ガンのある人生

ガンは慣れる。

ガン患部を切れば無罪放免となるわけではない。
ガン細胞がどの程度体の中に散っているかドクターにも100%確証はないので、5年後にも生きていたら寛解宣言ということになっている。その時に晴れて無罪放免。
それまでは執行猶予中や。

観察中に怪しい影やガン・マーカーの値が急上昇すれば、病院に逆戻り。収監されるわけやね。


3か月ごとの血液検査とCTスキャンで体の中に何が起こってるか要観察。
胆嚢ガン ステージ2の5年生存率は30%を切り、毎年 胆嚢ガン発症が2万2千人で死亡が1万7千人。膵臓癌の次に医者がなりたくないのが胆嚢ガン。

血液検査の結果を聞かされる診察日は誠に嫌な気分だ。
あみだくじの“アタリ“を引くか“ハズレ”で逃げられるか?
自分の人生すごろくが目の前で転がるわけよ。年4回5年で20回、ハズレを引き続けないと逃げきれないわけね。

診察が終わったらホームセンターとスーパーに寄って帰る予定が、どこにも寄らないで一直線に帰宅と変更になるかもしれない。暫定―リタイヤ人生から、人生の終活期間に突入するかもしれない。毎回スリリング。

スリルというのはある程度慣れるわけよ、繰り返されると。
明日は何をしようと考えると同時に、再発した時の終末手続きもシュミレーションをする日常。ここんとこ右背中が痛いから夏物の洋服をこれ以上買うのはやめようとか。来年はもう着られないかもしれないから。

血液検査がアタリに出た時は、必要な衣料は何シーズンくらいで最低残しておく必要なものはどのくらいだろう。と考えねばならない。

クローゼットとタンスは2つあって、両方大きいほうをおばちゃんが使っているが、おばちゃんの衣料を整理してコンパクトにまとめたら、小さいほうのクローゼットに全部収納できるだろう。

おじちゃんにとって衣料とは暑くなればタンスに半袖があって、涼しくなると長袖に代わり、寝具は自然に変わっていくものである。蓋のついた箱に仕舞まわれて見えなくなれば存在しない物。おじちゃん一人なら、二つのタンスに衣料をすべて収納してしまえば、春でも冬でも必要な服は自分で取り出せるだろう。くじがアタリの場合は早々に実行だ。

庭に出たらおじちゃんに言うにしている。
あと5年たつと70歳を超え、その時足場が悪いと転ぶし、樹木は絶対手に負える高さにしないといけないね。70歳を超えて脚立を使って高い枝の剪定など自殺行為よ。(脚立を支える人がいないから)おじちゃんは深く考えたとは思えないが、言われたもんだから細すぎる小道は幅を広げて、百日紅もヤマボウシも切った。木というものは思いもかけず早く伸びるものだね。

80歳を超えた老人が来年は来るのかどうか、を思うのとさほど変わりはないかもしれない。深く考えることもなく、ガンと言う病気にに慣れてしまった。ガンという言葉もなじんでしまった。

ふたりに1人がガンになる時代。1家に1人のガン患者。
先日の統計では新しい表現に出くわしたね。

日本人が生涯で1回ガンにかかる確率
男性63%、女性48%。ちょっと斬新な表現ではないか。
ガンにかからない確率のほうが少ないわけね。

昨日、親しい同級生からLineが入って
そういえば、去年入院した病気って何だったの?と聞かれた。
もはや慣れてしまったから感慨もなく、ガンだったよ、と答えを返したら、
うちのお父さん(彼女の夫ね)去年胃の3分の2を切ったよ、と返信があった。

だから1家に1人はガン患者。ステージが若ければ治癒するし。さまざまなガンがあるし。
ガンは慣れるよ。

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夢の要塞?ー引退後の別荘地暮らし

おばちゃんはシニアの動画などをちょくちょく見るようになった。
日本の税制と年金制度を調査していた時に同じような年齢の同世代がどのように生きているのか興味がでてYoutubeで見てみたから。

40年務めた会社を60歳すぎに定年退職し再雇用で数年働き、年金生活に突入した同世代の人たち。夢見ていたキャンピングカーを買い旅に出る方。
あるいは生活をサイズダウンしてつつましく夫婦で生きる方。ペットと一緒にささやかな楽しみをみつけ穏やかに生きる方。リタイア後の生活に失敗しないための注意と計画もリストされてる。

中でもほんわかした人柄の動画をみつけ、毎回拝見していたのだが引退生活の注意6か条だか8か条だかを挙げられていた。しかしおばちゃんとおじちゃんの生活にはそれらがことごとく当てはまらなかったので自分で笑ってしまった。とことん道を外れて生きてきたのだと思った。

よくあるらしいのは退職した夫が四六時中家にいて妻のストレスがマックスになることらしい。おばちゃんたちは17~18年ほとんど夫婦別室で息をしたことがない。自営業のときは本当にトイレだけが別だった。リタイアしようがしまいが夫婦一緒に息してテレビはついているが、おじちゃんは自分のタブレットを見ながら私はthinkpadで好きにしながらお互いを空気のように生きている。

また引退後は孤独感を感じることがストレスになるらしい。
会社と会社の同僚らと切り離されて孤独・喪失感を感じるらしい。そんな時は、ボランティア活動をしてみるのも手。だそうだ。
おじちゃんとおばちゃんはそもそもそんな孤独を感じないので困ったわ。

親も兄弟も手がとどかないアメリカ大陸で、会社から首を切られればそれでおしまい。アメリカだろうが日本だろうが「国」なんかそもそもあてにしてはいけない。
周りは全部人種言語さえ違う他人。金は自分で稼いで家を買い担保を作るしかない。後ろ盾は何もなく三方は崖っぷち。自分とおじちゃんだけが頼り。
自営業時代にどちらも病気にならず、それだけは本当にラッキーだった。

“引退した後に孤独を感じた時、誰も知らないところへ飛び込むのは勇気がいりますが興味のあるサークルやボランティアをのぞいてみてはどうだろう?”
孤独?勇気?何の話だろう?
ここは縁も地縁もない別荘地。日本で買った携帯の住所録はほとんど真っ白。
それでも行きかう人は日本人で日本語を話しているではないか。すごいと思う。み~んな日本人なんだぜ。やりたいことがあれば説明会や申し込みに行ってみる。コンビニで買い物と変わらない。

ところで、この前、お向かいのおばちゃんとお茶をしていて、コロナも終わったし旅行に行くならカッパドキアに行きたいといった。カッパドキアの乾いた草原にある岩の家はおばちゃんの魂の要塞だ。
帰国前に家を探すときに偶然開いてしまった旅行ページにはカッパドキアの岩の遺跡が映っていた。
草原に散在する巨石遺跡のような白っぽい岩。岩は人の手によってくりぬかれて中世人の住居だった。その家を見た瞬間、おばちゃんは「住みたい!」と思った。

頑丈な岩盤に“建つ?”不況不屈の家
火にも雨にも地震にもびくともせずドアを閉めれば外界を遮断できる要塞。子供のころからこんな要塞が欲しかった。

中東での駐在時代もあったお向かいのおばちゃんは、あなた変わったところに行きたいのねぇ?私は行ったことがあるけれど、とても興味深いところだったわ。

遺跡の案内人の言うには、他の部族の襲撃を想定して石の家にはあちこちに抜け穴があり、こちらの方面から襲われたときは、こんな落とし穴、こちらの方面なら通路に岩を落とすというような仕掛けが施されていたの。岩の家は常にだれかの襲撃に備えてできた家なのよ?

あは!
まさにそれがおばちゃんの夢見ていた理想の家。
外敵を打ち防ぐ仕掛けを付けた魂が安らげる要塞。住んでみたい。カッパドキアの岩の家のドアをくぐって、おばちゃんは一体何を感じるだろう? 昔の住人の憂いかそれとも安らぎか。

おばちゃんのこれまでの人生のポリシーは
生き残ること
家族が幸せに生きられるために戦うことーーだった。

伊豆の山に買ってしまった家は藁の家だった!笑
巨大地震が来たら一発さよなら。ただ、昔からおじちゃんの夢だった“自然に囲まれて自分で育てた野菜で料理を作って食べる“が実現できて幸せ。
日本では自然災害の他に襲ってくる敵は税金の徴収くらいだから、藁の家を石の要塞に作り替える必要はないかもしれない。

老後というのは自分の人生の集大成だわ。
意思を持ち始めてから自分が決断してきた何億回もの決断の集積が今の老後なのだろうと思う。夢を実現したければ夢のために戦うしかない。

おばちゃんには「うらやましい」という感情があまりないらしい。
ひと様の動画をみて人様の人生がうらやましいとか、人に憧れるという感情がわかない。どこかですり減ってしまったのか捨ててしまったのかわからないが。

動画のコメント欄に「あなたがうらやましい」などと書いてあると正直わからん!と思う。

米国年金生活者のリタイア生活

懐がちょっと暖かくなったら猫の紫音がまた調子を崩した。
テン・ジュニアをワクチン接種につれていったら、一人で留守番をさせられた紫音がショックだったみたいでその日からひどい下痢。

次の日には紫音をクリニックに連れて行き、腸内に悪玉菌が繁殖してるそうであった。ストレスが原因らしい。下痢止めと整腸剤を処方されてヤレヤレと思ったら、今度はテンが下痢をし始めた。またクリニックである。用心のために詩音をお留守番させず別のキャリアで連れて行った。

獣医さんは、テンちゃんに移りましたかね?と言ってテンにも整腸剤を処方された。ここ1か月クリニックの常連さんである。検便、点滴、注射、薬に時間外診察料で何枚も飛んで行った。

おじちゃんは毎月振り込まれる米国年金にやっと心を許したか、ATMで頻繁にキャッシュを下す。カードより現金のほうが使用感が嬉しいらしい。

テンは4か月を迎えてやっと1.4kg ここのところの下痢続きで体重増加が停滞している。サイズは普通の猫の2か月サイズ。大きく元気に育ってくれるかしらん。

就職のための健康診断は自費だった。これって普通なの?
心電図まで入ってて夫婦二人分。次の日は車検でまたごそっと出て行った。

寒さが緩んで灯油代は少なくなったが、今年は去年の倍ほど暖房費がかかっている。参考までに灯油代はリッター100円前後で12月1月はそれぞれ3.5万ほど。5日に一度2缶から3缶を補給する感じ。山地は冷えるんだ。子猫に寒い思いをさせられないからね。

そのうえ、テンの毛布やマットの熱湯消毒や洗濯でまた盛大にガスと電気を使った。楽天カードの3月の支払いは平常の2倍だ!2倍! これから暖かくなっていくのがうれしい。

庭に植え付けるお花は春先が一番費用が掛かる。
苗、種、肥料、園芸土、DIY用素材にペイント。家の前を散歩するご近所さんのために寄せ植えを植え替える。楽しんでいただけると嬉しい。

リタイヤ後に全く予定が入っていないと曜日を忘れてしまうのよ。これはホント。
まいにち日曜日だから。
何かに追われることもなければ、せかされているわけでもない日々は穏やかである。幸せだと思う。

9時20分に出勤して確実に利益を出して従業員に給料を払い、税金を払い、ローンを払うプレッシャーを二度と味わなくてよくて幸せ。

声を出しても隣のうちに聞こえる距離でない山で、自家製の大根とブロッコリーを収穫して、気が付いたらできているシイタケを薄切りに汁にいれる幸せ。
2匹の猫が家じゅう追っかけっこをして平和に日向ぼっこしながらお互いを舐めあう。
リタイアして田舎暮らしの夢がかなって幸せ。

お庭を宿根草が咲き乱れるお庭にしたいのよ。
ガウラをメインストリートの両側に茂らせ、ピンクのダーラがレンガの上に咲きこぼれる。ブルーセクションはデルフィニュームとペンステモンを咲かせたい。雨が降ったらブログを書いて、プログラミングの勉強を始めたい。

2週間前の血液検査はがんマーカーはCEAとCA-19ともに陰性だった。
ビルビリンの値も正常。コレステロールも正常値に下がったのを確認したら、主治医がもう一枚の検査コピーを出してきた。

Dupan  
Span と書いてある。
この二つのがんマーカーは結果が出るのに時間がかかるので、前回3か月前のものです。
ほ~ん?!
二つとも数値は正常値に収まっているようである。消化器系のがんマーカーによく使われるCEAとCA-19は100%確実ではなく、陰性でも再発例があるようだ。
こんな隠し玉がまだあったのか。毎回がんマーカーを4つもチェックするのか?!胆のうがん、油断がならんのう。

おばちゃんも少しは欲が出てきた。
年金は振り込みされるようになった。ガウラの小道はまだ完成していない。テンもまだ小さい。おじちゃんの血糖値も高めなのでいい病院を見つけねばならない。幸せな生活をもう少し楽しみたいと、人差し指と中指をそっと重ねるのだった。

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