闘病記さまざま

東洋オンライン記事
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みづきの末期直腸がん(大腸がん)からの復活の記録―――闘病ブログ 
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本人のプロフには2005年時点でカリフォルニア、シリコンバレーでご主人とIT企業を経営だったとある。自覚症状はあったが便秘や痔と思い医療機関に行くのが遅れた。無保険だったと書いてあるので、さもあるかなと思う。

ブログ主が宣告を受けた同じような頃、おじちゃんが勤めた会社が整理解散と決まった。加入していた健康保険を個人で掛けるといくらになるか保険ブローカーに見積もりしてもらったところ、1人$1200だった。非現実的な掛け金である。

3人以上のフルタイムがいる企業は健康保険に加入することができる、というのが法律上の建前だが、保険会社だって設立したてで利益が出ているか、企業の経歴などを審査にかけるので必ずしも加入できるとは限らない。
彼女たちの年齢が30代半ばなら保険料はまだ少なかったはずだが、会社側の保険料負担金を考えると、会社の利益が上がってきてから健康保険の加入をしようと考えていたとしても無理はない。

まず、無保険で診察してくれる医療機関を探すのは大変。
キャッシュプログラムがあるかどうか電話で聞くか、知り合いに紹介してもらうしかない。会社を立ち上げたばかりなら、予約を取ったら自分の代わりの人を手配して診察してもらう時間を作るのだ。症状が軽微なら診療の手配を考えるのも億劫。大したことがなければ大きな出費になるから。

アメリカで生きるということは親の庇護も会社の庇護もないということ。
頼れるものは自分と自分の配偶者だけ。どちらかに 「頭」「目」「足腰」に支障ができたらアメリカ生活が成り立たない、か、非常な困難になる。

車社会なので、電車なんかないし、バスは自分の行きたいところに走ってないし、自分で車を運転するから移動の自由があるのである。「頭」「目」「足腰」に異常がでたら移動の自由はない。

もしガンであったら。
生計のための仕事が不可能になって収入が減り、保険でカバーされない医療費の持ち出しがある。莫大な借金を抱えることになるかもしれない。だからガンになると自宅が一軒無くなるといわれている。

アメリカで生活する人生には常にブランB、プランCが必要なのである。
銀行口座の残高と自宅の今現在の評価額、解約できる生命保険の価値、その他金融資産と、負債の総額を常に念頭に置かねばならない。体に異常がでて就労ができなくなる、とどのようなプランBが必要か。常にシュミレーションをしておかなければならない。

一旦起業すると自分の生活だけではなく、従業員の生活も保障せねばならないのだ。
自分の体調が悪くて会社の営業ができなくても従業員の生活は保障せねばならない。2007年に甲状腺がんの疑いでバイオプシーをやった時もは、自己憐憫やショックに陥るのは贅沢であってそんな感情に割く時間もなかった。

自己憐憫、依頼心はアメリカで生きていくのには邪魔。
だから捨ててしまった。いったん捨ててしまうと拾って埃を払って又使うというわけにいかんものである。だからおばちゃんは今も可愛げがないのだ。“可愛げ、儚げ“の代わりにふてぶてしさと破れかぶれがある。

ちかごろ井上ひさしの「モッキンポット師」の一節をよく思い出す。
終戦後の貧しい日本で貧乏学生が必死で生きようとするだが、悪知恵が裏目に出る。面倒をみているカナダ人のカトリック神父である師が後始末をしなければならない羽目になる。

「助けてください。モッキンポット師。でないと僕らは死んでしまいます」と師に助けを求める。
モッキンポット師は不思議そうに「死んだら困りますか?」と問い返し、貧乏学生であった著者は絶句する。
カトリックの観念で「死」は「喪失・終末」ではない。

おばちゃんはカトリックではないが、「死んだら困りますか?」と正面切って問われたらどう答えるか。つい、商売をしていた現役に戻って、ええっと、私は今は引退したから、体の評価としては築6X年、査定額は0だな。社会的評価額も0に近いから、死んで困るのはおじちゃんだけか?

心持はどうかというと、これをやり遂げないと絶対困るというUnfinished businessesがもうない。面白そうなものがあったら挑戦するにやぶさかではない。できる間はやる。だが、やり終えなくてももう嘆く必要はないのじゃないか。おばちゃんのブログも書きたいと思う気持ちがある間は書き続けようと思う。

現在日本人の死因の1位はガン28%。
男性の3人のうち2人がガン、女性は2人に1人がガンで亡くなる。珍しい病気ではない。両親のどちらかがガン。あるいは家族にガン患者がいて不思議ではない。

ガンは宣告から時間はあるので、ある程度Unfinished businessesをやることができる。不慮の事故などで命を持っていかれるより始末のよい病気だと思うがどうだろう?

結局、ブログ主のみづきさんはアメリカ生活を切り上げて日本で闘病生活をおくられた。
保険をどうするか治療費をどうするかと考える必要がなくなってまずよかった。それでもブログのあちこちからはご本人の悲鳴が聞こえてくる。亡くなってから14年も読み継がれるのはそこに人間みづきさんがいるからだろう。自分がやったことは残らないかもしれないが、自分がいたということを彼女は書き残した。

いろいろなガンがあっていろいろなガン人生がある。みづきさんはおばちゃんの半分くらいの年齢だったのだから、まだアメリカでやりたかったこと、やり残したことがあったに違いない。謹んでご冥福を祈りたい。

mikie@izu について

海外在住何十年の後、伊豆の山に惹かれて古い家を買ってしまい、 埋もれていた庭を掘り起こして、還暦の素人が庭を造りながら語る 60年の発酵した経験と人生。
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1件のコメント

  1. 紹介されていたみづきさんのブログを拝見しました。文章や内容を読むと、とても知的な方であったことがわかります。ご主人やお父様も代筆されていましたね。みづきさんのご冥福をお祈りします。

    みづきさんのブログで、2007年5月29日の記事で、週刊誌の取材を受けて、日本の医療制度、特にがん治療について、これからどのようにすべきかと言うのがありました。これはご本人が実際に体験されての事ですので、とても参考になるし、そうかもしれないなと思いました。

    私は日本の医療は、病院が身近にあってかかり易いし、それ程待たなくてもいいので、3割程の費用はかかりますが、世界的に見てもまだいい制度だと思っています。アメリカが一番ハ-ドルが高いようですね。トップクラスの医者の数は多いでしょうが、庶民はそこに辿りつくことはできないでしょうし。。費用が高すぎますね。アメリカ以外の国々では、医療費をそこまで心配する必要はないでしょう。

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