アメリカ側の温度

おばちゃんは弁護士でもないのに、なんでそんなにビザに詳しいんだ。

詳しい?って、アメリカの大地に入国して息をしていいかどうかは、ビザによるんだ。

それは何十年とアメリカで生活していれば、知らない間に身に沁みつく知識である。
毎週発行されるローカル新聞と、月に2回発行される日系のマガジン2誌には法律コラムが必ずあり、そこにはビザ法が変わったとき、あるいは困っているときの相談などが載っている。目を通すつもりでなくても嫌でも目に入ってくるのである。

パスポートの延長手続き料金が上がったなどというニュースは、新聞雑誌の情報と口コミで瞬く間に広がる。えっ?高っか!親子4人で、いくらかかると思うのよ。親族の永住権の優先順位が変わったとなると、日本の親を何時呼び寄せられるかどうか影響してくるので真剣になる。

自分がアメリカの大地の上に立って、息をして許されるかどうかはビザにかかっているのだ。毎年変わる移民法の条件は人生に直結してくる。これは永住権が取れた後でも安心できない。市民権をとってアメリカ人になって、初めて移民法から自由になれる。

ESTAでアメリカ・テリトーリーに入国して、入国後90日目にまだ息をしてたら、確実にオーバーステイになって次は入国できなくなる。

アメリカ国内で、留学生です、ったらF1に決まってる。学生は卒業するからその前にビザを変更する。永住権や市民権をとってしまって居住している人なら、誰でも知っていることだ。OPTで就職なんて言葉はそれだけで間違っているのは米国在住ならすぐわかること。ところが誰もアメリカ側から発信して訂正しない。

一体どういうことか?

興味がない。

NY在住のメディア記者が「こちらではそんなに話題になってないんですよ」と返事をよくご覧になると思う。日本の記者が勢い込んでNYに電話をかけ、当てが外れるサマがよく想像できる。

そんな記事や画像に日本にいる皆さんもきっと「アレ?」と温度差を感じることと思う。その理由を解説しよう。

日系社会のピラミッドでも紹介した。アメリカの日系社会は一部を除いて生活に忙しい。外国で120%の力で生活の努力をしてる。コロナで経済的に生きるか死ぬか大変な時にロイヤルのニュース?

Yahooのニュースはもうヘッドラインしか読まない。だって、読んだところで自分の生活と1mmもすれ違うことがなかったのだ。年号は覚えられない、首相は誰だかわからない。

ポイントは、アメリカで永住権市民権をとった人たちは何かしら日本で生きずらかった人が多い。生きにくい国だった、日本は。アメリカの社会で生きたいと思った人達がアメリカで暮らしている。

だから、日本でのKKニュースはほとんどが興味ない。夫妻がアメリカに移住したというニュースは知っていると思う。その上で思うのは、日本が嫌で出てきた人たちはまず「ナカーマ」と思う。

だから、日本が嫌で出てきた同じ「ナカーマ」は別に排斥はしない。
ただ、生活に忙しいので別に援助もする気もない。自分の足でで立てなかったら日本へ帰れ-これが生活に忙しい永住権者、自営業永住権者、忙しい市民権者だ。

一部の日本人と日系が、アメリカに逃げてくるプリンセスを「かくまってあげよう」と思っているのだ。

生活に不自由がなくて時間が余っている人。もともと日本の風習考え方よりも、アメリカのほうが自由な国だと思ってアメリカに居ついているから。日本って生きにくいわよね。で、日本で苛められたのか、かわいそうに。と。

在米でもよく思わない人はいるだろう。自分で努力してお金を費やして何かを犠牲にしてやっと大学を卒業し、就労ビザを取り永住権をとれるかどうか、と苦労をしてきた人達にとって、KKはすごく”いい気な人”に見える。

現実には自分の努力と力でアメリカにやってきて生活している日本人は、マヌケはアメリカで生きていけないのを実感している。自分で自分の尻ぬぐいを自分できないような奴は日本へケエレと思ってる。わざわざ意見の発信をするだけの興味が持てない。

万が一お近づきになっても実力がない場合は見切りをつけるのは日本人より早いと思う。

以上の理由で、アメリカに住む日本人・日系人はあまり興味がないし発信が少ないのだと思う。わざわざ常識的な誰でも知ってるビザの知識の間違いを、訂正しようと思うのも面倒くさい。

留学生ビザから永住権まで 総集編

ビザのおさらいである。F1からグリーン・カードまで

留学生F1


小室圭さは2018年8月にフォーダム大学に入学した。
彼のビザ(アメリカの滞在資格)は学生ビザF1(エフ・ワン)である。就労は不可。

ただし、学校内に限り月20時間を限度として許されている。学校内とは何か、先生の雑用をやったり、学生課で何かをやったりという学校内だけのバイト。それ以外で就労すれば、不法就労で強制送還のリスクがある。
この就労不可のカテゴリは、大統領がイミグレに殴り込んでも変更はかなわない。

学生ビザというのは学校を卒業したら本国に帰国するのを前提にアメリカ合衆国から発行される。卒業をしたら、2か月のGracePeriod猶予期間があって、多くの留学生は最後にアメリカを見て回ろうと旅行に行く卒業生も多い。
西のカリフォルニアから東海岸のボストンまで1月かけて横断したという猛者もいた。

OPT


しかし、日本に帰国したくない。アメリカに居たいという留学生のために実はオマケのプログラムがついている。利用するならイミグレに申請して許可を取らねばならない。
学校の卒業年度に移民局(イミグレ)にOPT(オー・ピー・ティー) Optional Practical Trainingを申請する。申請して認められれば、実際の企業で自分が学んだ同じ専攻の研修トレーニングが1年できる。

2021年春、小室圭さんは学校を卒業(いろいろの疑問はあるが)OPTを申請し許可された。通常このOPTの期間は1年である。したがって彼の留学生ビザのOPTトレーニング期間は2022年5月まで有効である。

このOPTの延長が効くのは4つの理科系分野の学生だけ。STEMというScience, Technology, Engineering and Mathematicsの4頭文字をとった分野。科学、技術、工学、数学はやはり国の礎になるような基礎科学なのでアメリカでも大事にする。

小室圭さんの専攻は法律であって、STEMではないので、OPTの延長は不可である。1年だけ。したがって5月に満了。
OPTでは給料が出るが、正規雇用と同じ額かどうかはわからない。OPTを受け入れる企業にもよると思う。
彼は確かにOPTで働いてはいるが、これを正規雇用だとか就職だという言葉を使うのは間違い。

OPTは1年で満了する。留学生ビザも満了する。2か月のGrace Period猶予期間をおいて生まれた国に帰国するということになる。

再びF1

OPTは1年ぽっきりだが、F1は延長できないのか?というあなた。
F1は学生ビザだというのを忘れてはいけない。学校で学んでいるから学生である。それはそうだが、が、F1ビザは7年まで有効ではないか?

それはその通りである。どうしてもF1ビザで滞在を延長したかったら=アメリカに滞在したかったら、別の学校に行く
イミグレから認定されている学校から新たにI-20をとれば次の学校の留学生としてアメリカに滞在できる。

が、ヘタを打つと、イミグレから日本に一時帰国して、新1-20の審査の間、国外待機せよ、と要請が来る場合がある。新規留学と同じなので、再度残高証明を求められて提出せねばならない。

むろん、新学校のI―20が却下されて、そのままF1は失効、アメリカ再入国がF1で不可能になる場合もある。かつてこれをトライした留学生からおばちゃんは残高証明の金を貸してくれと頼まれた。

留学生ビザの配偶者、子供はF2(エフ・ツー)である。F2ビザも就労不可。
アメリカで留学生ビザでいる限り、延長できたとしても就労は不可能である。アメリカで生きたいと思うならば、就労ができるビザに切り替えられない限り、いずれF1ビザは失効して不法残留になってしまう。
学生ビザを延長するということより、合法的に働ける就労ビザを取るしかない。

専門職ビザ H1B

学生ビザから切り替えられる就労可能なビザは限られている。
卒業後・留学生に一番ポピュラーなのはH1Bなのだが、これは応募の数が多すぎて半分抽選になる。宝くじと同じようなものだ。

専攻した同じ分野の企業でかつ留学生のスポンサーになってやろうという会社がある。これはオンラインでH1Bスポンサー・サーチがあるので調べられる。
できればOPTを申請するときにH1Bをサポートする企業であることが望ましい。OPTが終わる前にH1Bビザを申請してくれるからだ。

ただし、このH1Bは確実に取得できるというビザではない。何故ならあまりにも応募数が多くて、近年イミグレでは第3次抽選まで行われるので取れるかどうかあてにならない。
アメリカの法律大学に入学してアメリカで就労ビザを取りたいと思う学生のためのガイドがある。
https://www.nationaljurist.com/international-jurist/guide-us-visas-llm-students

永住権グリーン・カード


永住権(グリーン・カード)はどうか?
政府がやっているグリーンカードの抽選があるので、応募することはできるが、これも宝くじだ。あてにはならない。

永住権をスポンサーしてくれる会社はないのだろうか?
分野によってはないわけでもない。企業がスポンサーになって留学生K君がぜひ自分の会社業務に不可欠であるから永住権を出してほしいと申請することはできるが、アメリカ合衆国が外国人を雇ってよいとするのは、アメリカ人の雇用を阻害しない場合である。

どういうことかというと、アメリカ人にできないような技能をもった分野なら永住権が取れる場合がある。
かつて、グリーン・カードを取る一番の早道は寿司シェフになることだといわれていた。

アメリカ人には寿司の調理技術がないので、寿司シェフとしてで申請すれば競争相手もなく、アメリカの雇用を阻害することもないのでグリーン・カードが取れたのだ。

結果として、カリフォルニアのサーファー留学生が寿司シェフにトランスファーした。

小室圭さんのFordham大学の専攻は寿司ではないので、寿司シェフとして永住権は申請できない。

アメリカ弁護士事務所が、米国の弁護士(アメリカにうじゃうじゃいる)の雇用を阻害しない、例外的な技能を持っている外国人弁護士を雇う場合、小室圭さんの永住権を申請する場合があるかもしれない。日本語に堪能な弁護士ということで。

ところが、これは司法試験に受かった弁護士としての場合であって、残念ながら2022年5月終わりまでの時点で、小室圭さんはただのLaw School Graduate法科の卒業生 と確定しており、弁護士Lawyerではない。弁護士資格が取れるまで、法科の卒業生・小室圭さんに永住権をサポートするアメリカ弁護士事務所はない。

駐在員Lビザ


そのほかの就労ビザで小室圭さんが申請できるものはないだろうか?
ある。
Lビザ」駐在員ビザだ。このビザは日本と米国の2国間にまたがる企業の従業員のためのビザ
小室圭さんはFordham大学に入学する前に、東京の奥野法律事務所でパラリーガルとして数年働いていた。
この奥野弁護事務所がニューヨークに出張所、支店、支部所でも置けばLビザは非常に簡単である。

東京の奥野事務所のWebをチェックしても海外の拠点は2021年時点では存在していなかったが、たとえ従業員が一人であったとしてもニューヨークに事務所を開設すればLビザを申請できる。


奥野法律事務所が新支店に資本を投下するとか、名前を使うとか、あるいは別会社であっても協力関係を整えるとか別会社の中に、奥野部門を開設するとかすれば容易にビザが取れるだろう。

5月にF1が失効してしまってからではビザ変更手続きは困難になるので、とっくにビザ変更手続きを始めているのではないかと推測している。

Lビザは駐在員ビザで弁護士免許があるか無いかは全く関係ない。2か国にまたがる企業の業務をする人員であるので、弁護士である必要もない。配偶者はL2。イミグレに就労申請し許可されれば就労が可能だ。

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