移住3年目

サラダバーにアーティチョークがあるとおばちゃんは狙いを定めて、ごっそり頂戴する。はしたないわぁ!でも好きなのよ。

瓶詰の茹でアーティチョークはホワイト・アスパラとヤシの芽と並んで高い缶詰よ。竹の子を食べているよなホクホク感が大好き。ぜひ、もう一度食べたい。

まさか、伊豆のガーデンセンターにアーティチョークの苗が売っているとは思わなかった。観賞用らしいのだけど、ウチは食用よ!

花を収穫してガクの上の方を1/3切り落とす。根本も1センチほど切り落とす。
湯に一つまみ塩を落とし、レモンスライスも数片いれて茹でる、ゆでる。
竹の子をゆでるくらい時間がかかる。

茹ったら外の固いガクをみんな外し根本だけになったら、適当にブツ切してマヨネーズ系のソースか、ランチドレッシングでいただく。ああ、自分で育てたアーティチョークはうまいなと言ってみたい。

今年の夏は楽しみ!

子供のころは、アケビはなかなかお目にかかれない山の実りだった。
山の早い秋を散歩していると、竹藪のふちにアケビの実があるではないか!まだ、口がハゼていない緑の実だ。ありがたくいただく。他にも実っているはずだから、葉の形と蔓をしっかり覚えて散歩をすることにする。

次の春、山の路地を散歩していると唐突に足が止まった。なんと、一軒のお家の垣根にびっしりとアケビの蔓が巻き付き、なお薄紫の花をつけているではないか。感激した。
アケビを垣根にする。アケビを栽培する。考えもしなかったこと思いもつかなかったことを発見してうれしい。早速実践してみようと思う。

これは2株とも5葉アケビ。園芸店で2株買い今年の春にあの薄紫の花をつけてくれた。
3葉アケビと一緒に植えると、実つきがいいそうだけど、園芸店では3葉がなく、山をほっつき歩くと、これかなというツタがあったので、別の場所に植えてみた。3葉と5葉がそろったので、秋にはきっと実をつけてくれる!

ウチの庭には岩がある。
軽自動車ほどの大きさで、家を買ったときは知らなかった。庭の雑草を刈り取っていた時に南の端は妙に盛り上がって土が薄いので下は岩だと分かった。

枯葉と腐葉土に覆われていた岩から余分な土やシダを落として発掘したあと、岩の全容が見えてきた。しぶとく残っていた岩ヒバは一体何十年物になるのだろう?立ち上がった茎は10センチにもなる。年季が入った苔もついていて庭の南に鎮座してる。かっこいい。

箱根の庭園で、溶岩石を割って生える松柏を見てしまってすごい迫力だった。松柏は無理だけど、モミジや杉はどうだろう、この岩にも付くだろうか?

おばちゃんは、杉だか檜だかの実生を岩の上に置いて苔と土をかぶせて3年たった。背丈は伸びていないが枯れてもいない。

檜の年輪

お向かいが、大きくなりすぎた檜を伐採した。
輪切りになった年輪を見ると、、。外側の年輪10本ほど白くて年輪との間が少しおおきい?
ここ10年は間違いなく気温が高いんだ!

この山が開発されたのは40年ほど前の昭和の末期という。
そのころの山はもっと気温が低くて、夏でもクーラーが要らなかったと最初のころの別荘の住人であるお向かいさんが言う。

線状降水帯」という言葉は、帰国して初めて知った。昭和の時代にそんな言葉はなかったよ。

90年代の初め、渡米した当時はカリフォルニア・OCでも、70年代はクーラーが要らなかった。ジョイスが全く同じことを言っていた。

温暖化は、地球規模で起こっていることだと実感する。

園芸のページでも、植栽の植え付け時期、花の開花時期など、温暖化で違っ来ているのだと。今、夏の日本の気候はマレーシアより熱いらしい。

DIY

工作は主人の担当だ。
私は好きに注文を付ける。伐採した木がたくさんあったから草取りの合間に休めるベンチが欲しいと注文した。

最初にできたのは、二股の幹を利用した 一人掛け生木の丸太。

天然木はあっという間にカビて傷んでしまうので、半切り丸太の二人掛けが痛んだ後、ホームセンターで木材を購入し、生産証明としておじちゃんは背もたれに自然木をあしらった。なかなかよくできていると思う。

先代おばちゃんが自分で張ったコンクリート(先代のおばちゃんはリタイアした後の作業なのにすごいよね!)の回遊路は段々庭をゆるやかに南に下って、岩のそばを抜けて庭を回遊して北の端に突き当たり、また昇ってデッキに戻る。南端の回遊路と岩の間はツツジが植わっていて水はけが悪かった。

それで思い切ってツツジを抜いて掘り下げ、主人にコンクリートの底を張ってもらって水が流れる水路を作り、拾ってきた拳大の石を積んだ。だんだん庭には池も流れもないのね。晴れた日には枯れ山水を楽しめるように。

3年たったらシダが生えてコンクリートブロックにも苔が生えて、元からコンナンだったかしら?土の土手だったことが思い出せなくなった。

春夏の雰囲気はなかなかいい。秋には落ち葉がたまって見苦しくなるので。冬が来る前に石を全部上げてしまって落ち葉をさらい春を待つ。

今年2021年の東海地方は先月5月15日に梅雨入りして、ただし今週は晴れで熱い夏日が始まった。

下界は日中34度を記録するが山の家は4~6度は低い。
朝、夏用パジャマで涼しすぎなのでひざ掛けで朝のニュースを見、庭の巡回が終わるころは、ジャケットを脱ぐ。お昼の後は、庭仕事用に着替えて28度、日差しは強いけど涼しい風が吹く。

4時過ぎに疲れて撤収して来ると、主人が椅子を出して、壁の時計を外している。
「ああ、夏時間だったか、。」
あれぇ?日本に夏時間はあったっけか?

バッテリー切れだった。年に二回、家中の時計を変えて回る行事が無くなって、しばらくたつ。時間帯が変わってから1週間はだるいし、エネジーセーブのためと言いながら、さして電気代は変わらなかった。夏時間 正直迷惑なシステムだったな。

去年の春からコロナ自粛で仕事もお休み。庭の雑草は毎日毟って庭木は剪定して、畑をメンテして(主人の仕事)それでも時間が余るので、山の散歩をする。
山には東京横浜から避難してきている人多数。あちこちの別荘地で他県ナンバーの車が止まっている。

1時間半の散歩から帰ってきて、まだ日が明るい。

散歩の途中で拾った枯木の根っこを主人が加工してみる。
土をちょっと盛ってみる。その辺の苔を貼り付けてみる。無尽蔵にあるシダやユキノシタを埋め込んでみる。楽しくなって、園芸センターでボケの花やカラーリーフを植えたら色彩が華やか

伐採した木の根を掘って、さらしてあったものや太目の枝を主人がサンダーで磨き、花を植えやすいように、ドリルで穴をあけ、土を盛る。植えるシダや花を選ぶのが楽しい。

ウチのポリシーはとりあえず植えてみよう!だから、ガーデンセンターでゴロン!としたイモを見たときに植えてみたい!と思った。

なんの花だかよくわかってなかった。4月に植えて、5月末にはぐんぐん花穂を伸ばした。子供のころみたアマリリスではあるまいか?つぼみに色が透けて赤色だと分かった。つぼみができて、咲くまでに1週間かかった。もう一本の花穂も咲いて超ド迫力。

ここ10年に日本で流行した植物は
バラ
クレマティス
クリスマスローズ だそうだ。
バラの木はボリュウムが大きい割に、花の割合が少なくて、シーズンが終われば緑の葉群れのマッスが大きすぎる。木は植えてどんどん育ち枝を茂らせて、当初のこちらの心づもりとは違った姿になっておばちゃんは困惑する。

庭を始めて分かったけど、私は木の花はそれほど情熱が持てないみたい。

丈が自分でコントロールできるだけの高さで、茎が伸びて花が咲いて、地上が枯れたら来年までお休み。そういう多年草が好き。なんでだろうね?

カリフォルニアにもローズガーデンと名がつく庭園はいくつもあり、季節に行っては見たけれど、砂漠のような土壌はやはり豊かなバラを育てるには力不足だったかもしれな。

バラによく合うというクレマティスはなかなか奥が深そうだ。
とんでもなく種類が豊富らしい。大輪小輪 右巻き 左巻き 春咲き 冬咲。バラと一緒に植えなくても単品のクレマチスでも十分楽しそうだわ。
紫の大輪ももちろんインパクトが大だけど、小さい白の小輪をびっしり咲かせてみたい。

まさか冬咲なんてあると思わないから、白をラベルも読まずに買ってしまい、さらに(ベル型の小輪)をよりによって満天星ツツジの垣根の下に植えてしまった。

垣根に巻き付いたら素敵かなと思ったのだけど、。12月につぼみができて、1月に咲いたホントに真冬に咲くんだと主人とびっくり。しかし、垣根に這わせたのは失敗だったなぁ。

5月の庭は花の種類も多くて最高ににぎやかで美しい。
チューリップや球根の花が終わってしまうと、球根の間に植えたバコパに強い西日が当たり始める。

家は西向きで朝日よりは西日がきつい。バコパに夏を越してもらって、できれば冬も越していただきたい魂胆がある。真夏の日差しを遮る方法はないものか、。

遮光カーテンはどうか? スペースと構造と夏の台風に問題がありそうである。
ゴーヤカーテンはどうか、とりあえず植えてしまう。

4月に植え替えたガウラがついに咲き始めた。
細い風に揺れる茎のてっぺんに白い蝶が飛んでいるような、優雅で可憐な白蝶草。おばちゃんの好みのドン真ん中。咲いてはこぼれ、また咲いてはこぼれ10月まで、風にゆうらり揺れながら咲き続けてくれる。

ピンクの濃いものは山桜をみるようで、ちょっとコントラストがきついけど、白のガウラは花びらの中心がほんのり染まり ソメイヨシノのようなたおやかさ白さが好み。

肥料をやりすぎると背丈が伸びすぎて、風で折れてしまうのが困る。10月の終わり、山は寒すぎて地上のガウラの葉は枯れてしまう。4月に葉が生えそろうとホッとする。

夏の庭の花は黄色より、青を選んでしまう。涼しげな青、紫が暑さを忘れさせてくれるからか。
桔梗の花の凛とした清潔さが清い。白の桔梗はそれだけ植える気になれないけど、紫と白を混ぜて植えると、涼しげでいいなと思うけど、
白の桔梗はまだ買ってない。ついつい、色の花を買ってしまう。

ゴーヤ・カーテンの育ちがわるい。7月までに、バコパやベロニカに日陰を用意できるであろうか?
ゴーヤが伸びてくれないと、バコパとベロニカに投資したお金が無駄になる。ガーデンセンター巡回で、ゴーヤのたくましい味方を見つけた。ラトゥール。
カンカン照り、めっちゃ好き。成長 早。寒さは弱く、10月には枯れてしまいそう。
おあつらえ向き。ゴーヤの脇に植えた!


移住1年目

小輪
花を植え始めてから私はハタと気が付いた。
私は小輪の花が好き!
小さくて可憐な、花が群れを成して咲くとうっとりしてしまう。

最初にとりこになったのが、リナリアとネメシア。春にメダカが群れるような黄色のリナリアが咲き誇ると、ステップを踏みたくなるほどうれしい。

2色の花弁のネメシアが咲くと、ゴージャスなレースのフリフリ服に見えないかしら?
春にはぜひ咲いてほしいので、リナリアとネメシアをしつこく植えるのだけど、10月には枯れてしまい、次の春にも地面からは音沙汰がない。種もこぼれているのよ。

10月に透明ビニールで囲いを作っても、やはり枯れてしまう。どうも、気温のせいではないらしい。
しつこくホームセンターの花売り場を物色していると、「宿根リナリア」とラベルを発見!私が宿根草に目覚めた瞬間である。毎年、山ほどリナリアを植えて、枯らさなくていい!宿根草なんて素敵、でも高い!

リナリアの次に取り込まれたのは、ガウラ 
道端に生えていたガウラを一目ぼれしてガーデンセンターで買い集め。これはまぎれもない多年草よ。

毎年植えなくてもいいことよ。買ったときは20センチほどの苗だったのが、夏に向かってみるみる育ち、花壇の手前に植えたもんだから奥の勿忘草が隠れてしまった。
しまった!

背が高くなるお花は奥に植えなくては!おばさん、空間認識の発見である。ついでに時間認識も発見した。

背が高くなったり、横に張り出す未来を考え、前後左右に空間を置くべし、。この奥義を発見するまで、ほぼ3年という月日がかかった。

愛しのダーラ
ピンクで小輪の花ならダーラ。
ダーラは小輪でコケティッシュで愛らしい。山の冬を越してくれるのは数株なので、毎年ガーデンセンターを巡回して買い足す。外国産の種がオンラインで一店舗だけ売っていて、でも、種から育ったのはたったの一株。種まきって難しいわ。

朝には高いトーンでなくホトトギスがいる。若い歌い手の気がする。
キンちゃん鳥も歌う。キンチャ-ン キンチャン キンチャン と三回鳴く。たま~にPeople get her  People get her People get herと鳴く鳥がいる。何の鳥だろう?

風が見たい

山梨県の忍野八海(おしのはっかい)なんと雅な名前!ここに行ったとき、人家の植え込みに見事な風知草ががあった。ご近所に何軒も。風知草がこの辺のトレンドらしかった。おばちゃんも、伊豆の山を渡る風が見たくて風知草を植えてみたた。

ベランダの窓から庭を覗いても、風があるかどうかわからない。風知草があれば風が見える。さよさよと美しい風が見える。

これはアミガサ茸だろうか?
チャイニーズ・スーパーで確か見たことがあるわ。そんな高級なキノコがおばちゃん山の庭に生えていいわけ?
レストランでもアミガサだけはかなり、高価な料理だったわよ。うちの庭の日陰に生えてきたブツ。さわった触感はゴムのようにかなり弾力がある。とりあえず写真を撮ってみて、なんか嬉しい。

思えば、前世紀の南加の日本スーパーでは生のナメコはなかったの。赤だしでナメコの味噌汁は好きだったのに。ちっこ~い缶詰のナメコが一缶6ドルで、とても買う気になれなかった。

たかがナメコに、6ドル出してたまるかと。
永住権が取れて、7年ぶりに帰国したらスーパーに袋入りのナメコが山と積まれていて、ナメコだ!わ~い、ナメコがある。とはしゃいだら恥ずかしいからやめてと、姉に言われた。

一時帰国するまで日本で食べたかった食べ物は、シャ〇エッセンとラーメンと日本そば。シャ〇エッセンのような肉製品は輸入制限があって、アメリカで見ることもできなかった。
食べたくて食べたくて、7年間夢に見たシャ〇エッセンを一時帰国の時にスーパーで早速買って茹でて食べたとき、舌はとっくに味を忘れていたのよ。
アメリカのスパイスが効いた肉製品を食べていると、気が抜けて感じられるたのね。悲しい思い出。

今?
今はIn & OutのハンバーガーとCalifornia Pizza Kitchenの4チーズとジャンバラヤそしてPho, Pho, Pho!!!を夢見るわ

長~い海外生活から帰国

平成が始まるころ夫婦で米国に移住し平成が終わるころ日本に帰国した。

漢字も書けなくなるほど海外生活は長い間堪能した。還暦を前に日本に帰国するのにさて、どこに住もうかしら?

人間が作る美しい芸術は大都会にある。
たまには美しい物を味わえるように首都圏から1時間半のエリアで家探し。

できれば庭がついていて、畑が作れるところ。不動産屋さんに物件を案内された時に思わず「この物件を知ってる」と言ってしまったの。

アメリカでネットの物件を検索していた時に、手ごろな物件だと思ったのだけど、写真が魅力的でなく忘れていた家だったわ。

家の内見の後こちらが庭だと思います、と不動産屋さんに従って降りたところは、自分の足も見えないカヤとススキが肩まで生い茂った斜面だったわよ。

不動産屋さんがこっちこっちっと言いながらぐるりと歩いたのに、見えるものは雑草と枯れかかった木立だけ。

でもなぜか直感でこれは素敵な庭になるのではないかと感じたの。おばちゃんはビビっときたの。庭なんかいじったことがないのに。

段段庭ができるまで

引っ越しは5月15日。春は爛熟して山は藤やツツジが咲き乱れていた。
家の中の片づけが大体終わって次は庭よ。日本で一番素晴らしい季節なのに、庭?らしき荒地にはただの一輪も花が咲いていなかった。雑草すら花が咲いていなかったのは不思議。

ススキ、カヤ、シダ、ドクダミ、クズやヘクソカズラ、落ち葉。茶色と緑だけ。おじちゃんと二人で長靴を履いて帽子をかぶり手袋をして、さて、まずススキとカヤを刈らなきゃ。

抜けない雑草はカマで刈って、ススキは切った切り株に除草剤をハケでペタペタ塗った。むか~し、TVチャンピオンのDVDを借りた時にミントの駆除にそんなことをしてたのを覚えていたの。

ススキは除草剤にも負けず、若芽を生やしてくるからそこをまたハサミでチョキチョキ切って除草剤を塗る。しばらくすると、また青い芽が、、、で3回くらい除草剤を塗るとまっ黄色になって根まで死ぬ。

力を入れずに株がぱさっと抜けるの。午前中に3時間、午後に3時間夫婦で刈り、落ち葉をかき掃き、3週間後!45リッターのゴミ袋に80袋の枯れ枝落ち葉を処理して、庭のコンクリートデッキが出てきたわ。

izu garden
my hidden garden 2017

先代おばちゃんが段々庭の境目にツツジとサツキを植えていた。おばちゃんが亡くなって草を取る人も居なくなって、庭はススキに埋もれてしまってツツジが咲くことも何年もなかったんでしょう。

枝が伸びすぎだったから、素人がめちゃくちゃな剪定をしてみて、気がついたらツツジが一斉に咲きだしていたのね。

素人のDIY

あこがれていた藤棚を作って?とおじちゃんに頼んだら、伐採してためておいた雑木で作ってくれた。素人で枯らしちゃったら嫌だから藤を4本それぞれの支柱分植えて、お向かいさんから笑われたわ。

藤は一本でも十分なんですって。4本も植えたら棚が重さで持たないわよって。
おばちゃんたちは知らなかったけど、伐採した天然木はそのまま使うとすぐに傷んで朽ちてしまう。

最初に作った藤棚は3年で痛んで、製材した材木を使って作りかえたの。1本の藤は玄関先に移して、あとの3本のつるを外してまた絡ませるのが大変だったわ。まだ3本は生きていいて、おじちゃんが切るのを可哀そうだと言うから。

同じく生木で作ったラティースもまず皮がはがれ、腐って2年でおじちゃんが作り替えた。伐採した生木を使うなら、まず枯らして皮を剥いでそれからペイントをしないと耐久力が無いみたい。

太い切り株は二股のところを加工して、おじちゃんがスツールを作ってくれた。

引っ越して1週間目にイノシシが家の床下に入り込んで、猫がおびえたから家の足をラティースで囲い敷地もフェンスでぐるりと囲んだ。多分山の生き物は人間より野生の人口が多いわよ。

おじちゃんは物を作るのが好きで、昔から自分で野菜を育てて自給自足したいねと言っていたの。最初の年に葉物を植えたら山中の虫が寄ってきて食べられちゃったわ。

レタスなんかは地植えはムリみたい。白菜やキャベツなんか超難しいわよ!

おばちゃんたちは人生の第三コーナーを回っちゃったから、おじちゃんはキュウリやトマトを作って、おばちゃんはお花をうえて家が朽ちるのが先か、おばちゃんたちの体が衰えるのが先か、出来れば先代のおばちゃんのように、ある日この地で倒れて旅立ちたいわ。

山の家には四季があった

何がびっくりしたかというと、山に雨が降る。

それはもう、雨が降らない月がない!
湿った草の匂い!滴る水滴!トンボが飛んでる。

30年ぶりに見たトンボかも。南カリフォルニアの家では植木鉢に花を植えあった。青いロベリアで、咲いてはこぼれ咲いてはこぼれ。

花は一年中咲くものじゃない?違うの?この庭がどんな庭になるか、草取りをしたこともなかったおばちゃんには分からない。

移住してから知ったけど、静岡県は年間降雨量が日本5位だそうだ。

雨が降ると檜の森に靄がかかる。早朝などは音もせず霧が流れる。

檜に絡みつくツタは、ノウゼンカズラで先代の持ち主のおばちゃんが植えたという。

茂みは6月になるとミョウガの林になる。夢みたいだ。カリフォルニアで宝石のように珍重した一本1-2ドルのミョウガがタダで取り放題!

庭に転がっていた岩を寄せ、コンクリート管を立ててみた。溶岩石を積んでみた。

一年草も多年草もどう違うか分からないので、とりあえずホームセンターで売っているよさげな花を植えてみた。

花の名前はカタカナなので、悲しいかな年のせいで覚えられない。80円だったので、80円と呼ぶ。この80円はよく茂ってよく増えた。困ったくらい増えた。

雨が大地を潤し、黒い芳醇な大地が形成されていく。
土は湿った匂いがする。雨上がりは草いきれがする。もと砂漠のようなぱっさぱっさで白っちゃけて石っころだらけの南カリフォルニアに黒い芳醇な大地はなかった。

雨が大地を作る。静謐と山の自然が大好き

毎日季節が動いていく。
駿河湾から雲が流れてくると、天気は下り坂になり気温が下がる。

秋はものすごく短い。紅葉が見られるかどうか、3週間もたつと初冬に突入していく。

11月に入ると散歩の際にふと木が燃える臭いが漂う。

山の住人が薪ストーブを焚き始めるのだ。

家の軒下には乾燥させるために薪が積んである。脹脛くらいの太さの薪がぎっしりと棚に積まれている。

移住して初めての冬には雪が10センチ積もった。気温は零下に3度まで下がり、おばちゃんの車のワイパーはフロント・シールドに張り付いて凍った。

冬は車のワイパーを立てるのだという。1月も2月も寒くて庭は眠っている。

2月の終わりになると、そろそろ土が呼吸をし始める。日なたは霜がつかなくなって、ムスカリが青い芽がのぞかせる。急がないといけない。急いで枯れ枝を払って園芸用の土を追加して肥料をあげないと。春が来る!

四季?そんなものがあったのをすっかり忘れてたわ。

春にもクーラーを使い、焼け付く夏と熱い秋と涼しい冬があって、3月のアカデミー賞の頃には空は明るくまた春・夏になってクーラーを使う。

一年中スーパーにはスイカとトウモロコシがあった。帰国したら、毎日お天気が変わり、季節は毎日進んで日本の自然はこんなに美しかったのかとおばちゃんは感動した。

別荘を建てる時は

別荘を建てるというと、日本人はテンションが2目盛りほど上がってしまうらしい。この伊豆の山でも、夢と妄想が爆発した家が散見されるわ。

定番のログハウス。 丸太を割って張り付けログ風など段階様々。メルヘン調 丸いとんがり屋根とか。

メキシコ風のパブかレストランのような洋風。レンガ造りの洋館~ 程度さまざま。

山は里と比べ物にならないくらい湿気が多く、本物の丸太は湿気を吸うし朽ちやすい。

下駄箱の革靴は白くカビを吹く。立ち木からの落ち葉が、雨どいやバルコニーの排水溝をふさぎ屋上がプールになったあと、天井がおちるらしい。だから山の家には雨どいがない。

山で家を建てるときは究極の選択をしなくてはならない。おじちゃんと二人で挙げるポイントは、景観と立地。もし、眺めを優先したら、そこは崖地。

安定の地盤を優先したら眺望がない。

隣の家が見えるか檜に埋もれているか。

眺望がよく安定した平らな区画はとっくの昔に売れて豪奢な別荘が立っている。

眺望がいいお家は確かに素晴らしい眺めで富士山も絶景もウチの!と言いたくなるが、台風と豪雨の時は真剣に怖い。2019年の台風で家が一軒がけ下に落ちた。

朝起きてカーテンを開ける時が幸せ。

アデルのRolling In The Deepを聴きながら庭で草取りをしたって、ご近所には聞こえない。日が暮れて檜の林が黒々と沈んでいくと明日は何をしようかと思う。

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