親友が逝く 胆嚢ガン ステージ4

庭仕事を終わってお茶を入れて一息ついた。
メールをチェックするとDavidからEメールが入っていた。
カリフォルニアの家の売買を済ませ、エージェントのデイビッドにお礼の一席を設けようとしたら、どうしてもスケジュールがあわずそのまま日本に帰国することになってしまった。6年前だ。

山の庭の写真やクリスマスカードを送っていいところよ遊びにおいでよ、と誘っていたが、ジョイスもデイビッドもおしゃべりは好きだが書くのは億劫な人たち。コロナで郵便事情も悪かったが12月のクリスマスカードの返信は1月に届いたのだった。
ジョイスじゃなくてデイビッドなのは何故?


Hello, Miki
I deeply sorry to notify an bad news.
以下の文章は冗談か悪ふざけかと思われた。

ジョイスは去年の8月に胆石の切除手術を受けたら、肝臓まで広がっている胆嚢ガンステージ4だった。3種の抗がん剤治療を受けたがガンは縮小せず今は自宅でベッドにいる。
娘たちと看護にあたっていると。私が日本に誘ったときに行っていれば良かった。深く後悔していると結ばれていた。

なんでもっと早く教えてくれなかったのだ!
私も同じ胆嚢ガンを患ってステージ2であること。去年の4月に2度目の開腹手術で肝臓の30%とリンパ節をとったこと。
ジョイスに会いたい。あとどのくらいの時間があるのか返事を書いた。

それからベッドルームで紫音と遊んでいたおじちゃんに、アメリカに行ってもいいか聞いた。
ジョイスがステージ4のガン。胆石だと思って切ったら胆嚢ガンだったって。
おじちゃんは胆嚢ガンの言葉に顔を白くし行ってもいいとうなずいた。

なんだぁ?!このフライト料金は?
エコノミーで50万超え?ビジネスの値段だろう?25日より前のフライトは軒並み50万から60万の金額。行く、今行かなくてはもう二度と会えない。

夜は12時まで待ってもデイビッドから返事がなかったので、次の日の朝、デイビッドに電話を掛けた。

今フライトを探しているからすぐ行くという私にデイビッドは、来なくていい、遠すぎる。
いやいやこれが最後のチャンスだから、ジョイスに会いたい。話が一部かみ合わないので、私のメールの返事は読んだのかと聞くと読んでいないようだった。

デイビッドよく聞いて、私は去年の4月に胆石だと思って切除手術を受けたら胆嚢ガン ステージ2だった。ステージ2の5年生存率は27%だけど再発しても私は化学療法は受けないつもり。今行かなければチャンスはないかもしれない。
こんな偶然ってあるのだろうか?

デイビッドも一瞬息をのんだ。
ジョイスは10年ほど前から胆石があって、ずっと切らずに肉や油ものを避けてきた。去年やっと決心して手術をうけたらこんな結果になってしまった。


3種類の抗がん剤を試してもガンは縮小せず、今はほとんどの時間は目を閉じていて誰もわからない。デイビッドはジョイスに痛み止めを入れるために夜中に3度起きなければいけないのでカウチで寝ていると言った。おしゃれだったデイビッドがボロボロになっているのが分かった。

ジョイスも身なりに気を使う人で見栄はりだったから、抗がん剤で髪が抜け痩せて黄疸がでた体を見られたくないだろう。夜通し起きているデイビッドと交代で昼間の面倒を見る娘たちも私を覚えているけれど、家族だけで看取りたいのかもしれない。

知人のAさんが末期の時もご主人が自宅でペインコントロールをして最後を看取った。ボブのおじいちゃんの時も多分同じ。

遠すぎる、Mikiが来てももうジョイスはわからない。来ても無駄なんだ。
そうなの。じゃあ、ジョイスに伝えて。私も同じガンだって。2年目を無事にやり過ごせなければジョイスにまた会うからって。こんな珍しいガンを二人患うなんて、きっと二人でいろんなレストランに行っておいしいものを食べたからかもしれない。ジョイスに言って!また会うからって。
デイビッドも私も号泣してうまくしゃべれなかった。

親友に先に逝かれるのがこんなに悲しいとは思わなかった。私が先に逝くはずだったのに。後に残って見送らねばならないのはなんとつらいのだろう。残されたもののほうがつらいのか。

自分のガン宣告では涙もでず、おじちゃんより先に失礼するつもりでやりたいことはみんなやったから心残りはないと言い切った。おじちゃんはどんな気持ちでそれを聞いたのだろう。
すまない。

Hi, Joyce, I wish my message will reach you.
I have the same cancer as you have. We are the gallbladder cancer sisters.
What a coincident‼
When I can’t make it in this year, I’ll catch up with you. See you around the corner.
Then, we do not afraid of greasy fried dishes or creamy pie anymore.
We try extra Creme de Brulee together.
Love you.

mikie@izu について

海外在住何十年の後、伊豆の山に惹かれて古い家を買ってしまい、 埋もれていた庭を掘り起こして、還暦の素人が庭を造りながら語る 60年の発酵した経験と人生。
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