アメリカの銀行は金勘定を間違える。
間違った口座に送金してしまうこともある。それは知り合いに起こった。
12月に入りクリスマス・モードが高まって、プレゼントは何がいいか、ショッピングモールがにぎわい始めるころである。
知り合いは取引銀行から突然電話をもらった。
あなたの口座に入金があったのだが、心当たりはあるだろうか?心当たりがあるかどうか、銀行が口座名義人に聞くのがそもそも変だと思うのだが、とにかく入金があったのである。それも50万ドル。
同じ金額だがハーフ・ミリオン(Half Million)というともっとテンションが上がる。
間違っているに違いないのだが、知人と細君は最初は狐につままれたように、だが次第に、銀行が送金してきたのだから送金先も送金元も確かなハズである。確かな送金元なんだから、もしかして?
知らない間に死んだ叔父さんが親戚にいなかったか、それとも叔母さんとか?必死で「もしか」を探したのだ。そして、見つけた。
過去に知人は自分のビジネスを売ったのだが、相手が支払い不能になって、売買金が入ってこなかったのである。知人は訴訟を起こしたが、自己破産をした相手からは何も取れなかった。
これがもとで、知人ものちに自己破産することになった。のだが、もしかして、あの買い手が改心してこのクリスマスの時に返金してきたのではあるまいか?
そんなわけがあるかい!
クリスマス・キャロルはおとぎ話である。理性ではわかっていても、夫婦なんとなくハーフ・ミリオネアになったようで、毎日ふわふわする。
ただ、銀行は夫婦を信じていなかったようで、口座はがっちりロックされて出し引きはまったくできなかった。夫婦は引き出せないものの、オンラインで着々と増えていく利子が見えるとミリオネアが少しづつ現実になっていく気がする。
夫婦でなんとなくショッピングモールに行き、ついでに車のディーラーに行き、なんとなく、というか、ついにというか、BMWを買ってしまったのである。クリスマスに夢を見てしまったのである。
その後、銀行は正しい送金先を発見したようで、増えた利子ごとごっそり引き落としてあとには、魂が抜けた夫婦が残った。
教訓 アメリカの銀行を信用してはいけない。