裏山を箱根・仙石原に向かって車を走らせていると、アイ子ちゃんが
で、そのご体はどうなの?とストレートをかましてきた。
ん~、今んとこはガンマーカーも上がってないしCTの画像に怪しい影は見えないよ。
術後一番危険な2年は過ぎたね。
なぜか最近の検索で調べると胆のうがんステージ2の5年生存率が60~65%に上がってきたのよ。手術前後は同じガンセンターの統計で生存率が27%~30%だったのにさ。
これは治療率が上がったというより、統計の集計例が変わったんだと思う。
胆のうがんはもともと症例が少ない。患者数は年間で1万7~8千人で治療する病院がすべて統計をあげてくるとは限らないしね。
10年の生存率はChatGTP もGeminiもほとんど同じ文面で、気の毒ですがステージ2の10年後の予後は3割を切ります。詳しくは専門医にお尋ねください。と返答する。
ウチのタヌキ主治医はというと、自分の切る年間の胆のうがん患者は10~12例しかないのに、(病院のウエブの肝胆膵 外科における治療例にはちゃ~んと患者数が載ってる)
先生の患者の転起は?生存率は?とおばちゃんが一度聞いたとき、
あ~~、僕わかんない、切るだけで精一杯。術後の転起まで追っかけてらんない。とはぐらかされたしねぇ。
な~にがわかんないだよ、年間10人しかいないのに。
このタヌキ主治医は患者が一番知りたいことを一番教えたくないのだ。
理由は明白:そんなことを知ってどうする?と。
もうすぐ外科部長という肝臓・胆嚢・膵臓のプロは、数百人の症例経験があるわけだ。
胆石のつもりだったのに切除した胆嚢は、機嫌の悪い灰色の髪を振り乱したフジコ・ヘミングウエイみたにおどおどろしく、病理に回したらガンだった。
ガンの分化度と悪性度の報告を受けて、おばちゃんを呼びだし、メスをもって腹を再度開いて肝臓とリンパを切除し、胆管、十二指腸その他臓器への浸潤はないか転移の見落としが無いか、この人が自分の目で確かめたのである。
検索をかければネットにはガンの外科医のリポートが転がっていて、ガン切除の予後は自分の経験では患者の筋肉量が物を言うと述べてあった。末期がんになると予後の“長さ”は脂肪量に比例するそうである。
おばちゃんはタヌキ主治医がキライではないので生存率を問い詰める気がない。
――腹を開けた時の感触でいうと、んまあ5割くらい行けんのと違うかな?10年はどうかな?う~ん、あくまでカンみたいなもんだし、そんな事患者さんに言えるかいな。――
てなところだと思う。正直に言ってそれでどうなるという話である。患者さんは幸せになるのか?という話である。
患者にとって幸せなこととは何か?
おばちゃんが最初の内視鏡で胆のうを切除した後は、これで痛みに怯えることなくヤマザキの雪苺娘を好きなだけ食べられるから、憂いが無くなり幸せだった。
3週間の間は。
この時が一番幸せだったわ。
術後3週間目のフォローアップで、切除した胆嚢がガン化していたから再度開腹して肝臓の3分の1とリンパを切除すると言われたときは、世界がガラガラ崩れた。
世界が変わってしまったのでおばちゃんのライフ・プランもAとプランBの2頭立てとなった。以降2頭立てのママである。とりあえず緊急性も無く苦痛も無い時期が長い方がシアワセではないか。知らない時間がよりシアワセな時間であるよ。
2週間前はCTと血液検査だった。
CTは撮ったイメージが外来のコンピューターに回るまで2時間以上かかるのだが、意外に早く診察が回ってきた。最近は待合室で呼ばれるまでの間にあまりドキドキしなくなった。
血液検査を手に取ると、CAとCEAのガンマーカーは正常、貧血はなし。栄養失調も脱出。あ~、数値はOKみたいですね。とおばちゃん。
すると、主治医が、あれ、そういえばCT撮りましたっけ?今日。CTだ、CTだ
と机のモニターをスクロールする。おばちゃんの腹の輪切りが猛スピードで上下する。
そんなスピードでは怪しい数ミリが見つからんだろうと、おばちゃんは内心思いつつ
いや~先生、CAと CEAとこないだの Dupan とSpanのマーカーも異状がなかったんでしょう?だったら大丈夫でしょ?
だって、病院のCTの画像度は3ミリ単位でおっしゃって、すると3ミリを超えて成長した細胞じゃないとCTに映んないだから。だから映るくらいに成長している4ミリの転移があれば、4つのガンマーカーのどれかは異常値がでますって。
するとタヌキの主治医が、そういわれるとそうなんだよな。ん~、じゃあ今回も逆流性食道炎の薬を出しますか?と聞く。
先生、それがですね、私ここんとこ腹筋を鍛えてまして、ある程度腹筋がついたんですよ。
そしたら、なんと!胃液の逆流がすこし収まったんです。
先生に聞きましたよね、胃の括約筋を鍛える方法は無いかって?
胃自体はやっぱり無理ですけど、胃の上に筋肉をつけたら胃液の逆流がすこし収まりました。
へぇ~?!そう?
おばちゃんが腹筋を鍛えているのは、ガンの再発を防止するためではなく下っ腹が出てしまってジーンズがぴしっと履けなくなるのがイヤなのである。ジーンズの流行はローライズからハイライズ、ミッドライズに復活してきて、一番好きなブーツカットをまたかっこよく履きたいというのが一番の目標である。カッコいい婆さんになるのだ!
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