海外在住何十年の後、伊豆の山に惹かれて古い家を買ってしまい、 埋もれていた庭を掘り起こして、還暦の素人が庭を造りながら語る 60年の発酵した経験と人生。

クリスマス・ペイント

12月に入るとウエスト・コートにペイントの染みだらけのTシャツを着た白人のおっさんが現れる。

ヘイ!今年もシーズンだね?アンタのドアはいつがいい?
ヘラルドは毎年、時だけやってきてテナントの正面のガラスにクリスマス用のアクリル絵を書いて金を稼ぐのだった。

アクリル絵の具は赤・緑・白の3色だけ。山、モミの木、サンタ、鈴、雪など決まりきった単純な絵を書く。ある年はウチの子が、おばちゃんこの絵にいくら払ったんですか?$20ドル。
え~、私ならタダでもっとうまく書いてあげるのに?アンタ、クリスマスシーズンは忙しくて、ウチに来ないじゃん?

ヘラルドは、いつも間口の大きなテナントから書いてゆき、夕方はウチが最後になる。終わるとしばらく世間話をして帰ってゆく。
いつの年だったかは、隣のモールのテーラーに絵を書いたとき、現金の代わりにカスタム・オーダーのスーツを一着もらったんだと。すごいだろうと自慢をしていた。

が、おばちゃんはジャネットから件のテーラーの噂を聞いていた。
なんでも隣のモールのオーナーがショッピングモールの全面改装を計画し、駐車場を広げるためにテーラーの建物(モールの敷地に飛び地で一軒だけ建っていた)を取り壊す予定だったのだが、このテーラーがガンとして出ていかず家賃を供託して頑張っていた。

おっさんがもらったスーツは確かにカスタム・オーダーだったが、オーダー主が取りに来なかった何年も前のヤツだ。

おばちゃんが飲み物を出すと、ヘラルドは腰を落ち着けて今度結婚したんだ。例のチャイニーズの女の子だっけ?そう、その彼女と中国からインポート・ビジネスも始めたんだ。

俺はナイトスクールでナンとかの学位を取ったから、上海の大学に呼ばれてるとか、50近くのおっさんの妄想だか夢だかわからん話を語るのだった。ソーダを飲み干すと、古いぼこぼこのシボレーに乗って帰って行った。

うちのウェスト・コートがリモデルした後は、管理会社のフレッドからクリスマス・ペイントを禁止するレターが来て、その年からおっさんの仕事は無くなった。

おばちゃんは、ヘラルドには悪いけど、ほっとした。
クリスマスの飾りはすぐ外すと寂しいので、だいたい年内いっぱいはそのままにする。そして新年の休みが明けて、最初の仕事がこのペイントはがしだから。

このアクリルペイントというやつは、溶剤で落とすのも時間がかかるのだ。
おばちゃんが溶剤で溶かしてこすったら、色が混じった汚い絵の具がガラスに広がってしまい、全部落とすのに溶剤の瓶が一本使うし、空ぶきまですると軽く2時間はかかってしまう。

新年初めに、2時間早出して絵の具落としなんてうんざりするのだ。
せっせとタオルで落としていると、パン屋のクリスが”何やってるんだ。アクリル絵の具はスクレーパーでこすり落とした方がいいよ”と。

クリスマスの25日の夕方から正月の7日過ぎまで、毎年長い休暇を取るクリスも、新年初営業の時には早めに来て、絵の具を落とす。溶剤ではなく、スクレーパーでカリカリと削り落とすと早いという。

おばちゃんもスクレーパーを買ってきて削り落とすのだが、ヘラルドが落とすところまでやってくれるならもう20ドル支払っていいのにと、いつも同じことを思ってた。

ヘラルドには気の毒だが、中国相手の輸出入りで、尻毛抜かれずに儲かるならこんなクリスマス・ペイントみたいな出稼ぎにもならない仕事をするよりましだろうから、頑張ってほしい。

年末調整と確定申告

11月に入ったらおじちゃんがヒラヒラと一枚の紙をもって帰ってきた。
「年末調整」なんだったけ?何をするもんだっけ?記入の仕方ともう一枚インストラクションがついていた。
①に住所と③が配偶者でンたらカンたら。見れば見るほどムカッと来る紙だ。

なんたって、記入も計算も順番が理屈に合っていない。右のほうに記入した⑦を左真ん中の⑪に書き込めとかおよそ理解不能。キイィ~と頭にくる。

ただ、この不合理にあう合理は一つある。
それは紙だ。

おばちゃんはDTPをやってたから一枚の紙という制約があるとき、デザインとワーディングをどこにどのくらいの大きさで入れなければいけないのか四苦八苦する。
Excelで書類を作る時も、テキストボックスの大きさで紙のどの位置に置くか制限される。

すべてのテキストボックスがジグソー・パズルのようにピタッと一枚の紙に収まるとDTP的にはぞくっとするほどうれしい。

だが、計算表としては壊滅的に非合理的。記入する人間だけが四苦八苦する。この年末調整という紙は、役所・事務がたった1枚の紙に必要な情報を全部ぴったり収めたい、という卑しい欲望でこんな利用者に不合理な出来になっている。

今はオンラインで年末調整もあるが実は本当はそんなものはいらない。

確定申告をせねばならない人間はまともな会社勤めではないという幻想を日本国民に植え付けたのは日本国の陰謀である。

日本国民に次ぐ!
年末調整なんて止めちまえ!確定申告をしよう
年末調整をする限り、自分の払った税金がいくらだったのか、自分が払う税金をどれだけ節約できるのか永久にわからない。

確定申告をしよう。
オンラインの確定申告は年末調整紙の記入よりず~と分かりやすく簡単で、自分が使った医療の控除や、自然災害などで損益があったときに申告して税金を取り返すことできる。

確定申告というのは国民に許された年に一度の税金を取り返すチャンスなのだ
確定申告をせねばならない人間はまともな会社勤めではないという幻想を日本国民に植え付けたのは日本国の陰謀である。

アメリカは2月から4月・15日までに、成人のアメリカ市民は所得税の申告をする。
この申告によって自分の税金がどれだけ抑えられるかが白日のもとにさらされるので、成人は真剣になるのだ。

知り合いのKは合衆国に所得税をふんだくられるのを腹に据えかねていて、所得税を払わぬと心に決めて
優秀なCPAを雇い、控除を入れるだけ入れまくってCPAにサーカス的?芸術的?申告書を作らせて申告している。
CPAの料金は1000ドル近いのだが、アンクルサムに税金を取られるよりずっと心穏やからしい。

日本では薬局で買う風邪薬も医療控除に入れられるよ。まぁ、控除が少なければ年末調整をスキップして確定申告で、
追加の税金を取られることがあるが、そのムカッと来た感情を動機にして節税に励もう!税金が返って来た時の満足感はなかなかうれしい。やった、取り返した!と思える。
年末調整より確定申告。

日本のプライシング HiddenFees

日本でサーバーを借りてWebを持つには、〇サーバーはなかなか使いやすそうだから、とりあえず古いファイルは〇サーバータダ用のところに置いてあった。
WordPressが使えるサーバーだし、いろんなページで解説があるので、Wordpressを使ってのスタートアップには力強いと思ったのよ。

そしたら偶然〇サーバーの広告が目に入ったのね。「1月742円キャンペーン 11月18日までに申し込み限り」
気が動くじゃない。それでクレジットカードを握って、申し込みをしてみると画像はスタンダードが間違いなく742円て書いてある。

https://secure.xserver.ne.jp/xinfo/?action_register_server2_index=on&service=xserver

それでスタンダードにチェックして使用期間をとりあえず3か月にしてみると
請求金額が6,468円だった。
742円X3=2226円のはずでしょ!いったいどういう計算をしているのか、
他の付加されている金額も明細も全く表示されない。
いきなり6468円。

おばちゃんは不審感でいっぱいになって〇サーバーのコンタクトに質問のメールを送った。詐欺ではないか?と。
しばらくしてメールの返事が来て、

一番安くなる742円は36か月借りた時だけであってまず、新規の申し込みは、初期費用:3,300円プラス
利用料金が月額3,168円で1年借りると支払い金額合計は30,012円だと!

〇サーバーのサポートは:広告法にのっとっておりますので詐欺ではございません。という返事。

客が一目見て理解を得られない文案と広告の画像は詐欺と言われてもしょうがない。
申し込みのページのどこにも一目見て理解できる初期費用の文字はないよ。
客が見られない文字、小さな文字それさえも初期費用の文字はなかった。
違うページでの解説なんてわからないよ。画像はミスリード。

日本はいつまでこんなプライシングと広告をやっているのだろう。
アメリカは20世紀の時代にこんなひっかけの売り込み方法はすたれてしまった。特に嫌われるのはHiddenFees.(その他費用を隠すこと)契約にサインさせる直前とかにその他費用を知らせたり、契約書の一番下に小さな文字にその他費用が書いてある。

こういう企業は客にどんどん訴えられるので、訴訟費用がばかにならずなおかつ、客の信用も失うのでアメリカで行われなくなった。10ドルぽっきりといったら10ドルぽっきりなんだ。広告には念を入れてNO HIDDEN FEES と但し書きがあることも多い。

2000年過ぎてEpsonAmericaが訴えられた。ClassAction(集団訴訟)で。

どういう流れかというと、Epsonプリンターを買い、(x年からーx年にかけて)ユーザー登録をしたすべての客
に文書で集団訴訟の参加申し込みの用紙が送られる。訴訟の原因は無論詳しく書いてある。訴訟に参加資格があって一緒にやりたい場合は、付属のハガキにチェックマークを入れて返送するだけ。
それだけ。

Epsonは和解して参加したユーザーに和解金を送ってきた。おばちゃんも小切手をもらった。

Epsonが何をしたって?
Epsonのプリンターはインクが少なくなるとワーニングが出る。当然だろう?って。
実はこのワーニングが出た時点で、インクの残量はまだ5%残っていたのだ。調べたやつがいるのだ。

Epsonのワーニングを信じてインクを新品に交換したユーザーは、5%のインク=金を無駄に捨てたわけだ。
日本人の忖度は通用しないよ。もしかして、早めに警告してインクの販売量を増やそうとしたのかも。
そう勘ぐられてもしょうがない。Epsonは和解して莫大な和解金を払った。

一度突っ込まれても学ばなかったのか、あるいはアメリカの弁護士から甘い企業と目をつけられたのか、
Epsonはもう一度訴えられた。
この時はそれほど大ごとではなくおばちゃんはオンラインストアで使えるポイントをもらった。
これがアメリカで物を買ったら10年レシートを捨てない理由だ。

ユーザー登録は必ずしよう。
いつクラス・アクションのお誘いが来るかわかんないから。日本全国のイソ弁の諸君。ここにビジネスチャンスが転がっている。
ひっかけ広告の皆さん、正直に勝る徳はなし。

おばちゃんも商売している間、値段のごまかし、他の費用を隠すこと、生産国の偽造などは
一切やらなかった。知っててやったら訴えられてその時のダメージが大きすぎるから。

〇サーバーさんも、正直に費用の明細をわかりやすく書けばよいのだ。わざと極端に安い金額を書いて、客をひっかけたら客が怒る。怒った客は戻ってこないんだよ。

プライシングがちょっと高くて二の足を踏む金額だって?では、もっと高い会社を比較広告に持ってくればいいじゃないか、。
TryOutの本当に安いコースを作ればいいじゃない。いるのはサーバーの容量だけなんだからさ。それで契約してくれたお客さんは長い顧客になるかもしれない。正直な商売をしようよ。


日本のビジネスは効率が悪いといわれる。仕事のための仕事のための仕事をしていて、なんという効率の悪さとあきれることがある。
携帯の契約条件とか、広告チラシもその一つ。何度読んでもわからない文案。客のキャッチには最低ね。

それから質問をしないと理解できない広告・申し込みシステム。客が質問をするために従業員を一人捕まえて、本来するべき業務が停止する。理解できない申込書を作るから山ほど客から質問がでて、営業員がくぎ付けになる。どうしましょうと、上役に聞きに行くから上役の業務も停止する。

おばちゃんは、従業員が客の質問に困っておばちゃんに聞きに来ると仕事ができなくなってしまうので、どうしたらよいか考えた。客にわかりやすい広告・システムを作れ。

一目で理解できるフライヤー、チラシ、料金システムを作る。書く言葉を選んで、客の誤解が起こるのを最低限にする。
客の質問が少ないほど仕事がスムースにはかどる。
ひっかけを作るな、例外の条件を多くするな。条件を多くすればするほど、本来の業務以外の仕事が増える。
セールに山ほど条件を付けると客が怒るだけ。仕事のための仕事のための仕事が増える。バカと違うか。


日本の仕事は非効率的だ。
その一番の非効率的業務をやっているのは役場だ。政府のひどい文章。あれは質問をして初めて理解が成り立つように考えて作られている。仕事をするための仕事をするための仕事をするための仕事。


市民が窓口で質問をしてくれないと、職員が働いているように見えないからね。
あんまり文書が理解不能だから、英語版はないかと聞いたことがあったよ。
閑話休題

日本のIT系の料金は欧米に比べて15%から30%高いね。日本MicrosoftのOfice365なんて「え!」って金額よ。
Adobeもそう。アメリカのコンピューターショップでSubscriptionを買って、日本に送ってもらうと、ええええっ?てなるから。英語版は読めないからどうせダメだって?

内緒でおしえてあげよう。ダウンロード版のOfficeはダウンロードの時点で言語が選べる。つまり何語であってもアメリカで買う方が安いんだ。

ホスティングの海外のサーバーも日本より安いから。

ビッグ・ベン と スモール・ベン

おじちゃんの会社と関係が深い企業の社長の名前が「勉」さんといい副社長も偶然「勉」さんだった。
社長は腹回りが巨大だったので「ビッグ・ベン」といい、副社長は「スモール・ベン」というあだ名だった。
陰では大便と小便と呼ぶときもあった。

小便もとい、スモール勉さんは人当たりの柔らかい人で「小便」などと口に出すのが申し訳ないくらいいい人だったけど、偶然ベンさんが重なってしまったので悪気はない。

この小・勉さんは秀才だった。
考えがシュッと走るのが見えるくらい頭のいい人で京大出だった。その奥さんは物静かな人だったけど、実は勉さんなんか問題じゃないくらい天才だった。

お茶の水の出身で、たぶん両親が東大なんか行かせると、縁遠くなるから女子大へ、と思ったのだと思う。なんという資源の浪費。ちゃんと東大に行かせていたら日本のマリー・キュリーが誕生していたのに。

うちの家庭教師の手引きで一度奥さんにお目にかかったが、多分この人は人間関係に苦労したんだろうなというのが感想だった。
一度聞いたこと読んだことは忘れない特殊なメモリーを持っていたのではないかと思う。小・勉さんは秀才の思考が走るのが見えるが、奥さんは、頭が良すぎるのでこちらの理解度がどのレベルかいちいち感がいている。


どういう風にかみ砕くとこちらにぴったりの答えができるか、光速で計算した後におずおずと答えを言ってみて、こちらの理解度を観察したうえでさらに会話をすすめてくるわけで、奥さんと手加減なしに同等に会話を楽しめる人はほとんどいなかったのではないか?

二人の子供を除いて。息子と娘も天才だった。

誰もが、ああ、あの奥さんのお子さんならね。と言うくらいで誰も京大出の小・勉さんの子供だからとは言わなかった。

息子はハイスクールを卒業したら、何の準備もなくいきなり東大に合格した。息子にも特殊なメモリーが引き継がれていたのかもしれない。息子だけ先に日本に帰して今頃はとっくに東大を卒業して世界のどこかの最先端の研究室にいるかもしれない。

娘も天才だった。
勉強というものがおおよそ必要でなかったのではないか。ハイスクールでは常にトップ。だが、天才といって脳の出来は抜群でも対人間スキルに関すると全く別物のようだった。

ギフテッドの子供というのは得てして、友達がいなかったり、人間関係がうまく築けないものらしいが
娘の場合は、へらへら笑うアメリカ人のボーイフレンドがいて、どう見ても彼女の脳みそだけを利用するために引っ付いて
いるとしか思えないのだが、彼女にとっては数少ない友達の一人だったのだろう。

ついでにうちのモールのイラン人のヘアサロンのオーナーの娘もギフテッドだった。
まったく可愛げがない娘で、8歳だったか学校には行ってなくて一日中モールの通路で遊んでいたが、計算がめちゃめちゃ早かった。CPUがインテル10GHzで内部キャッシュが1Gくらいの感じ。

アメリカの物品の値段はセントの位があるから、$12.58とか、$11.89とか。なるべくセントの位を89とかに
して桁を小さめに見えるようにしておくのがコツだが、この娘は、4桁の計算を見ただけでできる。

ウチの値段表を見ながら、これはいらないので引くといくら?とか聞くのだ。


電卓を取り出してパタパタやっているおばちゃんを、不思議そうに眺め、おばちゃんが計算を間違えると、
答えが何セント違っている原因はもしかして何かの関数が入っているのか?
と考え込むような様子があって、おばちゃんはむっとしたものだった。

インテル入ってなくて遅くて悪かったな。

とほほの女王

そりゃ、おばちゃんだって渡米したばっかりの90年代初頭は、ういういしくて見るもの聞くものめずらしくて
98年ころは今は無きGeocitiesでいくつかページを書き散らしていたのである。(あっ、誰かGeocitiesを保存しているやつがいたっけ)チャイニーズレストランがどうたら、アメリカの歯医者がどうたらとか無邪気なスカみたいなページ。

そのころGeoの住人も海外在住は多くなく、旅行雑誌のコラムみたいな記事はつまんなくなってくるし
もっと堪えるネタはないかと観察していたらおじちゃんの会社があった。

おじちゃんの会社のネタを書いていい?と聞いたら「俺を首にする気か?」と言われ露頭に迷ってまで
書くこともできず。
酒もやめたので、コンピューターにどっぷりつかった。文芸誌と小説を忘れてコンピューターの参考書を買い、
週刊アスキーを買う。

ちょうどウエスト・バージニア州のA子ちゃんとネットで知り合って、おばちゃんにEmailを書くと5分以内に返事が返ってくると言われた頃。LineもTextもない時代に。

朝、おじちゃんを送って行って帰ってきたらコンピューターの前に座り、Pearlとは何ぞやスクリプトとは何ぞや初めましてのプログラムはたった10行なのになんで動かんのか?

朝からコーヒーだけでそういえば、おしっこがしたかったけど
トイレに行くのを忘れとったわ。
上の空でトイレに行く途中、はっっ!もしかして3行目のコマンドはコロン:ではなくてセミコロン;ではないか?
トイレに行かずに書斎に引き返して、やっぱりセミコロン;でも動かんのぉ?そういえば、おしっこに、。
立ち上がってトイレに行く途中、はっとして4行目が、, カンマでなく.ピリオドではないか?引き返して、やっぱり動かんのぉ?

気が付くと夜になっていて上の空でおじちゃんを迎えに行って帰ってくると、なんだか心臓がどきどきする。
息も上がってきてドキドキはぁはぁなんか苦しい。あたし苦しいからエマージェンシーに行くわ!

おじちゃんを乗せてERの前まで行って、このドアを入ると一発$100ドルだ。くそっと腹が立ち、そういえば
私は今日水を飲んだっけ?

おばちゃん、脱水症状を起こしてたんですね。ERの料金がもったいないので、家に引き返して水を飲んだ。
やっぱ、プログラミングはセンスよね。あたし、向いてないみたい。
今はHtmlもほとんど忘れた。

週刊アスキーが面白いのでコラムのファンになり、おばちゃんも投稿してみっか?と投稿したら採用された。
ちょうど「新幹線より早い男」さんとか「かよのダンナ」さんとか「ご隠居」さんが活躍していたころだ。
女がただでさえ珍しかったので、おばちゃんは「とほほの女王」で
ミケ猫@カリフォルニ屋が誕生した。

そうだった。おばちゃん、すっかり忘れていたわ。なんせ、店の経営が忙しかったから。

コンピューターも仕事の集計とデザイン専用になってしまい明日のためにその1、今週のプロモーション!
などを考えているとWin03サーバーのセキュリティパッチ?ちょっと今暇がないから。息抜きは掲示板!てことになりおばちゃんは実務一筋にまい進したのだ。

ブログ?とんでもない。
おばちゃんの商売は客商売なので、どんなにおいしいネタが転がっていても書いたら廃業。書くならチラシに広告、店のWeb。OCに今でもいたらやっぱり書けないよなぁ。

帰国して見るもの聞くもの珍しくカウンターショックでブログをはじめようとしたら、日本語がメタメタだった。とても文章にならんのであきらめて庭いじりに専念していた。

無心で草取りをしていると日本語の文章がぷくぷく湧く。文章が頭の中を走っていって内容が面白いので、自分で一人で笑う。
しつこく湧いてくるようになったので、キーボードを叩いて頭から取り出すことにした。すっきりした。
そういえば今のうちに記憶も取り出して置かないと、おじちゃんからお前なにカリフォルニアの夢の話をしてんだよ。と言われてしまうことがあるかもしれない。

日系人から見た日本人の英語

渡米した年代によって米国に住む日本人の外来語の日本語解像度が違う。

どういうことかというと、米国に住む日本人たちもと日本人たちは、故郷を離れた後に誕生した日本語あるいは翻訳語はもう分からない。戦後渡米したおばあちゃん世代になると、「掃除機」という日本語は覚えきれない。Vacuum Cleanerである。

70年代前半から80年以前の世代はMicrowaveであって「電子レンジ」は何回聞いても忘れてしまう。そもそも掃除機とか電子レンジとか日常生活で日本語で発音する必要がないし。

90年代はコンピューターかな。「パソコン」と発音する在米日本人はいなかった。コンピューターはコンピューターでWindowsかMacかまれにPublicかPersonalの違いを言う時はあるが。

2000年代、
チョコレートのGodivaが日本に紹介されてゴディバとして覚えた日本人世代。渡米してゴダイバと発音されいて驚く。

日本にIkeaオープンしたのは2006年らしい。
IkeaUSAは1985年開業なのでIkeaはアイケアだった。日本に帰国したら、イケアと呼ばれていて「池谷」に聞こえてなんだか変だ。原語には近いのかも。

ごめんなさい。DeNAはディーナとしか読めない。

おばちゃんがOCで日系組織の会報に携わっていたころ。外地に住む日本人コミュニティとして業界別とか出身地別とかさまざまな形の日系組織があり、奨学金をだしたりイベントを組織したり会報を発行していた。

その会報の編集を手伝ったのだが、ドラフトが出来上がるとそれを幹事さんに見せる。幹事さんは日本人以外に2世もいた。

OCの時事記事なので当然地名・固有名詞は英語なのだが、紙面上アルファベットの縦書きでいくか、カタカナで書くか物凄く悩んだ。

アルファベットの縦書きはスペースも取って、すごく読みにくい。もし、名詞が日本語化しているものだったら日本語で書いた。
その時に困るのがL とR、 BとVの書き分け。BとVはカタカナでも書き分けられてもLとRの区別は日本語に存在しないので、目をつぶる。

そうだ、時はちょうどハロウィーンで行事の記事だった。Jack O Lantern ジャック・オ・ランターンとGarage Sale ガレージ・セール2世幹事さんがこの2つのカタカナに引っ掛かった。

2世のテリーさんは日本語も読めるし、しゃべれるのだがカタカナの日本語表記ルールについては詳しくない。そんなものあるとも思っていない。英語の発音を正確に日本語にすべしと思っている。

テリーさんはジャック・オ・ランターン?ジャッコ・ランターンだろう!
ガレージ・セール?だから日本人はダメなんだ。
グラージ・セールと書きなさい。
いつまでたっても英語がうまくならないんだ!

Yes,テリーさん、とおばちゃんはカタカナを直した。なるべく英語の発音に近いカタカナをはめて

様々な英語のなまり

ジョイスに鍛えられたから、おばちゃんは中国訛りの英語の聞き取りには強い。Rの発音がきついメキシコ訛りは聞き取りが難しかった。
Number1をナンベルワンと言われて、Rがル・ラになっちゃうとお手上げ。スペイン語をしゃべるおじちゃんに代わってもらうしかない。

2000年過ぎるとカスタマーサービスにインド系が嫌っというほど増えて、聞き取りに苦労するようになった。
インド系は業務の知識もちゃんとあり、話し方も丁寧だったがやはりRの発音がきついので聞き取りに努力が要った。
ギブアップして、別の人に代わってくれと言ったこともあった。高級エステでもないのに「Madam」と呼びかけられたのは丁寧だっていうのはわかるが、何を言ってるかわからなければしょうがないじゃないか。

ベトナム語に「Z」の音がないとか、ジョイスは「ピッツア」の「っあ」の発音ができないみたいで、いつも「ぴっつうあ」
と意識して発音していた。パキスタン人に言わせると彼の母国語には母音子音が大体そろっているので、
ほかの言語を取得する時に苦労する音が無いのだという。そう言われればイラン人の英語の発音もそれほど聞き取りに苦労はなかったわ。

CNNのスポーツ担当のイギリス女性の英語はひっくり返った。あの人はCNNのジョークなのだろうか?
何をしゃべっているのかさっぱり分からない。フエンとかファンとか、コクニー?

NetFlixでノルウェー製作の「RAGNOROK」を英語の吹き替えで見ると面白い。吹き替えの人も英語のうまいヘタがあって、主人公のお母ちゃんの英語は極端にノルウエー。北欧系の重ったさがあって、どういうわけか
語尾が上がってしまう。

日本の方言でも肯定なのに語尾が上がる地方があって、県民ショウを見た!あれをもっとすごくした感じ。
RAGNOROKのお母ちゃんが何をしゃべっても語尾がたたみこむように常に尻上がりになる。
おばちゃんの頭の中では彼女の英語が東北弁で翻訳される。

腹がたった英語のスピーチがあって、それは何を隠そう帰国してから聞いたToeicテスト用のスピーチだった。イギリス訛りが強すぎませんか?
おばちゃんが聞いたテストのスピーチはどっか文房具会社?の頭の悪そうな営業マンがこんなことを言う:

ねえ、XXの会社の仕入れ担当って誰だっけ?
スジ―?マギー?それとも誰だっけ知ってる?
XX会社の電話番号はどこ。あ~、もしもしXX会社のXXですが、
文房具の仕入れはXXXさんが担当ですか、
私は今回担当で、、、

おばちゃんは聞いてかっと頭に血が上ったね。ちょっと待て!、お前は担当の名前も忘れたのか、
会社の電話番号も分かっていないのか。それで電話をかけてホントに仕事ができるのか?
待てと言ったら待て!
一区切りの会話で人が聞いて覚えられる新規の固有名詞は3つまで。お前は固有名詞をボロボロName Dropしている。

相手に理解してもらおうと思うなら、こんなしゃべり方は最低だ。これは英語のスピーチというより、もっと大事なものを忘れている。

この兄ちゃんはぺらぺらとメリハリもなくどうでもいいことを垂れ流している。

新規固有名詞が沢山あって、短期記憶(短気記憶)が悪くなったおばちゃんは、ついて行けなくて怒ったのであった。
こんな奴はセールスとして失格である。おばちゃんは雇わない。

二世の交渉術 二世いろいろ

2世のトオル君は舌を巻くほど交渉がうまかった。商才もあった。小さ体にリュックを背負っている小学生のころから、同級生に爪楊枝とかコークを売って稼いでいた。「爪楊枝?」

おばちゃんが驚くと、学校だとガムが禁止されているので、んか口に入れる味が付いたものだったら売れるんですよ。ミントの味が付いた爪楊枝があるんです。

コークはね歯を腐らすとか言って大人からは嫌われてるんで、リュックに入るだけ入れて持ってくと、ぬるくても売れるんですねぇ。

こうして稼いだ金をコンピューターや日本のアニメにつぎ込んでいた。トオル君は完ぺきに近いバイリンだったから、長じて大学に入っても、日系の店ではバイトとして喜ばれた。

サンクスギビングの翌日はブラック・フライデーである。今年はどんな目玉商品が出るのか、電気屋や小売り業界の広告が話題になる季節だった。トオル君とつるんでいる日系の子弟は、サンクスギビングのディナーをパスしてどこの店に並ぶか決める。
なにせ目当てのコンピューターやグラフィック・カードが定価の半額とか3分の1になる年に1回のチャンスなのだ。

2世グループは首尾よくBestBuyの先頭近くに並び、イワタニのガスコンロで鍋を食べながら時間をつぶしていた。

すると、ねぇおばちゃん別のグループが近づいてきたんですよ。そいつらは俺たちの順番を買いたといって。
金を出すから順番を譲ってくれと。そいつらも欲しいものがあって、順番が先じゃないと売り切れる心配があるから。

それで俺らは相談して、今全員の順番を売って列の最後尾に並び直しても、先頭からXX番目になって、
俺たちの欲しいものは何とか手に入るかもしれない。だから一人あたり順番はXXドルで売ればもうかる。

売買は無事成立して、アメリカグループも満足2世グループも余剰の小遣いが稼げて満足。
おばちゃんはこの話を聞いて、トオル君にアンタは弁護士が向いているから、今からでも遅くない。
大学のコースを弁護士に変えなさいと言った。

嫌ですよ。俺、日本に行くんですもん。だから大学は最短で最小限の努力で済むように一番簡単なクラスをとってるんですから。トオル君はバイリンのくせに大学で、日本語のクラスを取りまくっていたのである。

おばちゃん、「電車でGo」のクラスがあるんですよ。信じられます?トオル君にとっては遊んでいるようなクラスである。

日本語上級クラスを総なめにしたけど、悲しいかな卒業単位が1クラス分足りないんである。電車にGoの日本人先生に相談したら、お前が取るクラスはもうない。自分で課題を見つけて提出するようにと言われてしまって
頭を抱えていた。

おばちゃんの言うことも聞かず、トオル君は大学を卒業して日本へ行ってしまった。おばちゃんも親の言うことを聞かない人なのでトオル君を責められないが、トオル君!君は弁護士に向いている、日本での人生に疲れたら学校に戻りなさい。

ある日このRobert って誰ですか?よく見るけど。トオル君は伝票を見ながら、おばちゃんに聞いた。

「はぁ?ロバートってボブじゃない。よく来るボブのおじいちゃんだよ」
「なんでロバートがボブなんですか?」
「知らんがな。ボブはロバートの愛称だよ。あんたこの国に生まれて何年育ってんのよ。」
「ボブってロバートの愛称だったんですかぁ!」
「じゃあ、ビルは何の愛称だか言ってみ?」
「ビル?」
「Williamじゃ、ビル・クリントンの正式名称はウイリアム・クリントン」

2世のトオル君は日系社会でも珍しい、完璧バイリンに近かったが、時々ポカっと言語や文化の穴がある。
両親は日本人で親戚はこの国にいないから、生活を通してアメリカの歴史や文化を伝えてくれる親戚身内や
従妹もおじさんもいないから。

トオル君は日本語の発音には全く訛りがない。僕、英語をしゃべるとテキサス出身かって聞かれるんですけど。
テキサス訛りみたいなのがあるらしいです。なんででしょうね?

トオル君のお母さんはトオル君が5つの時に夫婦喧嘩をして、トオル君を連れて日本に逃げた。日本に1年いてカリフォルニアに帰ってきて、元鞘にもどったがトオル君はきれいさっぱり英語を忘れていた。

お母さんから、なんであんた英語を忘れるのよと怒られて幼稚園に戻って英語を思い出した。トオル君の日本語がキレイなのはこの体験のせいかもしれない。

アメリカで生まれて育つと自動的にバイリンガルになると考えたりするかもしれないけれど、大~きな間違いである。

日本語に訛りがないのがまず珍しい。さ・し・す・せ・そ が シャ・シ・シュ・シェ・ショになりやすい。
資生堂がシシェイ堂に聞こえる。可愛いけどね。

のちに面接した2世の男の子はかすかにシャ・シュ・ショだったが、「僕、あんまり日本語は話したくないんです。英語の発音が悪くなるから」ふぅん?

トオル君の友達もシャ・シュ・ショ2世だ。自分達でも発音の自覚があるので、1世の親世代の私たちには
あまり日本語を話したがらない。

アメリカで子供が生まれて外の世界に出るようになるころ、両親も子供も最初の言語のコンフリクトに遭遇する。お母さんが幼稚園に送っていくと子供が親に言う。
「マミー、英語をしゃべって!」自分の親が他と違う言語をしゃべるのが恥ずかしくなるから。
子供が小学生の高学年になると
「マミー、日本語をしゃべって」
自分の親の英語の発音が恥ずかしくなるから。

これらの子供に日本人としての自覚を持たせて日本語と文化を伝えていくのがどれほど難しいことか。日本語学校は土曜日・日曜日にある。親しい友達が週末にキャンプに行ったりフェスティバルに行こうと誘われたりするのに、2世は断って日本語学校に行かねばならない。

日本語で日本の社会だの歴史だのやるのだ。日本語と日本の教育を受けてアメリカでどんなアドバンテージがあるだろう?電車でGoができるとか?


漢字が読めるようになってもそれがどうした?英語でデベートに勝てるわけではない。日本の伝統文化を受け継いだところで、それがどうした。興味を持つアメリカ人はたいていアメリカ社会の主流ではない。


実際アメリカ社会で、日本人であることが有利に働くことは少ない。体格もアジア系で華奢にできていて、スポーツでもレギュラー・メンバーに入ることが難しい。

日本語学校は大抵遠い。子どもを送っていき迎えに行き、親が必死になって土曜日・日曜日を全部つぶしたのに!当の子どもは日本語学校に行くモチベーションも薄れ、日本語をしゃべるのも面倒くさくなる。
お母さんがしゃべりかけても英語で返事をするようになる。

Mammy never mindお母ちゃん、キ~となる。夫婦ふたり働いていて、とても子供のために週末をつぶせない場合、バイリンは絶望的である。

日系社会は日本語と文化の喪失を恐れて、いろんなプログラムを組織してきた。交換で中学生を日本に遊びに行かせる旅行滞在型研修?ブルーなんとか言ったと思う。

知り合いのお嬢さんが選ばれて、1週間日本に行ったのだが、お嬢さんはかすかにシャ・シュ・ショ2世だったから、お母様が日本滞在中は日本語を話すなと彼女に命じた。お嬢さんは言いつけ通り、日本語が分からないふりをして現地の皆様が彼女のことをどう話すかたっぷり聞いた。

最後に空港に送られて、お嬢さんは日本語できちんと挨拶をして機上の人となった。見送り方はポカンと、、。

まぁ、お母様も日本に生まれた日本人であって、故国では英語だけを話す人間を日本人がどのように遇し
日本語が頼りない日本人をどのように軽んじるかよく知っていたから。

変な人 おかしくなっちゃった人

日本で外語のアラビア語を出てアメリカに来たらプログラマーになっちゃったとか、駐在の両親に連れられてきたらハイスクールでいじめられ奮起したらIT会社の副社長になった人とか、

化粧品XXXの販売員で売り上げ日本一だったとか日本でアパレル企業立ち上げて会社を売った後渡米して色んなものを売る超セールス力の持ち主とか、チェーン店でエンパイアを築いた人とか、

順当にUCLAを卒業してIT企業を始めた人とかたたき上げでタクシードライバーをしながらCPAの資格取った人とか、家転がしで資産を築いた人とか

とにかく生きていかねばならないので努力したら自分の知らない才能が花咲いた。いろいろすごい才能を持つ人がいた外地だった。

が、たま~にどうしてこの人がここに?と思う人もいるわけ。
ある時日系スーパーで顔見知りで世間話をしていると、そこにさらに顔見知りAが加わって噂話に花が咲くわけ。そこでAがXXXのYって奴を知ってるか?と話を振りああ、前はLAのXXXに居たよね。あいつはダメだよ、流れ者だから。

A以外は全員????何を言ってんだこいつと思った。LAなら車でたかが50分、何が違う?よそ者と言うほどでなし。それを言うならわしら全員アメリカでよそ者やん。日本からここまで1万キロ流れて来てんの、みんな。
うちらみんな流れ者やんか!アホかいな。

ちなみに
多少頭が悪くてもめげない人、努力する人、勘がいい人、体力がある人
人脈が作れる人、戦うことができる人 は生き残って
酒や薬の問題がある人、体が弱い人、自我が弱い人、戦いから逃げる人
人を当てにする人、家族に問題がある人は日本に帰った。

おかしくなっちゃった人

おかしい人じゃなくて、おかしくなっちゃった人。海外生活のプレッシャーに負けておかしくなっちゃう人は一定の割合で発生するね。一番悲劇的だったのは駐在員の奥様が子供を橋の下に投げて自分も身を投げるつもりができずに逮捕されちゃった例。ご主人の勤める会社が火消しにまわったのか会社の名前が出ることなく奥様の噂だけが駆け回っていた。

駐在の奥様が外国になじめず家から出られなくなっちゃう場合はたまにあるので、その時に日本に帰国させてそれ以上壊れてしまう事は無いのだろうが、ご主人の方がいっぱいいっぱいで奥様まで手が回らずに手遅れになってしまうこともたまにある。

ご主人が慣れない環境と激務でおかしくなるのもよくある。毎月の給与明細に退職金は$XXXXと書かれている例の一流商社では気が狂っちゃう人もよくいるらしい。

その会社のメキシコ駐在カップルが休暇でOCに来てたらしい。メキシコではインフラに問題があることも多くて、バケーションで米国に骨休めに来させることがあった。

日本レストランに勤めていた知り合いのマコちゃんの話によると、ご主人が要注意だったそうだ。米国支社の先輩に慰労されていたらしかった。テーブルではにこやかに談笑していてどこから見てもエリート商社マンだが、
レストランの手洗いで狂うのだという。

手洗いの備え付け紙タオルを山ほど引っ張り出し床と洗面台にまき散らす。トイレットペーパーも引き出して床に丸めて捨て、明らかに後から踏みにじった跡があるのだという。マコちゃんはお手洗いの滞在時間が長いので気になって男性が出た後にチェックしに行って発見した。

これが初めてではなくて二回目なので、お客で来店してきた時から目を離さないようにしていたそうだ。人前では正常に見えるのだが一歩人目がつかない場所で誤作動を起こしているような場合、いずれどこかで異常が発覚したかもしれない。

頭のおかしいトルコ人。
この人は一時期日本のバラエティ番組に出演していたらしい。日本人にちやほやされたことが忘れられず、日系のスーパーや日系の店舗に出没しては不信をかっていた。

銀色のアタッシュケースを持ち歩き、人がいる場所でケースを開け、中の大小の葉巻にしゃべりかけていたとか、携帯が珍しい時代に携帯電話を持ち歩き、人込みで立ち止まって日本語で会話するフリをしていた、とか。

どう考えても携帯電話が繋がっていないのが分かるのだという。日本人だと分かるとすり寄って行って話しかけ、自分は日本料理が好きだ、鰻の刺身を食べられるレストランを知らないか?とか日本好きをアピールするのだという。トルコ系のコミュニティで保護していればいいのだが、。

テリーさんと外地の日本男児

テリーさんは日本生まれ日本育ちだったが20歳になるかならない年で渡米して、結婚したカミさんがアメリカ人だったから40年も経つ間に、日本語を忘れてしまった。

日本語のヒアリングはある程度できるのだが、書くのと読むのはもう不可能になっている。英語しかしゃべらない。
おばちゃんが雇われたのは、日本企業へのマーケティングと日本からくるEmailの問い合わせをテリーさんに翻訳すること。仕事の中身は退屈でつまんなかったから割愛するけど。

テリーさんの結婚は子供が全員成人したところで終結してでっかいアメリカ人の奥さんと離婚した。子供は全員男でフットボール選手かと思うほどのサイズ。テリーさんは165センチそこそこなのに。

このテリーさん、離婚してから正反対の趣味に走った。つき合う女の子は小さくて、華奢で女らしい娘。
アメリカ人女でなければ誰でもいい。その気持ちは分からないでもないが。

独身生活を謳歌していたテリーさんに、女の子は必ず質問を突き付けてくるのだという。

いいか、必ず一年経ったら皆聞いてくるんだ。”ねぇ、私たちはどこを目指してるの?
この先どうするの?”

何故それを聞く?テリーさんは人生を楽しんでいるので質問の意味が分からない。それで、一年後には女の子にみんな逃げられてバケーション先で引っかけた女の子が残った。

”妊娠させちゃって” ついでに ”てへっ”って付けたいほど。61歳のテリーさん20歳のメキシカン娘を妊娠させて、誇らしいのが半分、崖っぷちに追い詰められてるのが半分。

カトリックのメキシカンだから無論堕胎なんて選択はない。
ショットガンを持った親と兄弟が出てきたわけではなかったが産む!と言い張る20歳の娘に降参して、正式に結婚することになった。

ただ娘はアメリカに住むのを拒否した。嫌!アメリカ人はメキシカンを馬鹿にしているからアメリカには住まないわ!
テリーさんはしょうがなくボーダーの南に家を一軒買った。彼はサンディエゴに住んで、週末は国境を越えてメキシコに61歳通い婿。

40歳近い息子たちは大困惑である。
ステップ・マザーが自分のカミさんより若い。自分の子供より小さい腹違いの弟か妹が、これから生まれて来るんである。

テリーさんは遺言書も書き換えメキシコ娘と結婚して、子供を産ませて家もくれてやるつもりのようだ。1年たったらどうなるか分からないけれど。

外地の日本男児

テリーさんのほかにもおばちゃんはいろんな日本人男児を見た。ちらっと見たその男たちの結婚と食の人生を書いてみる。

行きつけの日本食レストランで夕ご飯を食べていると、カウンターに座った日本のおっさんがやけに目を引いた。お盆にのった定食を食べているようだ。一口食べるごとに天井を仰ぎ、肩を震わせお椀の味噌汁を飲んでう~とかあ~とかウルサイ。
食べ終わるとカウンターの中の板前さんに1週間ぶりにまともなご飯を食べたんですぅ、とかおっさんの嘆きが聞こえた。

多分単独の出張か、家族に先行して赴任してきたのだろう。スーパーでサンドイッチとかパックされた空揚げとか冷凍のピザ、ファーストフードのテイクアウトで凌いできたのかも。
35歳過ぎに単身で渡米すると、米と醤油と魚が無くては1週間でパニックになってしまう日本男児。

おじちゃんの会社の同僚にはコリアン嫁と結婚した日本男児がいて一緒にランチに行くと、ああ、白いご飯だ!とお茶碗のごはんをむさぼり食べるという。

聞いてください、ウチの嫁はコリアンで健康にいいのよと米に五穀を入れるんです。
黒い豆とか麦とかひえとかモソモソしてうまくないんですぅ。白いごはんが食べられるのは、お昼だけ。オイオイ。おかずについては何とかイケるらしい。

トムさんが結婚したのはクロアチア人で大学の時のクラスメートだった。
自宅に日本食は存在しない。
でもこの人の賢いところは、日本スーパーのそばにオフィスを借りたところだ。ランチは日本のお弁当を選び放題。アンパンでも和菓子でも徒歩2分で好きなだけ買える。

歯科医のBさんはアメリカ人の奥さんに首ったけ。ブロンドですごく可愛い奥さん。一言目にはウチのマリリンがマリリンがとデレデレ。
マリリンが作るなら冷凍のピザでも缶詰のスープでも美味に違いない。

不思議と日本男児と結婚するアメリカ女性は、夫に一歩下がって従うような古風なタイプが多い。
どこでそんなアメリカ人女性を見つけてこられるのか、なんか古風な娘を探す特殊なセンサーでもあるのか?それとも彼女らをひきつける磁石でも持っているのか?

コミュニティ新聞のRさんの奥さんもアメリカ人で外食はいつも日本料理だったので、奥さんの方が日本化していたのかも。常に夫をたてている感じ。二人並んで座っていると、亭主関白という言葉が浮かんでくるのが常だった。

Kさんは2世のコリアンと結婚して食生活はアメリカン。ただ、Kさん本人は元は板前さんだったそうで、日本食が食べたくなれば自分で作って奥さんと子供に食べさせる方だという。
う~ん、女としてあらまほしき夫はKさんかな。

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