エンドレスの草取り

おばちゃんは山菜取りに誘われても断ろうと思う。何故ならきっと遭するからだ。目の前の山菜しか見えなくなって、一本摘んだら次の一本を探し、さらに前の木の茂みに進む。

気がついたら山の奥深~くに迷い込んで、帰り道も分からず詰め込みすぎた背負子の重みにヘタって、弱弱しく助けを求めるのだ。助けて~。

一般に学業とか、ビジネスとか、スポーツとかは結果が出るものは時間がかかるものだ。
ところが、山菜取りも草取りも結果はすぐ出る。ターゲットは明らかで目的ははっきりしている。次から次へ現れるトロフィーが麻薬のように人を誘うのだ。

おばちゃんはひときわ溺れやすい性格である。
だから山菜は取らず、庭の雑草取りに専念しようと思う。毎朝、起きると花ばさみをもって、花がらを切って庭を一巡回する。

今日のガウラの咲き加減はどうかとか、バコパは暑さにやられていないとか、そろそろ80円の芽が出てきたとか。どの段段庭コーナーに雑草の気配があるか、しかと目にとどめておく。

早めの昼ご飯を食べたら、庭に出陣である。
ドクダミは庭の恥だ。カタバミは敵だ。根を残すと将来に禍根を残す。ほじって根っこが完全に抜けたときの爽快感は、ニキビをつぶした満足感に通じる。

ヒメジョオンは双葉のころは、勿忘草とそっくりだ。若すぎると区別がつかない。2~3日経ってヒメジョオンだと分かったら、躊躇なく抜く。

外来者は軟弱なので、意外と踏ん張らずに抜ける。母子草は白っぽくぽやぽやと花は卵餡のような黄色。温情を掛けると、次の年は母子草の群生が出現する。

庭に出れば、おばちゃんは下を向いている。
鵜の目、鷹の目というが、おばちゃんの目は雑草を探す草取りの目だ。柵ごしにお向かいのおばちゃんと園芸話をしていてもおばちゃんの目は雑草取りモードになっているので、お向かいさんの顔を見るより、ついつい足元や背後の地面に気が行ってしまう。

おっ、お向かいさんの足元にドクダミ発見。背後にはスギナが!もう、抜きたくてしょうがない。

こんなに夢中になれるしかも金がかからない楽しみはそんなにないね。庭を2周くらい草取りをして、四時まえには撤収するのだが、その時はじめて庭を見ていないなかったことに気が付く。見てたのは地面と雑草!服を着替えて、ベランダから庭を鑑賞する。至福を味わう。

お向かいのおばちゃんによると、先代の家主のおばちゃんも同じだったそうだ。ベランダから庭を見る時が一番幸せ。と

ウチの庭には骨がある

ウチの庭にはトリ手羽と魚のカマが落ちている。
庭から生えたわけではなく、我々が食べた後の骨。カリフォルニアの友人が当時、EM(effective microorganisms)菌を利用して、ガーデニングをやっていて、私も何回か招かれたことがある。

米のとぎ汁にEM菌の溶液と糖蜜を入れて発酵させ、液肥として使ったり、生ごみをEM菌で発酵させて肥料として野菜や花つくりをしていた。

山の古家に落ち着いたらEMのぼかしとコンテナを買って生ごみを肥料にする計画だった。

友人はちょっと臭いと言っていたけど、生ごみはEM菌で発酵させると、卵の腐ったような臭い。それでも生ごみを捨てずに活用できるから、エコなんだけど。お茶ッ葉、残した魚の骨と皮、チキンウイング、野菜の皮。まんべんなくぼかしをまぶす。

コンテナが一杯になったら、先代のおばちゃんが残してくれていた大きなバケツに移す。
底に、ためておいた落ち葉、庭の土、発酵生ごみ、でまた落ち葉とバケツをミルフィーユ状態にする。

季節によっても違うけど、2か月くらいたったらちっちゃめのスコップで上下ひっくり返してみる。自然を大切にするグリーンファーマーになったような気がする。

EMで発酵すると、何でも分解されるのかと思っていたが大間違いだった。ぼかしの時点では、卵の殻もブリのカマもチキンウイングも原型をとどめている。アジの小骨は所在が分からなくなるけど、大根の皮も健在だ。この大根の皮はずいぶん長く形が残るね。

バケツのミルフィーユが6か月も経つと、腐葉土と生ごみはだいぶ馴染んで、土と溶けきらない手羽やカマまじり状態になる。

EMのコンテナは2つあるので、ミルフィーユバケツも2つできる。1年くらい寝かして、これから春!っていうときに庭に施す。
結果、ウチの庭は春先すこし臭く、チキンウイングやブリカマが散在する。お向かいのおばちゃんと話をするときに、ツツジの根元にチキンウイングが見えたりすると、そっと足で押しやる。

ブリカマは人に見られても正体は分からない。一度発酵して、太陽光線にあたった方が分解が早く進むようだ。

EMのぼかしが切れてしまったとき里のガーデンセンターのぼかしを代用したら、匂いが随分ましだった。発酵した漬物のような匂い。沢庵みたい! なので、それからは高いEMは使っていない。毎晩、生ごみの始末をするのが、面倒くさいかな。コンテナの蛇口が壊れて、ハエが入り込むので、ちょっとお休み中

日本のイチゴは獰猛である

イチゴが獰猛だなんて知らなかった。日本のイチゴは芸術域に達していて、アメリカ人に一粒食べさせれば感涙するに違いない。今までアメリカ人が食べていたイチゴとは何なのか、野菜か?アメリカのイチゴの中心は真っ白で固く酸っぱい。

ナイフでくりぬいて切りとるのだが、便利な芯ぬきが売っている写真のイチゴの白いところは芯、左のクラックは空洞。穴がもっと大きく空いていたり白い繊維が固い。

日本帰国の時に、これは日本で売っていないからと、イチゴの芯抜きを買ってきて親族に進呈し、親族も驚いて、目の前でちょうど旬だったとちおとめの芯を抜こうとした。とちおとめ 潰れましたわ。
そもそも、日本のイチゴの芯は大きくもないし抜く必要もない。それほど実はジューシーで甘くてかおりがある。

だが、芸術的なイチゴは高い!芯を抜いて、ざく切りにして丼に入れてヨーグルトをぶっかけて夕ご飯替わりに食べるような食べ方はできない。エイ!と目をつぶって8粒599円のとちおとめを買い、大事に大事に味わう。
もっと食べたい!

それで2株苗を買って、ポットに植えてみた。
1年目、数粒実を付ける、野生動物に半分やられる。残りをありがたく頂戴する。イチゴはポットで年越しした。

2年目、ポットからやたら子株が伸びる。伸びた子株が地面で根付く。イチゴ蔓 石垣のヘデラと戦う。ヘデラ戸惑う。イチゴ蔦ヘデラを乗り越え、地面があれば軟着陸、根付く。
初夏、数粒実をつける。野生動物に半分やられる。残りをありがたく頂戴する。

3年目、ダンナがイチゴ棚を作る、石垣に居ついたイチゴが、イチゴ棚に伸びて居つく。イチゴ棚が2段になる。イチゴ蔓、石垣のそこら中を這い、隙あらば根付こうとする。ヘデラとイチゴ蔓絡み合って分からんようになる。

食欲が勝ってヘデラを始末する。イチゴますますたけり狂う。イチゴ棚4つになる。イチゴ棚からパラシュートのように地面に降りて地面がイチゴ小株だらけになる。イチゴ実をつけたかもしれないが、食べてない。イチゴ ついにジャングルになる。今年 ジャングルを始末し

石垣と棚4つに収まるだけにする。結論 日本のイチゴは超美味だが獰猛である。

とりあえず植えてみようエリゲロン

おばちゃんのポリシーは「とりあえず植えてみよう」

オンラインの多年草・宿根草カタログで「スパニッシュ・デイジー」を見た瞬間欲しいと思ってしまった。苗は安くなく送料が痛かったけど、3株頼んだ。

届いた苗は随分根が回っていて、初心者のおばちゃんは根のほぐし方も植え方もどこに植えるかもよく分かっていなかったから、梅の根元に適当に穴を掘って埋めて、水をジャージャーかけた。一輪二輪花は咲いたけれど、オンラインの写真のようにピンクと白の小花の競典とはならなかった。なんだか、しょぼしょぼしたまま枯れた。高かったのに!その後スパニッシュ・デイジーはエリゲロン(源平小菊)と呼ばれていることを知った。
ピンクと白の2色が同じ茎から咲くのできっと源平なのだろう。なかなか優雅な名前である。

次の春、散歩から帰る途中の道にどう見ても「エリゲロン」らしい草が生えている。
花はまだ咲いていなかったけど、ひと夏中見た葉っぱはまぎれなくエリゲロンだった。別荘地の粗い砂利道にエリゲロンが野生で生えている?狐につままれているようで、それでも3把抜いてリベンジに梅の根元に植えてみた。

同じ土壌と気候で育った野育ちは瞬く間に育ち、花を咲かせた。真正のエリゲロンだった。花は咲いたばかりでは白で時間がたつとピンクになり、次次に咲いてくるので、株は白とピンクの花盛りになる。咲いている最中にこぼれ種は飛んで次々に領土を増やしていった。

秋口になっても勢いは衰えず、細い花茎が伸びると、地面に付いて子株ができた。エリゲロンは雑草並みに丈夫で、若干紅葉しつつ山の冬も苦も無く越した。

次の年の春は狂乱だった。
石垣のすき間というすき間から、砂利道の間からエリゲロンが生えてきた。
おばちゃんは嬉しかった。ウチの庭が花でいっぱいになる。エリゲロンはさらに順調に増え、秋には花でいっぱいというよりは、
何やらそこら中、モソモソと茂みが生い茂っているという感じになってきた。優雅で小粋であるはずの理想とはちょっと違う現実?おばちゃんはどうしていいか分からない。せっかく植えて立派に育ったお花をどうしたらいいか。

最初が3把植えただけで今年はすでにジャングル。来年はスーパージャングル間違いなし!それで一部残してエイやッと刈ることにした。

結果は、次の春もしっかりエリゲロンは生えてきて、それなりの美を誇ったのであった。結論、エリゲロンは間引いても大事ない

移住4年目

ダイソン物語

おばちゃんはダイソンの回し者でもなければ提灯持ちでもなかったのよ。
21世紀に入った現代にいまさら掃除機と言われてもそれで何が違うの?と頭をかしげた。ウチのまーちゃんがクリスマスに自分でダイソンを買って
自分にご褒美とかSNに写真をあげていた時も、え~?掃除機?と言ったの。
でもマーちゃんは、おばちゃんダイソンは別格なんですよ。と言ってね。

そうかしら?と思いながらアマゾンのポイントが溜まっていたのでダイソンを探してみることにしたわ。FactoryRefurbishedがあった。日本ではなじみがないけど、アメリカでは初期不良で返品されてきた電化製品を製造者が自社の工場でチェックして整備し直してもう一度製品として売り出すの。無論、安いの。製品保証も付くから。

おばちゃんはビジネスで必要な器具をファクトリー・リファービシュで揃えたけど全く不備がなかった。なのでダイソンもファクトリー・リファービシュで探しポイントを合わせたらなんとV6を136ドルで買えたわ。

使ってみてマーちゃんが言う別格の意味が分かった。これは掃除機界の革命よ。とっても満足。掃除機で幸せになれるとは思ってもいなかった。

帰国が決まって、おばちゃんは予備に買って帰ろうと思ったのよ。リファービッシュでポイントを使ったらアニマルを180ドルで買えた。一本は長いスティックでもう一本は短いハンディにしておいて必要に応じて持ち替えると超便利よね。

日本に帰国して1年半ほど幸せだったの。ところが、V6がぷすんと止まるようになってしまったのね。もう一台のアニマルがあるからそちらにスイッチするのだけど、原因が分からず困ったわ。それで電気屋さんに持ち込んでみた。すると、バッテリーが寿命なんですって。そのうえ海外仕様のバッテリーは日本では扱ってないんですって!

じゃあどうすればいいの?
アメリカのアマゾンなら替えバッテリーはよりどりで売っているのよ。でも海外配送OKがほとんどないのね。やっと見つけてポチッてコンファメーションを受け取って安心したら、待てど暮らせど届かないのよ。

1か月も届かないからセラーに連絡したらオーダーが取り消されてたのね。
製品のディスクリプションはいつの間にか、海外配送なしに書き換えられていて在庫もゼロよ。おかしいじゃない!

これはサムスンのせいよ。
あそこ製のリチュウムバッテリーがあっちこっちで爆発して飛行機もサムスンの携帯すら嫌がるようになってしまったせいよ。サムスンのせいでリチュウム電池一般が海外発送不可になってしまったじゃない。

さぁて、どうしようかしら。アマゾンがダメならEbayがあるじゃない。香港の業者が見つかったわ!日本の配送Okですって。ポチる。コンファメーションも来たわ!

まだ配送が来ない。香港なら10日で着くはずじゃない。1か月たっても着かないわ。業者に連絡を取ってみたら「あれ、おかしいな送ったんだけど!ついてなかったらリファンドしてあげる」って、。
うそ、絶~対うそ。

出品製品のディスクリプションをチェックしたら、また同じこと。海外発送できませんって!リチュウム電池のせいよね。サムスンのせいよね。

いいわ、それじゃOCのまーちゃんに送ってもらうから。人様に手間をかけるのは忍びなかったのだけど、ダイソンのためにマーちゃんに送ってもらえるように頼んだの。まず、アマゾンUSでポチってマーちゃんの住所に送った。

アマゾン早い。デリバリしました~って。ドア前に箱を置き去りにした写真付きコンファメーションを送ってきた。なのに、まーちゃんは受け取ってないというのよ。アマゾンなによ。置き去りにするから盗まれちゃったじゃない。
おばちゃんは怒って、アマゾンに「ゴラ~」した。アマゾンはゴメンね、もう一度オーダーして。前の支払いと相殺するからって。
それでマーちゃんはやっとバッテリーを受け取り、マーちゃんの旦那が日本出張の時に宅急便で送ってくれてやっとバッテリーを受け取った。長かったわ!!!

取り換え用のバッテリーは問題なく動いたわ。2か月半待っている間にアニマルの方もバッテリ寿命の症状がでるようになっていたのよ。おばちゃんは2個オーダーしていたから2つともバッテリーを交換したのよ。

でも、な~んか引っ掛かるものがあるのね。パワーが弱いというか吸い込みがしゃっくりしているような。そのほかにもアメリカから持って帰ってきた電気製品が軒並みおかしくなってきたのよ。ブラウンのObalBの電動歯ブラシとか。回転がイヤに遅くなってきちゃって、歯が黄色くなってきた気がする。

おじちゃんの大工道具も軒並み変。ブラックデッカーもDeWaltのソウもバッテリーがみんなダメになってきたとおじちゃんが悩んでいた。この時て、やっとおばちゃんたちは電圧のせいではないかと思い始めた。

ダイソンのモーターボディがいるわ。パワーパックが低い電圧のせいでダメージを受けたのね。調べたらモーターボディもやっぱり日本製と交換性が無いのよ。

ダイソンが無いと掃除をする気になれないから。電気屋のチラシを見たらセールだったのね。日本製のV7が27,500円ですって。思い切って買ったわよ。ダイソンが3本になってしまった。

でも悔しいじゃない。
3本あるのにモーターヘッドが交換できなければ1本なのよ。で、また、マーちゃんの出番だわ。アマゾンからマーちゃんに送って、マーちゃんの旦那が出張で日本に来て、成田から宅急便。駐在に送り出したのに、しょっちゅう日本と往復させる会社でよかったわ。マーちゃんは出張つづきのお留守番が大変だけど。

ここまで来たらもう変圧器を買うしかないわよね。アメリカ用110Vの変圧器を買ってモーターボディは交換動画がUTubeであったからおじちゃんに見せて交換してもらった。V6は100vの電圧で稼働させていた時間が一番長かったせいか、バッテリーが変になりかかってるの。
また大変よ。


長~い海外生活から帰国

平成が始まるころ夫婦で米国に移住し平成が終わるころ日本に帰国した。

漢字も書けなくなるほど海外生活は長い間堪能した。還暦を前に日本に帰国するのにさて、どこに住もうかしら?

人間が作る美しい芸術は大都会にある。
たまには美しい物を味わえるように首都圏から1時間半のエリアで家探し。

できれば庭がついていて、畑が作れるところ。不動産屋さんに物件を案内された時に思わず「この物件を知ってる」と言ってしまったの。

アメリカでネットの物件を検索していた時に、手ごろな物件だと思ったのだけど、写真が魅力的でなく忘れていた家だったわ。

家の内見の後こちらが庭だと思います、と不動産屋さんに従って降りたところは、自分の足も見えないカヤとススキが肩まで生い茂った斜面だったわよ。

不動産屋さんがこっちこっちっと言いながらぐるりと歩いたのに、見えるものは雑草と枯れかかった木立だけ。

でもなぜか直感でこれは素敵な庭になるのではないかと感じたの。おばちゃんはビビっときたの。庭なんかいじったことがないのに。

段段庭ができるまで

引っ越しは5月15日。春は爛熟して山は藤やツツジが咲き乱れていた。
家の中の片づけが大体終わって次は庭よ。日本で一番素晴らしい季節なのに、庭?らしき荒地にはただの一輪も花が咲いていなかった。雑草すら花が咲いていなかったのは不思議。

ススキ、カヤ、シダ、ドクダミ、クズやヘクソカズラ、落ち葉。茶色と緑だけ。おじちゃんと二人で長靴を履いて帽子をかぶり手袋をして、さて、まずススキとカヤを刈らなきゃ。

抜けない雑草はカマで刈って、ススキは切った切り株に除草剤をハケでペタペタ塗った。むか~し、TVチャンピオンのDVDを借りた時にミントの駆除にそんなことをしてたのを覚えていたの。

ススキは除草剤にも負けず、若芽を生やしてくるからそこをまたハサミでチョキチョキ切って除草剤を塗る。しばらくすると、また青い芽が、、、で3回くらい除草剤を塗るとまっ黄色になって根まで死ぬ。

力を入れずに株がぱさっと抜けるの。午前中に3時間、午後に3時間夫婦で刈り、落ち葉をかき掃き、3週間後!45リッターのゴミ袋に80袋の枯れ枝落ち葉を処理して、庭のコンクリートデッキが出てきたわ。

izu garden
my hidden garden 2017

先代おばちゃんが段々庭の境目にツツジとサツキを植えていた。おばちゃんが亡くなって草を取る人も居なくなって、庭はススキに埋もれてしまってツツジが咲くことも何年もなかったんでしょう。

枝が伸びすぎだったから、素人がめちゃくちゃな剪定をしてみて、気がついたらツツジが一斉に咲きだしていたのね。

素人のDIY

あこがれていた藤棚を作って?とおじちゃんに頼んだら、伐採してためておいた雑木で作ってくれた。素人で枯らしちゃったら嫌だから藤を4本それぞれの支柱分植えて、お向かいさんから笑われたわ。

藤は一本でも十分なんですって。4本も植えたら棚が重さで持たないわよって。
おばちゃんたちは知らなかったけど、伐採した天然木はそのまま使うとすぐに傷んで朽ちてしまう。

最初に作った藤棚は3年で痛んで、製材した材木を使って作りかえたの。1本の藤は玄関先に移して、あとの3本のつるを外してまた絡ませるのが大変だったわ。まだ3本は生きていいて、おじちゃんが切るのを可哀そうだと言うから。

同じく生木で作ったラティースもまず皮がはがれ、腐って2年でおじちゃんが作り替えた。伐採した生木を使うなら、まず枯らして皮を剥いでそれからペイントをしないと耐久力が無いみたい。

太い切り株は二股のところを加工して、おじちゃんがスツールを作ってくれた。

引っ越して1週間目にイノシシが家の床下に入り込んで、猫がおびえたから家の足をラティースで囲い敷地もフェンスでぐるりと囲んだ。多分山の生き物は人間より野生の人口が多いわよ。

おじちゃんは物を作るのが好きで、昔から自分で野菜を育てて自給自足したいねと言っていたの。最初の年に葉物を植えたら山中の虫が寄ってきて食べられちゃったわ。

レタスなんかは地植えはムリみたい。白菜やキャベツなんか超難しいわよ!

おばちゃんたちは人生の第三コーナーを回っちゃったから、おじちゃんはキュウリやトマトを作って、おばちゃんはお花をうえて家が朽ちるのが先か、おばちゃんたちの体が衰えるのが先か、出来れば先代のおばちゃんのように、ある日この地で倒れて旅立ちたいわ。

山の家には四季があった

何がびっくりしたかというと、山に雨が降る。

それはもう、雨が降らない月がない!
湿った草の匂い!滴る水滴!トンボが飛んでる。

30年ぶりに見たトンボかも。南カリフォルニアの家では植木鉢に花を植えあった。青いロベリアで、咲いてはこぼれ咲いてはこぼれ。

花は一年中咲くものじゃない?違うの?この庭がどんな庭になるか、草取りをしたこともなかったおばちゃんには分からない。

移住してから知ったけど、静岡県は年間降雨量が日本5位だそうだ。

雨が降ると檜の森に靄がかかる。早朝などは音もせず霧が流れる。

檜に絡みつくツタは、ノウゼンカズラで先代の持ち主のおばちゃんが植えたという。

茂みは6月になるとミョウガの林になる。夢みたいだ。カリフォルニアで宝石のように珍重した一本1-2ドルのミョウガがタダで取り放題!

庭に転がっていた岩を寄せ、コンクリート管を立ててみた。溶岩石を積んでみた。

一年草も多年草もどう違うか分からないので、とりあえずホームセンターで売っているよさげな花を植えてみた。

花の名前はカタカナなので、悲しいかな年のせいで覚えられない。80円だったので、80円と呼ぶ。この80円はよく茂ってよく増えた。困ったくらい増えた。

雨が大地を潤し、黒い芳醇な大地が形成されていく。
土は湿った匂いがする。雨上がりは草いきれがする。もと砂漠のようなぱっさぱっさで白っちゃけて石っころだらけの南カリフォルニアに黒い芳醇な大地はなかった。

雨が大地を作る。静謐と山の自然が大好き

毎日季節が動いていく。
駿河湾から雲が流れてくると、天気は下り坂になり気温が下がる。

秋はものすごく短い。紅葉が見られるかどうか、3週間もたつと初冬に突入していく。

11月に入ると散歩の際にふと木が燃える臭いが漂う。

山の住人が薪ストーブを焚き始めるのだ。

家の軒下には乾燥させるために薪が積んである。脹脛くらいの太さの薪がぎっしりと棚に積まれている。

移住して初めての冬には雪が10センチ積もった。気温は零下に3度まで下がり、おばちゃんの車のワイパーはフロント・シールドに張り付いて凍った。

冬は車のワイパーを立てるのだという。1月も2月も寒くて庭は眠っている。

2月の終わりになると、そろそろ土が呼吸をし始める。日なたは霜がつかなくなって、ムスカリが青い芽がのぞかせる。急がないといけない。急いで枯れ枝を払って園芸用の土を追加して肥料をあげないと。春が来る!

四季?そんなものがあったのをすっかり忘れてたわ。

春にもクーラーを使い、焼け付く夏と熱い秋と涼しい冬があって、3月のアカデミー賞の頃には空は明るくまた春・夏になってクーラーを使う。

一年中スーパーにはスイカとトウモロコシがあった。帰国したら、毎日お天気が変わり、季節は毎日進んで日本の自然はこんなに美しかったのかとおばちゃんは感動した。

別荘を建てる時は

別荘を建てるというと、日本人はテンションが2目盛りほど上がってしまうらしい。この伊豆の山でも、夢と妄想が爆発した家が散見されるわ。

定番のログハウス。 丸太を割って張り付けログ風など段階様々。メルヘン調 丸いとんがり屋根とか。

メキシコ風のパブかレストランのような洋風。レンガ造りの洋館~ 程度さまざま。

山は里と比べ物にならないくらい湿気が多く、本物の丸太は湿気を吸うし朽ちやすい。

下駄箱の革靴は白くカビを吹く。立ち木からの落ち葉が、雨どいやバルコニーの排水溝をふさぎ屋上がプールになったあと、天井がおちるらしい。だから山の家には雨どいがない。

山で家を建てるときは究極の選択をしなくてはならない。おじちゃんと二人で挙げるポイントは、景観と立地。もし、眺めを優先したら、そこは崖地。

安定の地盤を優先したら眺望がない。

隣の家が見えるか檜に埋もれているか。

眺望がよく安定した平らな区画はとっくの昔に売れて豪奢な別荘が立っている。

眺望がいいお家は確かに素晴らしい眺めで富士山も絶景もウチの!と言いたくなるが、台風と豪雨の時は真剣に怖い。2019年の台風で家が一軒がけ下に落ちた。

朝起きてカーテンを開ける時が幸せ。

アデルのRolling In The Deepを聴きながら庭で草取りをしたって、ご近所には聞こえない。日が暮れて檜の林が黒々と沈んでいくと明日は何をしようかと思う。

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