闘痛記

今度の痛みのスケールは10のうちの11
二人の刀鍛冶が溶鉱炉になったおばちゃんの腹の上で日本刀を鍛えていた。次の日は関取が餅つきをしていた。

今は小錦がおばちゃんの肝臓の端っこを三つ折りにしてその上にどっかりと胡坐をかいている。重くて痛い。

術前のコンセントで担当医と改めて痛み止めについて確認をしおいた。
限界ギリギリまで硬膜下麻酔と痛み止めは入れてください。手術は受けるが一番いやなのは痛みであって、痛みを我慢するストレスだけは味わいたくないです。

一回目の胆嚢除去の時も、麻酔はたっぷり痛み止めは贅沢にお願いしやす。はい、わかりましたということだったのに、いざとなると看護師は麻酔のお替りは禁止。だって、限界量が決まっているのでそれ以上はダメなんです、っと。


だから、今度の手術の前のコンセントはそこんとこを担当医に指摘して、再度
麻酔はたっぷりお替りで痛み止めは贅沢に」と念に念をいれて念を押したつもりだった。

ところが日本のチーム医療というのは非~常に多くの人員で構成されていて、担当医一人がその気になって患者に何かを請け負っても、看護師たちには申し渡しがいきわたらないのである。

それで、3日目のお昼に硬膜下麻酔が切れ始めたときにすぐにナースコールしてお代わりを頼んだらなんと、普通の痛み止めの点滴を持ってきておばちゃんの痛みはマックスになった。
これじゃ効かない、硬膜下麻酔を入れてくれというと今の痛み止めが普通ですという。その普通が嫌なんだ。

これで、申し渡しが全くいきわたっていないことが分かった。
それでナースにおばちゃんは担当医とは術前で麻酔と痛み止めはたっぷりお替りという合意ができている。だから担当医さんは許可が出ているはずというと。

担当先生に確認しますが、担当先生は今手術中ですという。手術が終わるのは午後4時です。と抜かす。おばちゃんはもううなり声も出ない。

確認が取れて麻酔が届いたのは6時。
今度の量はいつまで持ちますかと聞くとおおよそ2日は効いているという。
じゃ、そのあともお代わりをお願いしますというと、もうこれで限界です。ふつうはこれ以上やりません。もしやったりすると、感染などのリスクがでてきますから。

おばちゃんは、嘘つけ、と思う。
トータル3回6日間ぐらいは平気だろうと思う。なぜというにアメリカで手術後日本人がぱかぱか死んでいないからだ。日本の2重3重の責任回避と及び腰の体制を考えると、感染がでて(リスクはそれほどあるとも思えないが)病院と医師が責任を取りたくないからだ。
責任を取るより患者に我慢してもらったほうが楽。

アメリカの麻酔痛み止めの限界は日本の医学の普通とされる限界より可なり上だろう。
タイレノールの有効成分量を日米で比較してみるとよい。

今このブログを書いて気が付いたが担当医はたぶん誤解しているのである。
アメリカで無痛医療に慣れている患者=おばちゃんが日本でも同じ扱いを求めていると
と~んでもない。

まったく反対であった。
アメリカでは、麻酔の量を減らしてくれ、薬の量を減らして、弱い薬にして!
イラニアンの歯医者で抜歯をすることになったとき、歯医者が持ってきた注射器は戦慄するものだった。薬液が7~8センチはたっぷり入っている。

歯茎にぶっすり打たれ麻酔をもうこれ以上受けつられないと、当の歯茎から余分なノボカインが口の中にシャワーのように降りそそぎ、窒息しないために麻酔を必死で飲み込んで「これはもしかするとシャレにならないかもしれない。下手すると麻酔で持ってかれる」と真っ青になった。

歯医者と助手はさらにおばちゃんに麻酔ガスをかがせようとしてくる。
朦朧としてマスクを避けようとするおばちゃんと、かぶせようとしてくる歯医者。思うように舌が動かないので、enough, enoughというのだがit’s okとマスクをかぶせられて、深呼吸をしたとき「ああ~、おばちゃん終わった」と意識が飛んだ。

抜歯が終わっても立てず、クリニックに回復室はないので料金を払って帰れと言われ、よろめき出たクリニックの外の石のベンチで4時間死んだ。
公衆電話を掛けに行く力さえなかったのである。

かずこさんはきゃしゃで150センチもないが、何かの治療で注射を打たれてその場で失神した。そんな日本人の話はそこら中転がっているのだが、いざ手術などの必要が出てくると日本人の麻酔科医がいないか探すことになる。そんなものは安全で新鮮な「牡蠣」くらい珍しい。

だからかかりつけのドクターを選ぶ時も、中国系ドクターを選んだ。
ドクターが薬を処方するときに、アメリカ人と同じだとグロッギーになってしまうので軽い量の処方をお願いと頼んだところ、ドクター・チェンはをしびれを切らしたように

アメリカの医学スクールは人種ごとに薬の量が違うとは教えてない。とおばちゃんに断言した。

確かに人類として厳密な許容量がきっちり決まっている薬剤はあるらしい。でも日本の医学界と厚生省の麻酔上限は、アメリカの限界量より絶対低いと思う。ドクター・チェンとうちの担当医にはそれぞれの経験と知識をじっくり腹を割って話してほしいものだとおもう。

アメリカの量と日本の量を足して2で割るとちょうどいいのだ。

ただし、ドクターチェンはもう現役ではない。その次にアポを取ろうとした時に秘書からチェンドクターはおやめになりました。と聞かされたから。
どうしておやめになったの?と質問すると秘書が「ドクターってしんどすぎてもうやっていけないんですって」


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8-異色・入院雑記

mikie@izu について

海外在住何十年の後、伊豆の山に惹かれて古い家を買ってしまい、 埋もれていた庭を掘り起こして、還暦の素人が庭を造りながら語る 60年の発酵した経験と人生。
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