税務調査 Audit

アメリカでスモールビジネスを立ち上げたら、10年以内に大抵税務調査が入ると言われていた。
幸いおばちゃんが選んだ会計士はIRSを退職した優秀な会計士だったので一度も調査に入られたことがなかった。

起業して5年以上生き延びられる企業は25%という統計があったから、たとえ監査が入っても入る程長く経営できるのはそれなりに誇るべきことかもしれない。

知り合いのご夫婦はレストランを経営していたが、調査に入られた。
この店には3か月に1度くらい、ローカルのTaxOfficeからシステム異常で督促状が届くのだそうだ。

ローカルのTaxOfficeもシステム異常は把握していて”督促状は無視していいよ”、と言っていたにも関わらず、(州のOfficeは異常を直す努力はしなかったようだ)夫婦して律儀に、売り上げとTaxReturnのコピーを持参して件のローカルオフィスに説明に行っていたのだという。

おばちゃんは、へぇ?督促状が届くたびに行くの?
そう。
どのくらいの間?
15年間。
えぇ! だって督促状は無視していいって言われていたのでしょう?
そう、でも心配だから届くたびにオフィスまで行っていた。

この律儀な夫婦に税務調査が入った。どう考えてもIRS側がなにか怪しんで調査に入ったとは思えず誰かが密告したのだとかしか考えられない。
アメリカの日系社会は狭くて人間関係が繋がっているから、誰かに恨みを持たれて無いこと無いことIRSにリポートされる場合がない訳ではない。

もしかしてこの人があそこの会社の内部情報をIRSにリポートした本人ではないか、との疑惑を持たれている人の名前も聞いたことがある。

なぜかというと、疑惑の人が務める会社に調査が入り、かの人が辞めて次の会社に移るとやはり調査が入った。不思議なことに、2つの会社の調査の時期に彼女自身は夏休みだとかで日本に滞在中であったのだという。

おばちゃんの知り合いのご夫婦のレストランにかの疑惑の人が勤めていたと記憶はないが、とにかく調査が入ったのであった。

IRSから通知が届く。小売業なので調査のオフィサーがやってきて1週間キャッシャーの背後に立って売り上げを監視したという。

お女将さんは内心大いに修羅場だったと思うが、そこは客商売でよくできた人だったから、調査官の飲み物などに気を配り、調査官も調査後半にはこんなことは不愉快だろうがちょっと我慢してね。と形だけ監視の体制になったという。

調査の1週間の売り上げとそれ以前2年間の売り上げを比較しても何らの異常が無く調査は終了した。IRSが紳士的であった例は極めてまれだと思う。

えげつない調査の話も聞いたことがある。会計監査をする権利はどうかすると営業するショッピングモールのリース契約に盛り込まれている場合がある。テナントのレントだけでなく売り上げのコミッションなどがついている契約がある。
人の往来がある人気のショッピングモールは売手市場である。OC地元だった某大手不動産は市のほとんどのショッピングモールを所有し、横柄横暴で有名だった。

そこに中華スーパーがオープンし当時人口の20%以上がアジア系であったので、スーパーは当たった。そこでモールのオーナーの不動産屋が売り上げが少ないと調査に踏み込んできた。

スーパーのキャッシャーを全部開けさせ集計した。この時の屈辱と恨みで中華スーパーは市内に独自で土地を取得し中華ショッピングモールをオープンした。現在、この市はさらにアジア系人口が増え、おばちゃんが帰国を決めた時で33%で市長がベトナム系になっていた。

白人系は家を売って南のアジア系の少ない土地に逃げ始めた。
土地を持って逃げることができない某大手不動産屋は人口比が変わっても営業を続けるしかないが、キャッシュを持っているのは中華系で、中華系のテナント入居希望を排除をしていてはテナントに穴が開く、ほ~ほっほっ、。。

中華 対 サメ の戦いに
おばちゃんは高みの見物だと思うのである。

アメリカで起業する

アメリカの移民はスモール・ビジネスが多い。
なんでか?
アメリカの企業が雇ってくれないからだ。英語に訛りがあって、米国の大学卒でもなく、正体も分からないからだ。だから、移住者は自分でビジネスを始める。
屋根屋、洗濯や、大工、電気屋、レストラン、ヘアサロン、不動産屋、会計士、弁護士。

客から考えた場合、
同じ日系人のビジネスなら騙されないという安心感がある。いい加減なことをすれば、狭い日系コミュニティですぐ噂が広がるし、多少高めでも行くのである。アメリカでスモールビジネスを起業すると、同胞は客として見込めるのだ。

永住権を取得していて技術があって資金があるなら、アメリカで起業をすることはさほど難しくない。一番簡単なのは、すでに稼働しているビジネスを買い取ることだ。

ショッピングモールを観察して洗濯屋でも、これ!といったビジネスが欲しければフラワーショップでもギフトショップでも、不動産屋が売買を仲介しいてくれる。

自分の手持ちの資金でビジネスの規模が決まる。
10万ドル、20万ドルの規模なら小売店のパパママで経営するビジネスの経営権が買えるだろう。
流れを書いてみるなら
まず、自分の資金で手が届くビジネスを見つけたとする。不動産エージェントに連絡し、相手オーナーに買いのオッファーを出す。相手からカウンターオッファーが返ってくる場合もある。
買い手売り手双方が金額に同意したとして、次のテージはモールの審査だ。

モールの管理会社が新テナント候補の審査をする。むろん審査を落とす場合もある。資金・資産不足、経験不足など。
インタビューの予約を取り、(審査予約で申請料を取るモールも多い)自分が経営することになるビジネスモデルを作成してインタビューでプレゼンテーションをする。

事務能力・スピーチ能力に自信のない人は会計事務所とか弁護士に代行を頼むこともできる。小売り・サービス業を開業しようという人間が事務能力とプレゼンテーションの能力がないとは、はなはだビジネスの将来が頼りないのであるが。

審査には資産状況、学歴、職歴の開示が必要なのは言うまでもない。アメリカでの逮捕歴や交通違反でもDUIなどの違反が出てきてしまうと、ビジネス・ライセンスが下りない場合がある。

モール側の審査が通れば不動産売買の仲介会社Escrow会社が間に立ち、売り手と買い手の双方に売買のアサイメントを指示してくる。

買い手はエスクローが支持してきた手続き:会社の設立、営業名称の登録、ビジネスライセンスの取得、銀行口座の開設などをこなしていく。

連邦は州のライセンスを取るのにさらに面接があったりするわけだが、必要フォームに記入して提出するだけのライセンスもあるし、辛抱強くこなしていけばライセンスは取れる。時間が多少かかるライセンスもある。

営業に必要なライセンスがすべて取れたら、次は実際営業をするテナント内部のリモデルの計画を遂行する。業者に必要な見積もりを出し業者の選定をし、営業開始日からさかのぼって施工の予約をる。

言語能力?そんなものはできるのが当たり前のこと。

言語能力だけあって実務能力がなくてもこれまた困るのだが。日本で生活している中国人、ベトナム人イラン人、が何ができて何ができないか?
他国で生きていくために何が第一に必要か彼らを見れば答えがわかると思う。

タックス・リターン

トオル君はその時まだ未成年で学生だったから、TaxReturn/税申告はお父さんとジョイントだったと思う。
バイトのペイロールからごっそりひかれていた税金が戻ってきたと喜んでいた。次の年、アニメ関係であぶく銭を稼いだけど、お父さんに扶養家族になれと言われて、またタックス・リターンでちびっと税金が戻ってきた。

”夏には日本のコミケ行くんすから。航空チケット代を稼がないと。”
アニメグッズでおいしい思いをしたので、2世仲間と会社を作って日本のアニメグッズを輸入して売ろうという夢を見始めた。

トオル「おばちゃん、会社を作るにはどうしたらいいんですか?」
おば「個人会社だと簡単だねぇ。Retail License を取って、ビジネスネームを登録する。銀行口座はそれでできるから
物を売るの? 
「ふ~ん」
おば「それから、タックス・リターンはセールの額で違うからね。」
トオル「タックス・リターン?」
怪訝な顔のトオル君を見て、おばちゃんぴ~んと来た。

おば「あんた、所得税のIncome Tax申告だと思ってるだろう?」
トオル「4月にガバメントから帰ってくるやつでしょ?」

おばちゃんはチッチッチッと顔の前で人差し指を振り
「Wroooong! あんたは2つの勘違いをしてる。第一にIncomeタックスではなくて、Salesタックス/消費税よ。小売業だと消費税が発生するから。

毎月か3か月に一回タックス・リターン。第二にタックスを返してくるのがガバメントだと思ってるでしょう?

間違い!
消費税はもともとガバメントの物なの
それをガバメントの代わりに小売業が消費者から徴収して、ガバメントに返すReturnするのがタックス・リターンとアンクル・サム(古いな)は考えている。
自分の物だと思ってるから、消費税を申告しない奴、返さない奴はどこまでも追っかけてくるよ」

トオル君、ワンコがスカンクの屁を嗅いだように憮然としていた。おおかた、片耳で聞いたいろんな控除を使えば税金なんかへいちゃらと考えていたに違いない。Wrooong!

文化のはざま

あなたは異文化をどこまで許容できるだろうか?或いは、自分の文化をどこまで守って、どこから先は移住国に合わせられるだろうか?

リセッションでガラガラになったショッピング・モールに入ってきたビジネスはいくつかあった。モールの管理会社にとっては、金を持ってさえいれば猿でもカバでもよかったのかもしれない。

新しくネイル・サロンが入った。ベトナム人経営のビジネスで、雇われている女の子は最低限の英語しか話せない。しかし、指先が器用で料金が一番安いので、ベトナムのネイル・サロンは割と人気なのだ。
客はほとんど白人だった。オーナーはおっさんで、店にいたことがないのでモールの誰もがほとんど知らなかった。

ここからは、ジャネットの情報だが、おっさんは一言も英語が分からないのだという。YesもNoも言えないのだという。

管理会社のローランドとフレッドがノーティスをだしたり、電話を掛けたりしてもおっさんは英語が分からないので、一切通じなくて困っていた。

唯一英語がわかるのは、おっさんのハイスクールに行っている娘だけ。ええ歳をしたローランドとフレッドが娘を捕まえようとするのだが昼間学校に行っているので、大変らしい、と。

ベトナム人が馬酔木を縁起の悪い木として嫌がってモールの馬酔木を枯らしてしまったことがあったが、おばちゃんはベトナム文化にいちゃもんつける気はなかったし、それはネイル・サロンの美観の問題であったのでスルーしていた。

ところが、困ったことが出てきた。
ある日おばちゃんが裏口をあけてリサイクル缶に空瓶を捨てた時、ベトナムの女の子たちが何かを地面に撒いているのを見てしまった。これが初めてではなく、何度か同じ光景を見た記憶があるが調べなかったのだ。

この時は、いったい何を撒いているのだろうとおばちゃんは見に行ってみた。むろん、女の子たちが全員引っ込んだ後で。

米だった。
おばちゃん、深田祐介も、近藤紘一も大好きだったから何をしていたかわかってしまった。彼女たちは野生の雀に餌をやっていたのだね。ベトナムなら放生すべきところ、放つ生き物もいなかったからせめて養うため/生かすために米を撒いていたのだと思う。

これは困る。
たぶん先進国ではみんな衛生基準に引っ掛かる。米はRodentsを呼び寄せるのだ。平たく言うとネズミ。ネズミが居つくとビジネスが困る。保健所がでてくる。おばちゃんは管理会社のフレッドも大嫌いだったけど、これはビジネスの存続に関係するので報告するしかなかった。

彼らにとっては生き物がスズメだろうが、ネズミだろうが、ゴキブリだろうが一視同仁。生きし衆生を慈しむのは仏教を生きることだったと思う。ベトナムならOKなんだろうけどね。

アメリカは自由の国だ。
それぞれの宗教信条は尊敬を払われるべきだったけど、この場合は衛生基準にさわらない方法にしないと。動物園とか、保護施設とかに金銭を寄付するとかね?

オンライン・ショッピング

携帯自体も出始めでIphoneどころか、BlackberryやNokiaがぽつぽつと使われ始めたころ社会はまだ携帯文化に慣れていなかった。他人と一緒の時に携帯電話をいじるのは、人を無視した無礼なマナーという合意があったような時代。

人は一人でやってきてアメリカ人がでっかい指先でBlackberryをポチポチさわる。よそから電話を受けて他人に耳障りな会話を平気でする。おばちゃん、そういう客が目障りでどうしたもんかなぁと悩んでいた。繰り返すが携帯電が珍しかった時代。

おばちゃんは勤務時間が長く碌に買い物に行けなかったから、オンラインショップを多用するようになっていた。EbayでInstantBuyかアマゾン。どうしてもアメリカにないものは日本で買って転送で送らせていた。

携帯電話の迷惑を何か防げるグッズがないか、検索していたおばちゃんは見つけてしまったのですね。
邪魔ー。携帯電話の電波を邪魔ー。

おばちゃんはふと黒い心がムクムクもたげ色々調べてしまった。当時携帯の電波の状況は安定していなくて、しょっちゅうつながらないとかトラブルがあるようだった。

もし、ウチでつながらなくてもそれはよくある話よね?その会社はイスラエルにあり、邪魔―の他にも怪しげなグッズがいろいろあった。

ただ、アメリカ国土で邪魔ーは許されていない。もし、所持していたら連邦犯罪になるのかも。

邪魔―がOKなのはオーストラリアと日本だった。おばちゃんは会社にメールをして、日本に送れる?と聞いたらば、日本は禁止国じゃないから大丈夫よ。と返事が来た。

そうか、理論上イスラエルで物を買い、日本の転送住所に送って、転送からアメリカに来るよね。おばちゃんは無害のコンピューターパーツを買ってみたら日本経由で普通に届いた。むろんイケナイものは何も買っていない。

ある時はラップトップの調子がおかしいので、予備のハードディスクを買っておこうかと、近場で一つポチる。セラーから送ったよ~、通関があるから、。とメールが来てえっ?通関?何故?同じ州内で、どうして通関?

ハード・ディスクは3日も4日も届かず、1週間以上も経ってからやっと届いた。カナダから。EbayのアイテムのロケーションはCAだった。CAはCaliforniaだろう普通?!カナダの会社ならCANADAって書けよ。

ある時はEbayでエスニック風のパンツ(タイ産)が気に入って、ただ値段がGBPと書いてあったので、Sellerに問い合わせたらブリティッシュ・ポンドだという。アイテムのロケーションはオーストラリアである。変だなぁと思いながらも欲しかったので買ったらなんとドイツから届いた。
ネットには魑魅魍魎が巣食っている。

生き延びる

アッコちゃんが窓の外を見ながら、ぽつんと言った。
「ああ、あのアスファルトを均している人だって、資格や技能を持ってて仕事をしてるんだよね」

外の駐車場はアスファルトの敷直し最中でローラー車両に乗ったメキシカンが熱いアスファルトを均しているのだった。駐車場が半分使用不可能なので、客は来ず暇だった。

おばちゃんは、アッコちゃんが言うことが痛いほどわかった。好きな国で生きていくためには、何か技能がいるのである。

好きな仕事か、やりがいがあるのとか、そうでないのとか、、そんなこと以前に、ちゃんと雇われてお金がもらえる仕事が必要なのである。雇ってもらえる技能、仕事がもらえる技能。安定して暮らしていける仕事。

アッコちゃんは多磨美の卒業だったから、フォトショップもイラストレーターも扱えるのである。デザイン関係ならどうなのよ。と何時か聞いたことがある。
「私くらいの才能はその辺にいくらでもいるんです」

アッコちゃんはその後ウチをやめ、サポートしてくれる会社を見つけて、グリーンカードを取った。アメリカのビジネスの新陳代謝はとても早い。時流に遅れてた会社、時流を見ていない会社は消え新しいビジネスは生まれるが、いつまで持つか誰も知らない。

親方日の丸にすり寄っても、本家の長い不況のために営業所を縮小したり、いつ完全撤収してもおかしくない。ヤマハも人を減らし、リコーは突然アトランタに移転をした。家を売ってついてこれない従業員は首。

そしてまさか、世界のトヨタがテキサスにヘッドクオーターを移転するなどとカリフォルニアの従業員は誰も想像もつかなかった。日系社会は動転した。家を売ってテキサスに引っ越すか、やめるか。外地の将来はいつも真っ暗。先は読めない。

グリーンカードは取れたけど、アッコちゃんは結局接客業を選んだ。
人が好きなのだ。コロナのパンデミックの中、死んだほうがまし!くらいの苦境に立たされたことは想像できる。できれば逞しく生き延びていて欲しいと思う。

税金は滞納するな

税金は滞納しないほうがいい、
何故なら後でしっぺ返しを食らうからだ。これはウチのベストのお客さんだったボブと孫ヒューイの話である。

ボブはニューヨークの生まれだった。離婚した後カリフォルニアに移って、AT&Tを長く勤めてリタイアした。いい歳だったんだろうけど、肌はしわもなく頬はピンクで元金髪だった白髪がふさふさしていた。一人暮らだが、娘が近くに住んでいたのでカレッジを卒業した孫ヒューイがよく一緒に来た。

ボブはいつもヒューイに説教していた。カレッジを卒業しただけで、大学に行かないことを嘆いていた。
若くて怖いもの知らずのヒューイはまだ25で、ボブの言うことをてんで相手にしていなかった。

美人のガールフレンドはいるし、高級取りだったから。ガテン系の仕事なのだが、高所作業する職だそうで大学出の資格でもなかなか稼げない金を稼いでいたのだ。

しかし稼いだ金は遊びに使ってしまい、納税時期になると所得税も州税も払えなくて未納金に利子が付き、督促に追われていた、ボブにも泣きついていたようだった。

そんな時にメキシコ湾原油流出事故が起こった。ヒューイは税金未納のトラブルをほっておいて(税金を払えば済むはなしなのだが)テキサス州メキシコ湾に逃げた。
とりあえずカリフォルニア州にいなければ、未納金も追っかけてこないと思ったのだろう。多分、普通はあまり追っかけてこないと思う。

流出した石油の処理にメキシコ湾にはリグが建てられ、高所作業できる技術者が高い給料で募集されていたのだ。ヒューイとしては、テキサスでうんと稼いでカリフォルニアの税金を払えばいいと思っていたのだと思う。

ところが、カリフォルニア州はヒューイの上手をいった。ヒューイの給料が全額抑えられたのだ。裁判も経ずにいきなり給与を抑えられるはずないのだが?

実はテキサス州がヒューイに払うはずの給料は、カリフォルニア州から債券をテキサスが借りて支払うことになっていたのだ。

カリフォルニア州はテキサスの事故処理ペイロールにヒューイを発見して、さぞかし喜んだろう。
ヒューイ君、愕然。あてにしていた収入が全く入らず、文無しでカリフォルニアにシオシオ戻ってきた。

ボブのおじいちゃんは、激怒である。だから、言ったろ。税金問題を片づけておけって。弁護士費用なら出してやるって言ったろ?ばーかたれ。

ヒューイはストレスのあまりドカ食いしたのか、見分けがつかないほど真ん丸なデブになっていた。
教訓 税金の滞納はやめよう

アーノルド

モールの前の管理会社のマネージャーはアーノルドと言った。汚らしい歯をした痩せたジジイで、スクルージはこいつがモデルだったのだと思う。

土曜日・日曜日になるとモールの裏を後手にひょこひょこ歩いていた。ジャネットによると土日はよくモールを見張りに来るという。ビジネスの中にはめったに入ってこない。

おばちゃんがビジネスを買うときに、モールの面接をしたのがこのアーノルドだった。
おばちゃんは面接用に作ったビジネスモデルのコピーを一部アーノルドに渡し、経営ポイントの3つの数字を説明していったが、アーノルドはろくに数字を見もせず興味が無さそうに傍らにうっちゃった。

面接をするだけでこちらは$200ドル支払っているのに。

面接の結果は2週間から3週間で知らせるから。とアーノルドとの会見は終わった。経済は好調でビジネス売買も盛んだったが、モール側のマネージャーがNoと言えば、売り手と買い手が売買に合意していてもテナントの売買は成立しない。

2週間たってもアーノルドからは連絡がなく、不動産エージェントにもコンタクトがない。向こうがもったいをつけているのは分かっていたが、売買を進めるにはこちらから連絡するしかなかった。

売り手も私もエージェントも3人そろってたまたま女で、売り手のオーナーがアーノルドに電話を掛けた。
「ヘイ、アーノルド。面接の結果はどうなの。私?私はテナントのミカコ(仮名)よ。3年間商売してるじゃない。忘れたの?」
するとアーノルドは新しい看板のイメージを今度はオフィスにもってこいと言うのだった。

管理会社のオフィスはすぐ近くだったのでアポを取って訪れると、くすんだオフイスの外には真っ赤なイタリア車が止まっていた。オフィスに一歩入ると、秘書とアシスタントがいるのにシンとして物音一つしない。

アーノルドとアポがあるのだがというと、秘書は怯えた目をしアシスタントはごくっと息をのんで、ボスは今グッドムードじゃないから。と奥を指さした。

アーノルドは一番奥のデスクにひっくり返り、なんとデスクに足を乗せていた。デスクの正面に来客用のいすがあるので、おばちゃんは椅子の背を引き寄せ座ろうとした。

するとジジイは「座るな!」と言ったのである。
来いと言ったのはアーノルドだ。私は聞き間違えたのかと思ってもう一度椅子に座ろうとしたら、ホームレスを追い払うかのように、座るな、看板のイメージを置いて出てけ。とシッと手で追い払われたのだった。

おばちゃんは憤然として出口に向かったが、秘書は知らんぷりアシスタントは下を向いたまま「アーノルドに逆らっちゃダメなんだよ」とささやいた。

この時の秘書はマリアとか言ったが、売買エスクローが開始した後に辞め、以後オフィスに電話を掛けるたびに違う名前の秘書が答えるのだった

アーノルドがさんざんもったいをつけてOkを出したときにはすでに7月に入っており、面接から2か月半たっていた。エスクローはオープンして、おばちゃんは会社の設立などで忙しかったが、突然アーノルドから電話がきて、テナントの補償金を上げると通告された。

理由としては、おばちゃんたちにビジネス経験がないことだと。エージェントだってエスクローがすでにオープンした後に、補償金を吊り上げるなんて、聞いたことない、と言う。

エスクローは売買金額で合意があり頭金もすでに支払われているから、ここで売買をキャンセルしても、おばちゃんの頭金は戻ってこない。絶対逃げられなくなってから、補償金を吊り上げてきたのは汚いやり方だった。

むろん、エスクロー会社だってそんな追加条件は聞かされていない。エスクロー書類は全部作成し直しになる。

アーノルドはEmailに答えないので、ファックスで秘書と何度もやり取りして追加の支払金額と支払方法を確認して、小切手で支払った。

その時までおばちゃんはパン屋のクリスがアーノルドにどれだけ嫌がらせをされたか、全く知らなかったのだった。

エスクローがクローズするまで、売り手のミカコとエージェントのタカコ(仮名)とおばちゃんの3人女はあれこれと連絡を取り合うことになる。

お客様は神様じゃない

ある朝、いつものようにコーヒーを買いに隣のパン屋に寄って、ジャネットがマグにディカフェを入れてくれる間に
ぼ~っと正面の壁を見ていると、メニュー表の上にプレートが貼ってあった。
We reserve the right to refuse service to anyone

なんだか穏やかでないから、ジャネットにあれは何?と聞いたら「ああ、Right to refuseね。あまりひどいお客さんは
うちにはいないけど、念のため」ふう~ん。

おばちゃんは自分のユニットに帰って、さっそく調べた。アメリカのサービス業の普通のポリシー宣言だ。うちは誰であってもお客にサービスしない権利があります。キリッ!

日本の小売業は「お客様は神様です」だ。これはキモチわるい。誰がそんなことを言い出したか、昭和生まれのおばちゃんは実は覚えている。

演歌歌手の三波春夫が広く広めた。ファンサービスの言葉だったんだよ。
彼がファンに媚びるのは勝手だが、このフレーズが日本でどんどん独り歩きして、日本の小売業・サービス業にまで広がってしまった。

お客というものは媚びて持ち上げてヒザまずくとどんどん冗長するものだ。結果、日本の小売業・サービス業は客にへりくだって、客自身は神様のように思い上がり、サイトに星をつけずに罵詈雑言を書いたり、するとサービス側は委縮してさらに這いつくばり風評を異常に気にして客を腫れ物に触るように仕える。

おばちゃんは、ばかげた風潮だと思う。
お客は神様ではない。お客と店は対等だ。そもそもお客と店は物品やサービスを介して相対するものであってどちらが神様か奴隷かという関係ではない。

アメリカでもウオールマートのおっさんがが「Customers are always right」というフレーズを大々的にぶっ放したが、
(オリジナルの発言者ではない、三波春夫と一緒)アメリカ社会では必ずしも賛成されていない。

理性的な判断だと思う。
日本のようにいったん大勢が決してしまうと流れに流される社会とは異なり、アメリカ社会というのは極端な意見はチェック補正能力が働くようである。

さて、とんでもないことを言い出す白人のお客やこれまたC国人などと日々戦っていたおばちゃんはこの
Right to refuseがスト~ンと胸に落ちた。力強い味方

おばちゃんはさっそくサイン屋にプレートを注文して、カウンターのよく見える壁に掲げた。このプレートはサービス業の護符だ。プライドだ。十数年の営業期間のうち、おばちゃんは何回かプレートを指さしてモンスターが退店した。

日本に帰ってきて小売業がお客様は神様です!と言っている割には客に便利がいいことはあんまりしようとしないことに
これまたおばちゃんは頭をひねった!

だって、醤油ラーメンと塩ラーメンが同じ値段でソフトクリームとセットなのは醤油だけなんだよ。おばちゃんは塩ラーメンとソフトクリームのセットがいいからセットを塩に変えて?と頼んだら、ウチは醤油だけがセットにしてるんです、だって。
醤油も塩も作る手間も値段も一緒よ?チェーン店なのにバカじゃないかしら?

ーーーここでちょっと閑話休題
おばちゃんは、融通の利かなさの原因をある程度推測できる。
① メニューを書き換えるのが嫌。
② レジに打ち込めないから困る。
スモールビジネスではレジに大規模ポスシステムをなかなか入れられないんだね。費用がかさむから。
あるいは一番単純なポスシステムを買う。ポスの設定は最初の一回業者がしてくれて、あとの変更は現場では
わかんないやつしかいない。

そうでなければ単品のレジを買って紙の伝票で処理するんだ。こういう小売店は頭が悪くてレジのLookUpTableをきっちり作り上げる人がいないのよ。

LookUpTableというのは、レジ機器の内部に物品のリストと値段を表にし記録させておくのよ。だいたい2000品ぐらい余裕で設定できるのよ。

だからフードコートのレジはキーの101をたたくと、醤油セット890円とレシートが出るのだね。塩セットを102に追加すれば解決じゃない。

物品の名前や金額を変えようと思ったらレジの数字ボタンをたたいて、気が狂いそうになりながら1字1字名前を編集し金額を変えたりする。そんな面倒くさいことはやりたくないって?バカみたい。

コンピューターと接続して、LPテーブルを編集すりゃいいのよ。たいていのレジはコンピューターとつながるから。紙のメニューは1回印刷屋で書き直すと3万はかかる。プラスティックのメニューならもっと。

でも、そういう客の好みとオーダーの幅を理解してレジに客の好みを追加していけば、客にも喜ばしく、売り上げも上がるのに、な~んにもできない無能の経営者が言葉だけはお客様は神様という。客がわがままだという。
それは違うよ。とおばちゃんは言う。

マーケティングは小売業の基本だ。客の好みが売り上げに直結する以上、
客の好みを把握してより広い顧客を獲得する。そのためにオプションとチョイスを選べるようにする。レジの編集ができなくて、なにが経営か?レジの売り上げ記録というのは思いがけない発見があるものだ。

レジとメニューくらいなんとかせい。そうすればセットものの追加なんて、自由自在にできるようになる。店も売り上げアップでWin客も好きなものが買えてWin
ーーーーーーーーーーー閑話おしまい

お客様は神様です、と言いながら客の便宜はあんまり払わないのが日本の小売業、サービス業だ。

AliExpressのほうが日本の小売業より融通が利くよ。いったん開封したら返品不可なんて、日本のルールは
おかしすぎる。XXXXオーヤマさんとか。返品されたらロスになるって?そんなこたぁない。

返品絶対不可だとお客さんは怒っちゃって戻ってこない。だから返品は初期不良と一緒にFactory Refurbish
(自社工場で点検修理で完成品としてまた出荷する)として安く売りゃいいのよ。

あのダイソンでさえやっている。購入客は返品できてWinFactory Refurbishで安く買える客がいてWin
売り手もロスがでなくてWin

とにかく日本の商業:小売り、サービス業というのは変な歪みがある。過度にへりくだったりイケ高だったり。
おばちゃんは力強く言いたい。お客とお店は対等よ

Costco コスコ

おばちゃんが渡米したときはPrice Club(プライス・クラブ)と言っていた。従業員がローラースケートで巨大な店舗の中を走っていた。ウソやおまへん!

ホントにびっくりして、こんな巨大な倉庫をてくてく歩くのはスケートじゃないと間に合わないよね、
おばちゃんだってローラースケートが欲しいと思った。滑れなかったけど。

プライス・クラブはその後合併してCostco (発音はコスコ tは無性音) となった。事故が多いので従業員はローラー・スケートから自転車になった。
(これはウソです)

普通のブランド製品が大量に安く売っているので消耗品を買いに行くのだけど、カートに山盛りでまさに買い出しだった。
一番丈夫なキッチンペーパーのBauntyとScottのトイレットロールでカートの半分は埋まり、アローヘッドの2ダースの飲料水と2ケースのバドワイザーを買うと軽かった当時のおばちゃんにははカートが重すぎて押すのが大変だった。

肉とチーズとCrestの歯磨きやら積んで入口から出口のサプルメントまで延々と歩かないと買い物が済まないし、
週末のレジ待ちの行列は半端なく長い。Costcoに行くのは間違いなく買い出しで力仕事だった。

おじちゃんはCostcoのアボカドが一番品質がいいと言って買うのだが食品はポーションが大きすぎて、ウチはクロワッサンもブルーベリーマフィンも横目で見るだけ。せめて半ダースだったらいいのに。

ただ、ペストリーとスイーツ売り場に”タライ”サイズのFlanがあって、おばちゃんはプリンが好きなのでいっぺん食べてみたいと思っていてずっと目が離せなかった。

ある時すごく疲れていた時についにFlanを買った。アメリカのパーティサイズ。直径30センチを超えるくらい、高さは5センチ。日本のプリンよりもっと濃厚で甘くて金属のスプーンでも差して倒れないくらいの固さのフラン。

クリームドリュブレに近い濃厚さなので、おじちゃんと二人でスプーンを持ちよーいドンで巨大な容器のフランを両側から攻略した。

3日目くらいに胸やけがしてギブアップした。3分の1くらいしか食べられなかった。あれがもっと小さなサイズだったらもっと頻繁にCostcoに行ったのに。

返品文化

買った商品がDefect(欠陥品)や動作しなかったわけではなく気に入らなかったという理由でも購入後30日の間にレシートをもっていけば大抵はリファンドか商品を取り換えてくれる。

ホリデーシーズンの後はカスタマーサービスに長い長い行列ができる。送り主がギフト用のレシートを同封してくれるので購入店にもっていけば好きな商品に取り換えられるからだ。

おばちゃんはTargetで安い扇風機を買ったが羽がペナペナで力がなかったので返品しに行き、代わりに加湿器を買った。
加湿器をしばらく使い、水のタンクの掃除がしにくいのでまた返品に行ってヒーターに取り換えた。季節は寒くなっていたので。

アメリカ全体に返品OKの”返品文化”が行き渡っているので、例えば日本の会社のように、”売買は常にファイナル・セール、初期不良品以外は返品不可”などとポリシーを規定すれば、アメリカ人から総スカンを食らってビジネスが立ち行かないことは明らかだと思う。

日本製のテレビや電化製品だってアメリカ国内で販売されている限りどんどん返品できる。

知り合いはDVDを買って堪能するまで見た後、ケースにビニールを再包装して(彼は仕事で包装する機械を持っていた)見なかったことにして返品していた。

パーティ用のドレスを買ってプライス・タグを取らずに人から見えないように内側に押し込んで、パーティが終わったら帰しに行く人。

口紅を半分も使ったのに気に入らないから別の色に取り換える人。

アパレルの日本向けオンライン・ショップ立ち上げて、商品がもし売れなかったら購入したショップに返品しようという企画していた知り合いもいた。実現はしなかったけど。

実現しなかったのにはちゃんとした理由があって、商品の仕入れがTargetなら年間の?返品金額が1500ドルに達するとブラックリストに載り購入ができなくなるという裏情報があった。

その情報が正しいのか都市伝説なのかは確かめなかったけれど、返品を想定してオンライン・ショップはさすがにやりすぎだと思う。

返品文化の弊害は第一に小売業の利益を圧迫する。いかに返品率を下げるかというのはアメリカ企業の頭痛の種だと思う。
Pain in the assと言うやつ。
ただ、アメリカ人でもかつて経営者Harry Gordon SelfridgeがCustomer is always right.とか言っちゃったもんだから、今さらアメリカ人の返品文化を別の方向へ修正するのはものすごく困難だと思う。
日本では”お客様は神様”と言うやつ。

返品文化の弊害は消費者自体にも跳ね返ってくるわけで、90年代から2000年前後、売り場の商品で箱に開封したあとが有れば返品された商品で、大抵ねじなどの部品が一つ二つ足りなかったり、故障していたりしてた。

だから商品を選ぶときは開封の後があるかどうか確かめて、商品が売り場で最後に残った一つだった場合は買ってはいけない。大抵カスをつかむから。

日本に帰国して寒い日本の冬のために猫用のヒートパッドをオンラインで購入したら、電気ケーブルがいやに短く
ナナちゃんが匂いを嗅いだだけで近寄りもしてくれなくて使えなかったから、ア〇〇スオー〇マに返品したいと連絡したら、開封しました?と質問されそりゃ、開封しますよ。使えるかどうか開封しないと分かんないじゃないですか?
そうしたら、一度開封したら返品不可です。と切り口上で以降返事がなかった。

おばちゃんは開封はしたけど使用はしてないのよ。商品としては何も棄損していないのだけど。
日本人は開封すると商品が穢れるとでも恐れているのかしらね。
日本の小売店のお客様は神様じゃないわ。ほとんど返品ができないから。

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