歳の満期受給者一人分の事ですね。
      その月平均が1,680ドルからCOLAで1,827ドルに上がると言う事です。

      New beneficiaries coming onto Social Security’s rolls tend to have, on average, higher benefits than those leaving, so average benefits normally rise from month to month. This gradual rise in average benefits is altered by abrupt increases due to annual cost-of-living adjustments or COLAs. The COLA for December 2022 is 8.7 percent and is first payable in January 2023.

      The table below provides estimated average benefits for certain beneficiary types, at the end of December 2022.

      Estimated effect of 8.7-percent COLA on average benefits
      at the end of December 2022
      Type of benefit Before
      8.7% COLA After
      8.7% COLA Increase
      Retired worker $1,680 $1,827 $147
      Spouse of retired worker 832 904 72
      Aged widow(er) 1,570 1,706 136
      Disabled widow(er) 821 892 71
      Disabled worker 1,364 1,483 119
      Note: The above estimates are based on actual benefit data through August 2022.

      ————————————————————————-

      こちらはリタイアしたカップルの満期の分です。月平均で2,733ドルからCOLAで8.7%増加で2,791ドルに増加されるようです。

      The table below provides estimated average benefits for selected family types.

      Estimated effect of 8.7-percent COLA on average family benefits
      at the end of December 2022
      Type of family Before
      8.7% COLA After
      8.7% COLA Increase
      Disabled worker, spouse, and children $2,407 $2,616 $209
      Retired worker and aged spouse 2,733 2,971 238
      Surviving child(ren) onlya 1,284 1,396 112
      Aged widow(er) alone 1,567 1,704 137
      Widowed mother and 2 children 3,249 3,532 283
      a Family with one or more children excludes surviving parent or guardian who is ineligible to receive benefits.
      Note: The above estimates are based on actual benefit data through August 2022.

      多少の誤差はあってもまぁそんなものでしょう。

      我々夫婦の場合は、ここで出ている平均額よりも多くもらってますが、残念ながらまだ家のローンが残っているので生活はかなりきついですね。(この家のローンさえなければかなり楽なんですが)

      その上医療保険が高いのと自動車保険も高い。(車は2台)その他の光熱水費も馬鹿にならないのでこちらではそれほど余裕はないですね。

      医療保険は65歳からガバメントのMedicare(日本の国民健康保険の様なもの)に入れますが、そんなものではとてもこちらの医療費は払いきれないので、民間の第二保険に入らなければ安心して医者の診療や手術や入院なんか出来ません。それがまた高い。

      それこそ日本に行けば悠々自適な生活が出来ますかね。

      • アメリカの平均年金額より多く受け取られていらっしゃるなら、日本へ帰国すれば悠々自適だと思います。住居だけは、なかなか借りるのが難しいようなので買わなければならないでしょうけど。。医療も安心でしょう。でも、お金の事だけでなく、どちらの国、場所で暮らしたいかが一番大きいような気もします。

    • 申し訳ありません。またやってしまいました。

      リタイアしたカップルの満期の分は月平均で2,733ドルからCOLAで8.7%増加で2,971ドルに増加されるようです。

  3. カップルで2700ドルなので、日本の平均年金受給額との差は思ったより少ないですね。この点も訂正させて頂きます。

  4. 全く関係ないトピックスで申し訳ないんですが。。

    Netflixのドキュメンタリーの後、またハリ-王子がSpareと言う本を出版したらしいです。10日が発売日なんですが、内容が少しずつタブロイド紙からリークされています。ウイリアム王子と喧嘩した事や、アフガニスタンでタリバンを25人殺したとか、キャサリン妃がリップグロスをメ-ガンさんに貸したがらなかったとか。。酷い内容のようです。それにしても、例え次男とは言え、戦場に送り込むと言うのは凄いです(アンドリュー王子も行っていますが)。日本の皇室だったらあり得ない事でしょうね。

  5. >>ずるくない。長年海外で暮らして帰国してきた人間に対して、日本の社会の一部は老年になって日本に帰って、日本のいいとこどりをするつもりなのかとか、日本に横入してなんとなくずるいと思われることがあるようだ。

    >>おばちゃんたちの米国年金はアメリカの現役世代のSS Taxから来る。老年から日本に横入して、日本の現役世代から年金分を取り上げるわけではない。反対。アメリカで稼いだお金を日本で使うことになる。

    おっしゃる通りだと思います。海外で築いたものを、日本に住んで日本で消費するのですから、海外永住者の日本への永住帰国は日本にとっては歓迎されるべき事だと思いますよー-。

    • 仰る通り、海外永住者の日本永住帰国は歓迎されるべきだと思います。海外で築いた資産や年金を日本に持って帰ってくれて、税金も払ってくれる、消費もしてくれる。
      海外在住の人たちが帰り易くなるような環境を整えるべきだと思います。イスラエル等は、帰国者に対して優遇があるそうです。

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