モグラ対決

モグラという動物は見たことがある。
子供のころ田んぼの畔に遊んでいたような気がする。帰国してからはお隣の地所にある湧き水から水を飲んでいた。ムクムクしていてキュートだと思う。

ある日、貴重なダーラの苗を植えようとすると、地面が妙に盛り上がっている。
苗のために穴を掘るまでもなく、ごぼっと地面に穴が開いた。地面の下にトンネルがある。すでに植わっている苗も妙に地面から浮き上がっている気がする。気のせいではなく人差し指を突っ込むと、そにはぽっかりと穴があった。

雨が?水流が地面の下を流れたのだろうか?否、ここんところ雨は降ってないのである。立ち上がって段々庭を観察すると、地面のモコモコはあちこちにある。もしや、これが話に聞いたモグラだろうか?

私の危機管理能力は高い。
ツテも援助もなく外地で生き抜いてきた経験が能力を培った。早速、調べ始める。たかが、小動物駆除に大げさな作戦は必要あるまい。ミニマムのコストで最大の効果を!忌避剤である。

そうよ、そういえば、お向かいさんが先代のおばちゃんは、モグラ除けにナフタリンを庭に埋めていた。と。ナフタリン?以外な言葉が出てきたので、私は眉につばつけて、右から左に流していたのであった。ホームセンターで買ってきた忌避剤は、ナフタリンそのものに匂いがする。なんなら、このまま洋服箪笥にいれてもいいくらいだ。

とりあえず、庭のもこもこトンネルに落とし込んで、モグラを駆除してくれるわ。さて、ウチのモグラだが、忌避剤の説明書を読んでみると、モグラの導線を囲い退避路を絶つと、モグラがパニックになってあばれるという。モグラあばれ

ほんとかいな?と思うが庭に起こっていることはモグラ暴れなのだわ。しかし、モグラの主要路がどれで、退避路がどこかなんて分かるか?知らんがな。

モグラは敏感な動物らしい。匂いにも敏感だが音と振動も嫌なのだという。コストを考えて、ダイソーに走る。目的は風車である。風車が回る時その振動は風車の柄に伝わり、地面に伝わり、モグラに伝わり

モグラの細君が
「こんなブルブルする場所嫌だわ、あなた新しい物件見つけてきて?」
と一家移住間違いなし。モグラのお母ちゃんは風車の振動ごときは屁でもないらしかった。おばちゃんもダイソーで撃退できると信じていたわけではないけど。予算枠をあげて、真剣に作戦を遂行するときが来たようだ。

匂いと振動はすでに試したので、撃退器で音を試してみることにする。JAと園芸センターをとAliExpressを比べるとAliが一番安い。ソーラー電池のMole Repellerを買う。

モグラの主要路らしきトンネルに2機仕掛ける。杭を打ち込んでも地上には甲高いチーという音が聞こえる。お向かいのおばちゃんは聞こえないのだそうだ。聞こえる私の耳はまだ還暦。

そうして半年は静かだった。

今年の春、またモコモコが現れ始めた。メインストリー沿いで、ソーラー撃退器を迂回して植え替えたビオラやベルフラワーが軒並み根が浮いてしまった。撃退器はちゃんと動いているいるので、考えられる原因としては

モグラが慣れたのではないか?
モグラは慣れたのか?
モグラが慣れたんだな?
モグラは慣れたんだ!

線路沿いに住むと、いつの間にか電車の音と振動に慣れてしまうというではないか。ということで、作戦変更。ナフタリン系忌避剤 撤収風車 玉砕ソーラー撃退器 モグラの慣熟性に 退却
ネットを検索すると、面白い記事が上がってきた。冗談かと思ったけれど、

モグラはチューインガムが消化できず食べると死んでしまうという。元々モグラは栄養効率が悪く、四六時中食べていないとすぐ餓死するのだそうだ。記事の書き手は「マルカワのオレンジ・チューインガム」がよく効くという。

おばちゃんが子供のころ食べた、昔懐かし昭和のガムだけど、いったいどこで売っているだろう?
駄菓子屋展にはリンゴ・葡萄・桃・メロン味があったよ。モグラは匂いに敏感なので、素手でさわらないよう注意があった。おばちゃんの庭手袋は泥だらけで、間違っても人の匂いはしないから大丈夫よ。

早速、メイン・トンネルに落とし込む。食べたかな?死んじゃったかな?死骸が庭に転がっているんじゃないかしら。
毎日ドキドキして眠りは浅かったけど、モグラの死骸は一向に転がってたりせずかといって、モコモコは減りもせずグラジオラスの林にジグザグを書いてたりする。
ある晩、寝ながらふと思いついた。昔見たモグラは「おちょぼ口」だった。ミミズを縦に食べるのが精いっぱいの口に直径1センチを超えるマルカワの球体ガムは噛みにくいのではないか?

そこで、おばちゃんはガムを庭に転がっている石で叩き潰し、またもやメインストリート・トンネルに放りこんだのであった。念のために、ダンナにお願いしてモグラのメインストリートに木の杭をすき間なく木槌で打ち込んで、分断してもらってから、安心してゴージャスなベロニカを植えたのであった。

おばちゃん、うっかりしていたけど、モグラの被害は人類共通であるに違いない。英語のサイトを漁ってみると、駆除にはやっぱり匂いと音が良いという。
モグラはマリーゴールドの花の匂いが好きではないので、庭に侵入しないようにぐるりと植えよ、とある。モグラと一緒で、おばちゃんもマリーゴールドが嫌いだ。この案は使えない。

一縷の望みで、もしかしたらモグラはオリゴ糖が苦手かもしれない。人間の腸で消化できないらしいから、糖質注意のダンナのおやつのオリゴ糖チョコレートをかすめてチューインガムに追加してやろう。今度こそ、餓死するかも。オリゴ糖チョコをトンネルに掘りこんでみる。
アリが来た。

試せることはみんな試した。もう、最終兵器を投入するしかない。モグラ捕獲機は地面のトンネルに埋める。通りかかったモグラが踏むと、バネがハネル。

まず、ダンナが逃げた。私だって、即死したモグラを捕獲機から外したくない。かくて、取り寄せた捕獲機2器はトンネルのメインストリートに一応設置されたけど、地上に出ているバネは一向に閉まらない。

新たなトンネルは、捕獲機を迂回している。バネの取っ手は地上でサビ始めた。今日もウチのモグラは元気だ!

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