エンドレスの草取り

おばちゃんは山菜取りに誘われても断ろうと思う。何故ならきっと遭するからだ。目の前の山菜しか見えなくなって、一本摘んだら次の一本を探し、さらに前の木の茂みに進む。

気がついたら山の奥深~くに迷い込んで、帰り道も分からず詰め込みすぎた背負子の重みにヘタって、弱弱しく助けを求めるのだ。助けて~。

一般に学業とか、ビジネスとか、スポーツとかは結果が出るものは時間がかかるものだ。
ところが、山菜取りも草取りも結果はすぐ出る。ターゲットは明らかで目的ははっきりしている。次から次へ現れるトロフィーが麻薬のように人を誘うのだ。

おばちゃんはひときわ溺れやすい性格である。
だから山菜は取らず、庭の雑草取りに専念しようと思う。毎朝、起きると花ばさみをもって、花がらを切って庭を一巡回する。

今日のガウラの咲き加減はどうかとか、バコパは暑さにやられていないとか、そろそろ80円の芽が出てきたとか。どの段段庭コーナーに雑草の気配があるか、しかと目にとどめておく。

早めの昼ご飯を食べたら、庭に出陣である。
ドクダミは庭の恥だ。カタバミは敵だ。根を残すと将来に禍根を残す。ほじって根っこが完全に抜けたときの爽快感は、ニキビをつぶした満足感に通じる。

ヒメジョオンは双葉のころは、勿忘草とそっくりだ。若すぎると区別がつかない。2~3日経ってヒメジョオンだと分かったら、躊躇なく抜く。

外来者は軟弱なので、意外と踏ん張らずに抜ける。母子草は白っぽくぽやぽやと花は卵餡のような黄色。温情を掛けると、次の年は母子草の群生が出現する。

庭に出れば、おばちゃんは下を向いている。
鵜の目、鷹の目というが、おばちゃんの目は雑草を探す草取りの目だ。柵ごしにお向かいのおばちゃんと園芸話をしていてもおばちゃんの目は雑草取りモードになっているので、お向かいさんの顔を見るより、ついつい足元や背後の地面に気が行ってしまう。

おっ、お向かいさんの足元にドクダミ発見。背後にはスギナが!もう、抜きたくてしょうがない。

こんなに夢中になれるしかも金がかからない楽しみはそんなにないね。庭を2周くらい草取りをして、四時まえには撤収するのだが、その時はじめて庭を見ていないなかったことに気が付く。見てたのは地面と雑草!服を着替えて、ベランダから庭を鑑賞する。至福を味わう。

お向かいのおばちゃんによると、先代の家主のおばちゃんも同じだったそうだ。ベランダから庭を見る時が一番幸せ。と

ウチの庭には骨がある

ウチの庭にはトリ手羽と魚のカマが落ちている。
庭から生えたわけではなく、我々が食べた後の骨。カリフォルニアの友人が当時、EM(effective microorganisms)菌を利用して、ガーデニングをやっていて、私も何回か招かれたことがある。

米のとぎ汁にEM菌の溶液と糖蜜を入れて発酵させ、液肥として使ったり、生ごみをEM菌で発酵させて肥料として野菜や花つくりをしていた。

山の古家に落ち着いたらEMのぼかしとコンテナを買って生ごみを肥料にする計画だった。

友人はちょっと臭いと言っていたけど、生ごみはEM菌で発酵させると、卵の腐ったような臭い。それでも生ごみを捨てずに活用できるから、エコなんだけど。お茶ッ葉、残した魚の骨と皮、チキンウイング、野菜の皮。まんべんなくぼかしをまぶす。

コンテナが一杯になったら、先代のおばちゃんが残してくれていた大きなバケツに移す。
底に、ためておいた落ち葉、庭の土、発酵生ごみ、でまた落ち葉とバケツをミルフィーユ状態にする。

季節によっても違うけど、2か月くらいたったらちっちゃめのスコップで上下ひっくり返してみる。自然を大切にするグリーンファーマーになったような気がする。

EMで発酵すると、何でも分解されるのかと思っていたが大間違いだった。ぼかしの時点では、卵の殻もブリのカマもチキンウイングも原型をとどめている。アジの小骨は所在が分からなくなるけど、大根の皮も健在だ。この大根の皮はずいぶん長く形が残るね。

バケツのミルフィーユが6か月も経つと、腐葉土と生ごみはだいぶ馴染んで、土と溶けきらない手羽やカマまじり状態になる。

EMのコンテナは2つあるので、ミルフィーユバケツも2つできる。1年くらい寝かして、これから春!っていうときに庭に施す。
結果、ウチの庭は春先すこし臭く、チキンウイングやブリカマが散在する。お向かいのおばちゃんと話をするときに、ツツジの根元にチキンウイングが見えたりすると、そっと足で押しやる。

ブリカマは人に見られても正体は分からない。一度発酵して、太陽光線にあたった方が分解が早く進むようだ。

EMのぼかしが切れてしまったとき里のガーデンセンターのぼかしを代用したら、匂いが随分ましだった。発酵した漬物のような匂い。沢庵みたい! なので、それからは高いEMは使っていない。毎晩、生ごみの始末をするのが、面倒くさいかな。コンテナの蛇口が壊れて、ハエが入り込むので、ちょっとお休み中

mikie@izu について

海外在住何十年の後、伊豆の山に惹かれて古い家を買ってしまい、 埋もれていた庭を掘り起こして、還暦の素人が庭を造りながら語る 60年の発酵した経験と人生。
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