海外から猫を連れて帰国する

IDチップ

アメリカからペットの猫を日本に連れて帰るにはかなりシンドイ手続きがいる。ポイントはIDチップとワクチンと時間だ。
猫を連れて日本に帰国することを考えておられる方がいたら参考に手順を書いてみたいと思う。

ナナちゃんと八助は生後6週間でAVIDのマイクロチップをうめこんであった。定期検診やワクチンの証明書など
生まれてからのすべての診療記録も保存してあった。追加の狂犬病のワクチンは一度だけ、時間についてはかなり順当に連れて帰れたと思う。

帰国を思い立ってもIDチップも狂犬病ワクチンの証明書もなければ最低8か月の準備期間をみておかないと時間が足らず連れて行くのが難しい。ふと帰国を思い立って連れて帰れるものではないので米国でペットを飼っている人に警告しておきたい。

日本語でも英語でもペットを日本に連れて帰るための手引き書があるの。どちらでも内容は同じだが、最新版の日本語版は用語が日本語化されているので英語版と突き合わせて読むと理解が深まる。

第一段階 IDチップ/マイクロチップ


手引書にもあるがまずIDチップの埋め込み。IDチップを打ちこんで初めて固有ペットの特定ができる。例えあなたの猫が毎年3年ごとの狂犬病のワクチンを打っていてもIDチップが入っていなけれそれまでのワクチンは無効である。

IDチップを打ってからワクチンの2回接種がいる。IDチップの打ち込みと同時に最初の1回めのワクチンを打つことは
認められている。

成田の検疫で要求されるIDチップはISO規格である。もし、これからIDチップを打つならISO規格かどうか確認し、
そうでないならISO規格のIDチップを打つVETを探す。

検疫にはIDチップを読み込むスキャナーがあるがISO規格だけではなく米国内で使用されているメジャーなIDチップはカバーしている。成田検疫のスキャナーのモデル/種類は検疫でリストが公開されている。

しかし、2000年の初めのころにウチのナナちゃんと八助に打ったIDチップはISOではなく当時アメリカのメジャーではあったが成田のスキャナーで読めるかどうかは100%の確認が取れなかった。最後の1年は日系の獣医に変え、彼女のスキャナーではウチの子2人ともスキャンできたので、成田でもたぶん大丈夫だろうと言うことだった。

IDチップがISO規格でなくて成田のスキャナーで読み込み可能でない場合、読めるスキャナーを自分で持参し成田に携帯することが可能だった。

もし、すでに埋め込んでいるIDチップの規格がISOでなく、成田の検疫のスキャナーが読み取り可能かどうか確信が無くかつ、読み取り可能なスキャナーを米国内で手に入れることができない場合新たにISO規格のチップを埋め込むことは可能だが、その埋め込みから2回のワクチンを打たねばならぬことを理解されたい。

つまり過去に打ったワクチンはカウントされない。あくまでもIDチップにひもつけられたワクチンが2回接種が必要なのだ。

おばちゃんは念には念を入れてスキャナーを持参しようと思い調べたが、二人に打ち込まれたIDチップの会社は
新規スキャナーの製造をすでに中止していた。
だからEbayで昔の規格のスキャナーを2回購入したのだが、どちらもナナちゃんたちのIDは読めなかった。

日系獣医はまず大丈夫だというのだが、もし成田のスキャナーがIDを読めなかった場合は、読めるスキャナーを手に入れるまで検疫に収監されるか、あるいはすでになくなったアメリカの家に送り返されることになる。
そんなことになった、らおばちゃんは成田検疫の軒先を借りて首をくくるつもりだった。

ワクチン

IDチップの規格をクリアしたら次は狂犬病のワクチンである。狂犬病のワクチンにも規定がある。過去の射ったワクチンのCertificateを確認してみよう。そこには
ワクチンの種類
ワクチンの製造会社
製造ロット番号などが記載されているはず。

この中で一番重要なのはワクチンの種類である。日本国が受け入れるのは、
inactivated / killed virus vaccine あるいは
recombinant / modified vaccine のみ。

Certificate上のワクチンや製造会社によっては種類の表記が違うことがあるのでVetにワクチンがActiveかInactiveか確認を取ろう。もし、Activeワクチンを受けていたら日本では入国が許可されないので帰国を遅らせInactiveワクチンを射ちなおす。

定期的にヘルスチェックとワクチンを受けている場合なら1年-2年前のワクチンを一回目とカウントし、帰国年に2回目のワクチンを射つ。そして狂犬病の抗体検査を行う。

最新の入国手引きによると、2回目のワクチンと同日同時に抗体検査のための採血が可能になった。抗体検査は日本が認める米国内の機関(私の時はカンサスだった)でないと認められない。この機関リストも手引書にリンクがある。Vetのクリニックが日系であれば、間違えることは無い。

抗体検査の結果、抗体値が0.5IU以上あれば条件をクリアである。抗体検査のため血液を採取した日を0日として
180日の待期期間が始まる。180日以降に出国日を設定せねばならない。

警告


本来狂犬病のワクチンは3年に一度くらいの間隔で接種しているはず。Vetには最低1年の間隔を空けるように接種を推奨されていると思う。
何故なら1年以内に複数回の狂犬病のワクチンを射つとワクチン性の癌が発生する危険がある。

隣のジャネットは猫のスーキーに定期的にワクチン射っていたがCertificateをちゃんと管理していなかった。
猫の具合が悪くなり、行きつけのVetはあいにく夏休みで別のクリニックに連れて行った。
そこでは、狂犬病のワクチンの接種済みを証明するか今この場でもう一度接種するかしなければ診療をしないと言われ、
仕方なくもう一度ワクチンを注射した。しばらくたって、猫のスーキ―の注射の患部は癌化し手術した。

繰り返すが、日本国の規格に合った2回のワクチン接種が証明されねばならない。Vetに接種された2回の内1回がActiveであったら日本入国はできない。

Inactiveのワクチンを2回接種して入国条件がクリアできる。1年未満の間にワクチンを複数回射ち直すことになる場合は、猫の健康に高いリスクがあることを認識されたい。

前項のIDチップでも、IDチップのスキャナーが手に入らずISO規格のチップを入れ直すことを考えておられる場合、
ISOチップにひもつけて短い時間で2回のワクチンを接種する場合もまた高いリスクがある。

この上記のトラブルと健康リスクを回避ためには、最低帰国時期を1年遅らせ帰国計画を仕切り直すことも考えに入れたほうがよい。

猫を連れて日本に帰国する時は、思い立ってチケットを購入して連れて帰ることは不可能であると思われたい。

少なくとも1年以上前から計画し日ごろから猫の診療記録Certificateなどを管理をしておくこと。
そして帰国年にはもし可能なら日系のVetに転院してワクチン注射、抗体検査と最後の健康診断を依頼すると安心度が増す。

届けい出書


180日の待期期間以降に出国のフライトを決める。
フライトの40日前になったら帰国予定の空港の検疫所に届け出書を提出する。
コンタクト方法は:NACCS、ネット、Faxどれでも可。入国予定の空港の検疫のコンタクトリストも掲載されていて提出書類のリストは同サイトからダウンロードできる。
提出書類は:届け出書 抗体検査証明書 ワクチン接種Certificates FormAC

この項のポイントは3つ
1)検疫にまず届け出書を提出しケースオープンするので 要求される書類を提出し
 (数回の送信返信があると想定されたい)
  最終的に届け出受理書を受け取ること。届け出受理書は飛行機のチェックインで見せて初めてペット搭乗が可能。

2)フライト予定日10日前からフライトの前までにUSDA Certifiedの獣医師で最後の健康診断を受けること。Vetのサインを忘れると無効

3)健康診断書と上記すべての書類を揃えてフライトまでにUSDAで 輸出書類の裏書スタンプを取得すること。スタンプが無ければ 書類は無効である。

それぞれのポイントを解説します
1)ダウンロードした届け出書に記入して到着予定の空港の検疫に提出するが、ペットが複数なら1匹につき1セットの書類を提出する。届け出書を提出した後、検疫から返信してケースがオープンする。検疫はワクチンの証明書、自分で記入するFormAなどを送るように言ってくるので書類を送信する。

FormCは最終の健康診断書だが、これはUSDA Certifiedの獣医である必要があった。かかりつけの獣医は資格があるかどうか確認してね。
現在、最終健康診断はフライトの10日前以内に行う。ケースオープンしていろんな書類を送った。何故か検疫からFormCを送れ!と言われた。

FormC/は最後の健康診断である。スケジュール的に30日も先。当然まだ診断は行われていない。
診察をしないペットに30日の先付け日付で診断書/FormCを出す獣医は米国(もしかすると日本にも)にいないが、
そこは日系の獣医に変えた利点で、同じ日系として説得した。

曰く、これは日本国検疫の予行演習であるので、形だけエンピツで記入していただいてサインはしなくてもいいです、と。
日本の検疫には:診察がまだなのでFormCにサインはできないそうですが、FormCはとりあえず項目に記入してもらって送ります、と送信した。

書類はアプルーブされ届け出受理書が送られてくる。届け出受理書はペットごとに受理ナンバーが振られ帰国予定の空港の検疫は、いつどのフライトでどんな猫が検疫に到着するのかすべての情報を持っている
ことになる。

フライト予定の10日以内に最終健康診断を受け、受理書とすべての書類をもってUSDAに書類の裏書スタンプ
をもらう。

フライト当日:チェックインで輸出許可と受理書を見せて搭乗。入国空港検疫は、届け出書にある猫の個体識別を
スキャナーで確認すれば、拘留期間なしで入国ができる。

念のためすべてのオリジナル書類とCertificatesはコピーを取り2セットのうちコピーは機内預けのスーツケースの中に。
オリジナルは手持ちで成田まで持参した。

USDAも日本検疫も役所であって国家の規則ルールで動いている。融通や例外は一切期待できない。USDAの裏書スタンプで失敗が無いように私たちはスケジュールを練った。

南加州のUSDAの窓口時間は月曜日から金曜日時間は7時半から11時まで 午前中のみ 予約不可
もし書類に不備が発見されても2-3日後に再度提出できるように
・週の初めにUSDAに行く
・週の初めにUSDAに行けるように、最終健康診断は木曜日から週の末に行う
受け付けは午前中のみなので、トラフィックで遅れたり迷ったりしないように前の週にEl Segundoオフィスまで下見に行った。

USDAの窓口の悲劇

USDAの受付で待っているときに私たちは恐ろしいものを見た。一番多い間違いはIDチップとワクチン接種期間を理解しておらずマイクロチップが入っていない時期のワクチンも2回にカウントしていたオーナーが多かったこと。

少なくとも3~4人は書類をチェックされた時点で返された。マイクロチップを入れてから2回のワクチンが必須だ。
マイクロチップの埋め込み=個体の特定特定の個体にワクチンを2回接種すべし。

健康診断をした獣医がFormCににサインをしていなくて申請書を突っ返された人、
玄関先で必死にVetに電話を掛けていたがVetが捕まらなかった。フライトが1日-2日後に迫っているのは他人にもよくわかった。
電話口でVetはもう帰った!と絶望的な返事を聞いたらしい。11時までにサインをもらってここ窓口に帰ってこられなければ、フライトをキャンセルするしかないのかも。

気の毒だったのはスウェーデンに出国予定の男性。届け出書に不備があってUSDA窓口の黒人のおっさんから
何度も突っ返されていた。
聞くともなしに聞いていると、これは可哀そう。窓口のおっさんに言わせるとスウェーデンの輸出届け出書が古い形式なのだという。最新版をダウンロードして書き直せと言っている。

スウェーデン人?はスウェーデンの検疫サイトでダウンロードできる書類をダウンロードしているので、そのほかに公開されている最新版フォームは無いんだ!最新版なんてどこにあるんだ!
と泣きつかんばかりに抗議していた。黒人のおっさんは国家の公式表明をするだけである。

窓口の書類チェックで何人も返されている申請者たちを見ると、皆必死だった。2017年当時、健康診断がフライトの1週間前で時間的余裕がほとんどなかった。
フライトが金曜午後か土日なら健康診断とUSDAの裏書とを実質の平日5日間内に収めねばならない。

もし、フライトを木曜日に取ったなら健康診断とUSDAは月火水の3日間で済ませねばならぬ。健康診断とUSDAのどちらか一つに不備があれ木曜のフライト/出国はアウトだった。
窓口に11時過ぎにやってきてすごすごと帰った申請者も多分多いだろう。
金曜の11時5分に窓口にやってきてフライトが週末ならアウト。

ペットを連れて出国するのは、ワクチンの接種間隔も待期期間も健康診断もUSDAも常に時間と
スケジューリングが大問題だった。

猫のキャリアー


航空会社のページにはペットを連れて旅行する場合の情報ページがある。

私の場合はフライトはJALで、JALの場合はペットのキャリアーは航空輸送用で飛行機マークがついていて、
キャリアーの中でペットが自由に態勢を変えられる大きさのキャリアーを要求していた。上記の規格のキャリアーを新規購入し、上下四隅を結索バンドで固定する。

航空会社にフライト予約を取った後、ペット輸送に関する誓約書に記入し送付する。キャリアーのサイズ縦・横・高さとペットの重量を連絡する。

当時JALではペットは客席内に持ち込むことは出来なかった。現在はコロナ禍なのでガラガラの機内にもしかすると
同乗できるかもしれない。ただ、緊張と不安で鳴くペットはほかの乗客の迷惑を考えると難しい。

90年代初め私が日本から連れてきた先代の猫は当時3歳で神経質な猫のために安定剤を飲ませていた。
航空会社の規則も緩くかったのだ。しかし現在は航空輸送するペットに安定剤を飲ませることは多くの航空会社で推奨されていない。窒息のリスクが高いので。

航空会社によりペットの輸送にかかわるルールは違うと思う。帰国予定の航空会社のページを参考にされたい。

費用
大雑把な帰国にかかる費用として2017年当時
一匹当たり
マイクロチップ埋め込み
+読み込みスキャナー(もし必要な場合$110-$130)
+ワクチン1回-2回分
+抗体検査料$350
+健康診断料
+USDA$121
+JAL$400
+AirFlight用キャリアー$26

帰国直後

母猫のナナと息子の八助はフライトの間お互い相手の声が聞こえるよう側に置くようにリクエストをした。
成田の検疫ではスキャナーも無事パスしてすぐ入国ができた。キャリアーの中にセットした飲み水は残念ながらこぼれていて輸送中に水分が取れたかどうかは不明。もし、日本の地方にさらに乗り換えで帰る方はトランジットの空港で
水が飲ませられる器具を持参すると良いと思う。

猫トイレは日本には持ち込んでこなかった。米国から楽天で猫用トイレと砂を購入して、一時落ち着く予定の
家に時間指定配達にしておいたので帰国してすぐ使えた。猫砂は日本製の方が臭いが少なくて優秀だと思う。

キャット・フードは帰国荷物で持ち帰ってきた。封を切らないカリカリ大袋と缶詰にオヤツを数袋。
届け出書を検疫でやり取りする間に封を切らない状態でキャットフードを持ち込むのはOK
と返事をもらっていたから。日本で販売されているキャットフードはほとんどがシーフード。チキンは数種類でターキーはほとんどないので要注意。持ち帰るなら大目に。

気をつけないといけないのは日本の気候/気温。我々は日本の大寒に帰国してしまった。
日本の家の暖房器具は灯油ストーブと炬燵だけであったので、カリフォルニア生まれ育ちの猫は寒さに震えあがった。
人間もだが。

もし、猫の健康を考えるなら日本の3月過ぎから9月ごろに帰国を計画することをお勧めする。特にショート・コートの猫は要注意。ナナちゃんは下毛がほとんどなかったので、寒さが応えるらしくコタツに潜ったまま出られず、トイレも我慢したので
膀胱炎になってしまった。低気圧と雨が降り湿度が高くなると体調を崩すようだ。

その後伊豆に住まいを定め、2年目くらいまでは、室内温度は20度を切らぬように温度管理が重要だった。
雨で気温が20度を切り、湿気で猫たちはてきめんにお腹を壊しナナちゃんは膀胱炎を発症した。

3年後にはナナちゃんのショートコートに下毛が増えた。とにかく日本の冬は寒い。5か月続く。
年齢が高い猫は大事にしてね。
あなたの猫も無事に入国できますように。2017年

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