移住5年目の春

Photoshopはおばちゃんのお気に入りのソフトなので、チラシもポスターもこれでデザインしていた。キャンバスのどこに何を配置してレタリングをどこに持ってくるか、何色がふさわしいか。タテ・ヨコの話

それがお庭の園芸になると、タテとヨコに奥行きと高さが入ってくるわけ。背の低いお花は手前に背が高いのは奥に。ど素人もこのくらいは分かった。

ところが、園芸はさらに時間を考えないといけないのよ。
3か月後に手前のお花と後ろのお花がどう育ってるか想像しないといけない。この手前のダーラは15センチくらいでこじんまりおさまるはずだったのに、意外と横に這っちゃうとか、シロタエギクが大きくなりすぎて一番後ろのデルフィニウムが隠れちゃうとか、そこんとこをよく考えて春植えないといけない。ああ、複雑!

そしてさらに日当たりと温度と土壌
陽が当たっていい植物と枯れちゃう植物がある。園芸店で売っている苗のラベルには日陰、半日蔭、陽なた、って書いてあるからそれを参考にする。でもうちの日影がどのくらい日陰なのかわかんない。西日ってのはどうすんのさ。植えてみるしかわかんないじゃない?

そのうえ、温度
これは苗を買う時の温度じゃないから。
宿根草だとして、真夏の一番暑い温度と、真冬の寒さ。うちの庭の真夏の暑さに耐えられるのかしら?半日陰に植えたら真夏も大丈夫?

気温5度というのは冬越しできるかどうかの境目らしい。うちの庭は冬は霜が降りるし、たまに5度以下にもなる。根だけで生きていけるのか。それとも株を掘り上げて軒下で春まで活けたほうがいいのか。種を落として次の春にまた出てきてくればいいのだけど。

それから大事なのは、
NHKの園芸王子も言ってたわ。風通しが大事って。
あまり込み入ったところに植えると、風が通りにくくて雨が続くとカビが生えちゃってダメになることがある。ムレちゃうと腐るのよ。ブルーデイジーが好きなのに、うちの庭じゃどうしても育たないのよ。だから風通しは大事。

この風通しは、植えるときの風通しじゃなくてその苗と周囲の苗が育った後でも風が通るかを考えないといけない。
あ”~預言者にならないといけない。

お花のも大事。
うちの日陰だと緑が濃くてお花の色が深い色だと沈んでしまうのよ。日陰には斑入りの明るくしてくれる植物が欲しいわ。

おばちゃん、土壌をわすれただろうって?
土壌?素人上がりのおばちゃんはまだ土壌まで頭が回らないのよ。どのお花にはどういう肥料がいいのかって、そこまで覚えきれないわよ。しらん。

台所の生ごみを発酵させて作った自家製肥料をやってみたり、秋の落ち葉を集めて腐葉土を作ってみたり。どれがどこにいいか正直わかんない。窒素?リン?カリュウム?
知らない、わからない、ほっといて。

発酵牛糞とかその時ある肥料を一律全部庭に施しちゃうから。お花から好き嫌い言われても困るじゃない。
一応、栄養なんだからさ。これは嫌いとか、窒素が多すぎとか。贅沢は言わないで。おばちゃん、もう全員の都合は考えきれないから。

ウチんちのムスカリはみんな葉っぱが細ネギみたいに長いのよ。
スパゲッティみたいに地面を這ってる。なぜかは知らない。

表に植えたムスカリも裏に植えたムスカリも、買ってきて植えたらみんな葉っぱがネギになるのよ。花は咲くわよ、ちゃ~んとムスカリ。これはやっぱり肥料の成果かしらん。何かが多すぎるのね。

3か月先の縦・横・高さ・奥行き・時間・日当たり・温度・風を考えながら、今3月の枯れ枝の散らばる荒野みたいな地面に苗を植えるのよねぇ。異常に雨が降る8月とかさ。カンカン照りつづきとかさ。
当たるも八卦、当たらぬも八卦。とりあえず植えてみるしかないじゃない!


引っ越してきた時はお隣の別荘は草ぼうぼう!
ススキやカヤや不気味な黒いサルビアが茂り放題で怖かった。蚊がひどいし。うちの庭をせっせと草とりをしていたら地つづきだからお隣まで行てっちゃったのよ。しょうがないじゃない地続きだから。

ススキも抜いて一年め花壇が更地になって、さんさんと陽を浴びたのね。
2年目にお隣さんがは~るか昔に気まぐれで植えたらしいチューリップの葉が一枚だけ出てきた。3株。

おばちゃんは、あら~と思ったのね。それで手が滑って肥料も捲いてしまった。
次の年3年目に葉っぱが2枚になった。ほっとくと雑草だらけになるから、せっせと草取りをするの。また手が滑って肥料をまいてしまった。

4年目に葉っぱが3枚になったら花が咲いたのよ。ぽっかり。まあ、かわいらしいわ。
そして今年、びっくりしたわ。お隣さんは結構数を植えてたのね。今年は7株も葉っぱが出てきた。何把咲くか楽しみ。

ちゃ~んとお隣さんには話してあるわよ。
地続きなんで草取りをしてたら気が付かないうちにお宅の草も抜いてしまいました。って。そしたらあら、すいませんってゼリーの詰め合わせをもらいました。年に1回か2回くらいしかおいでにならないのでどうしても手が回らないのね。うちとどうしても地つづきだからついでってことがあるしね。

お隣りのチューリップ

たまに、手が滑ってエリゲロンの苗が飛んでったり、トレニアやアノマテカの種が飛んでったりするだけよ。

アジュガはうちの境目に植えただけよ。お隣まで這って行ったのは植物だからしょうがないわ。お花が薄紫でとてもかわいいの。ススキよりましじゃない?


日本のイチゴは獰猛である

イチゴが獰猛だなんて知らなかった。日本のイチゴは芸術域に達していて、アメリカ人に一粒食べさせれば感涙するに違いない。今までアメリカ人が食べていたイチゴとは何なのか、野菜か?アメリカのイチゴの中心は真っ白で固く酸っぱい。

ナイフでくりぬいて切りとるのだが、便利な芯ぬきが売っている写真のイチゴの白いところは芯、左のクラックは空洞。穴がもっと大きく空いていたり白い繊維が固い。

日本帰国の時に、これは日本で売っていないからと、イチゴの芯抜きを買ってきて親族に進呈し、親族も驚いて、目の前でちょうど旬だったとちおとめの芯を抜こうとした。とちおとめ 潰れましたわ。
そもそも、日本のイチゴの芯は大きくもないし抜く必要もない。それほど実はジューシーで甘くてかおりがある。

だが、芸術的なイチゴは高い!芯を抜いて、ざく切りにして丼に入れてヨーグルトをぶっかけて夕ご飯替わりに食べるような食べ方はできない。エイ!と目をつぶって8粒599円のとちおとめを買い、大事に大事に味わう。
もっと食べたい!

それで2株苗を買って、ポットに植えてみた。
1年目、数粒実を付ける、野生動物に半分やられる。残りをありがたく頂戴する。イチゴはポットで年越しした。

2年目、ポットからやたら子株が伸びる。伸びた子株が地面で根付く。イチゴ蔓 石垣のヘデラと戦う。ヘデラ戸惑う。イチゴ蔦ヘデラを乗り越え、地面があれば軟着陸、根付く。
初夏、数粒実をつける。野生動物に半分やられる。残りをありがたく頂戴する。

3年目、ダンナがイチゴ棚を作る、石垣に居ついたイチゴが、イチゴ棚に伸びて居つく。イチゴ棚が2段になる。イチゴ蔓、石垣のそこら中を這い、隙あらば根付こうとする。ヘデラとイチゴ蔓絡み合って分からんようになる。

食欲が勝ってヘデラを始末する。イチゴますますたけり狂う。イチゴ棚4つになる。イチゴ棚からパラシュートのように地面に降りて地面がイチゴ小株だらけになる。イチゴ実をつけたかもしれないが、食べてない。イチゴ ついにジャングルになる。今年 ジャングルを始末し

石垣と棚4つに収まるだけにする。結論 日本のイチゴは超美味だが獰猛である。

とりあえず植えてみようエリゲロン

おばちゃんのポリシーは「とりあえず植えてみよう」

オンラインの多年草・宿根草カタログで「スパニッシュ・デイジー」を見た瞬間欲しいと思ってしまった。苗は安くなく送料が痛かったけど、3株頼んだ。

届いた苗は随分根が回っていて、初心者のおばちゃんは根のほぐし方も植え方もどこに植えるかもよく分かっていなかったから、梅の根元に適当に穴を掘って埋めて、水をジャージャーかけた。一輪二輪花は咲いたけれど、オンラインの写真のようにピンクと白の小花の競典とはならなかった。なんだか、しょぼしょぼしたまま枯れた。高かったのに!その後スパニッシュ・デイジーはエリゲロン(源平小菊)と呼ばれていることを知った。
ピンクと白の2色が同じ茎から咲くのできっと源平なのだろう。なかなか優雅な名前である。

次の春、散歩から帰る途中の道にどう見ても「エリゲロン」らしい草が生えている。
花はまだ咲いていなかったけど、ひと夏中見た葉っぱはまぎれなくエリゲロンだった。別荘地の粗い砂利道にエリゲロンが野生で生えている?狐につままれているようで、それでも3把抜いてリベンジに梅の根元に植えてみた。

同じ土壌と気候で育った野育ちは瞬く間に育ち、花を咲かせた。真正のエリゲロンだった。花は咲いたばかりでは白で時間がたつとピンクになり、次次に咲いてくるので、株は白とピンクの花盛りになる。咲いている最中にこぼれ種は飛んで次々に領土を増やしていった。

秋口になっても勢いは衰えず、細い花茎が伸びると、地面に付いて子株ができた。エリゲロンは雑草並みに丈夫で、若干紅葉しつつ山の冬も苦も無く越した。

次の年の春は狂乱だった。
石垣のすき間というすき間から、砂利道の間からエリゲロンが生えてきた。
おばちゃんは嬉しかった。ウチの庭が花でいっぱいになる。エリゲロンはさらに順調に増え、秋には花でいっぱいというよりは、
何やらそこら中、モソモソと茂みが生い茂っているという感じになってきた。優雅で小粋であるはずの理想とはちょっと違う現実?おばちゃんはどうしていいか分からない。せっかく植えて立派に育ったお花をどうしたらいいか。

最初が3把植えただけで今年はすでにジャングル。来年はスーパージャングル間違いなし!それで一部残してエイやッと刈ることにした。

結果は、次の春もしっかりエリゲロンは生えてきて、それなりの美を誇ったのであった。結論、エリゲロンは間引いても大事ない

移住4年目
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