アメリカで訴える1

弁護士のフジツボ村
それはビジネスが安定し始めて、3年ぶりくらいに半日休んで友達の集まりに出たのであった。自分にご褒美を上げるつもりで。そこで、友達の顔におかしな斑点があるのに気が付いた。勘のいいひとはお分かりだろうが、レーザーである。

日本人は頬・かん骨部分にシミができやすい。美白クリームを試すより、レーザーで焼くのが手っ取り早い。ただ、おばちゃんはその時初見でなんだろうと思ったのである。まずいくらか値段を聞いた。友人は顔全体で$350。カサブタが取れれば赤ちゃんのようなピンクの肌に戻るの!私は早速電話番号を控えた。

次の週に紹介されたエステで施術を受けた。ところが、カサブタがとれたにも関わらず、ピンクの皮膚でもなく薄茶色の肌が見えるばかりである。ダウンタイムがあるから、しばらく待たねばならいそうだが、。結論から言うと、シミはとったがその痕がレーザー焼けで色素が沈着してしまったのである。
Pigmentationという。

おばちゃんはいろんな薬や美容液を試したがついにUCLAの皮膚科の専門医に行った。大損害だわ。調査して分かったのは、カリフォルニア州でレーザー器具を操作できるのは医師だけである。

つまり、施術者のエステティシャンは、もぐりでレーザー治療していたのだ。おばちゃんはエステティシャンの監督庁California Board of Barbering and Cosmetologyにクレームをファイルしたのであったが、はかばかしい返事が来なかった。

CBBCはほっておいて、おばちゃんは弁護士を探し始めた。Medical Malpractice専門の弁護士である。
例によって、友人の弁護士に聞くと一人紹介してくれた。地図のプリントアウトを頼りに探すのだが、該当の番地の枝番がない。

おかしいなぁ、間違ったかな?おばちゃんは何度も弁護士事務所に行ったことがある。どこも、高層ビルか高級テナントに入っていた。
通りは住宅街で目に入る限り、玄関に芝生1階か2階建ての民家。どこにもビルがない。ぐるぐる回ると商業用ビルが見つかった。駐車場に止めて、とりあえず番地を聞いてみようとした。

クリニックのような作りだ。古い。ドアを入ると、驚くべきことにそこは本当にむかし歯医者かなんかクリニックだったようで、まさに昭和のお医者さんのようにすりガラスのちっちゃな引き戸の窓があり、まぎれもなくAttorney At Aawと書いてあって。超混乱しながら引き戸を開け、誰かいませんか?と呼ぶと白人のおばちゃんがハァ~イと出てきた。

おばちゃんにこの住所を探していると尋ねると、該当の場所を教えてくれた。指示通り車を走らせると、そこには。通りの両側は突き当りまでず~と、先ほどと変わらぬ住宅街である。

さっきは気が付かなかったが、それぞれの家のフロントの芝生には全部看板が立っているのだった。
Attorney ,, Law Office, Lawyer, Leagal Servies,,,,見渡す限りの民家はすべて弁護士オフィスであった。ひええっ!

時間が迫っていたので、家?(オフィス)に入るとリビングにテーブルが一つ電話が一つ。白人の秘書がいた。あなたの予約はスーザンだから右のドアを入ってね。もとはクローゼットだったのではないかと思うちっちゃなオフィスにはスーザンがいて私があれこれ事情を説明していると、

天井でゴンゴン足音がする。二階の弁護士。
スーザンは始終キリッっと背筋を伸ばして話を聞いてくれたが、残念だけど、ウチはそもそも1万ドル以下のケースは扱わないから。1万ドル以上のケースに沢山恵まれているようには見えなかった。

二階のベッドルームは2つか3つ。3人から4人の弁護士が一軒家をシェアし秘書を共同で雇って玄関に看板を出しているのか?
一歩家(オフィス)を出ると、見渡す限り道路の緑の芝生の両側には似たような民家が通りのはしまで並んでおり、おばちゃんはそれらの白い家が、岩にへばりついているフジツボのように見えたのであった。

弁護士あるある

弁護士資格を持っていれば一生食っていける優秀な人、でもなければ、すべての弁護士が高収入でベンツに乗っているわけでもない。それは弁護士でも優秀な上位5%の話である。

アメリカの弁護士でオフィスは間借り、車はトヨタ。、いや仕事がなくてタクシー運転手をしているなどの下位もいるのである。

弁護士!と叫ぶ。
契約書を読んでも自分の立場が分からないと、まず弁護士に相談することから始まる。

ある会社は、日本の習慣だった住宅手当をそのまま持ち込んでIRSからそれは給料だろうと突っ込まれて、どうなんでしょうと弁護士に詣でる。

ある人はビザのトラブルで、LAの有名な弁護士TXXXHIを訪れると、デスクの上には本物の砂時計があり、TXXXHIは話を聞く前に砂時計をひっくり返した。この砂時計は私も見た!

斜め向かいはGoogleのビルという超お高いオフィスでOCの弁護士協会BarAssociationから選んだ弁護士は、私がプロボノのクライアントなので、わかったようでよくわからない回答をして、早く切り上げたいのが見え見えだった。プロボノでなかったら10倍の料金が取れるから。

友人はある日曜の朝突然、自宅に引っ越し屋が現れて寝ぼけている顔に奥さんから”私、離婚したいの”と言われた。あれよという間に3人の子供と家具家財が目の前でどんどん運ばれ思考が停止した。次の日、離婚弁護士に電話を掛けて7時間も話を聞いてもらい、1週間後に電話相談の$20,000の請求書を受け取って、さらに呆然とした。

おばちゃんが怪我で入院中の知り合いを見舞って、地下のカフェテリアに寄るとジャケットを着た男が、いろんなテーブルに止まって立ち話し、何かをテーブルに置いて次のテーブルに向っていた。
弁護士である。

入院するほどの怪我だと、車の保険とか相手方とかディープ・ポケットが狙えるのである。

law

ひどい弁護士になると、莫大な弁護士請求書の明細にランチや朝食のドーナツ代などが含まれていて、なんだぁランチまでぇ?弁護士はシレっと、問題を解決するために自分の時間を費やしているのだから当然だと開き直る。

シャークだのスクルージだのぼろくそに言われ嫌われるのも弁護士である。血管をたててアメリカをダメにしたのは、弁護しだ!と真顔で力説するアメリカ人のおじちゃん。
ところが、身内家族が弁護士になると、ころっと評価は変わって、息子よ、よくやった!と父ちゃん喜ぶ。弁護士あるあるである。ウチも息子にほしい。

弁護士の敵は弁護士である。やわで経験が浅い弁護士が クライアント客に書いた婚前契約/プリナップ(Prenuptial Agreement)をカミさん方のタフな弁護士に破られてクライアントはカンカン。”あんたはこの契約書で大丈夫だと言っただろ。みろ、彼女に半分財産を持ってかれたじゃないか!”

カミさんが雇った弁護士費用もダンナが払うのである。泣くしかない。
ウチ(法律事務所)が書いたプリナップは破られません!最強です。
プリナップならXXX法律事務所へ。 
弁護士広告である。

知り合いは知らずに入居した家の大家が弁護士だった。トラブルが発生したとき、知人弁護士に相談した。ところが、通常の賃貸契約に見えた契約書はよく読むと、大家側が何でも好きなようにできると書いてある。

ムリ!都合7人の弁護士が契約書を読んだが、みんなサジを投げた。大家は現役LAの弁護士で、彼女の父は大きな不動産を経営するしかも引退したLAの判事だった。ムリ。彼女らの経験の粋を凝らして作成した契約書は鉄壁だった。

おばちゃんも何度弁護士!と叫んだことか。どこのナニ専門の弁護士か?
強ければ料金は高い。専門が広くてなるべく自分で払えそうな弁護士を探すのだ。

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