夜明け前が一番暗い

おばちゃんは引き続き、US系でいろんな検索をかけていたら、驚きの統計やら変なものがひかっかった。

まず、驚きの統計から。
Covidではアメリカが世界で一番多くの犠牲者を出し、経済でも深刻な影響が続いている。
おばちゃんが去年のサンクスギビングの前に、カリフォルニアに出した普通郵便はいまだに着いていない。(Jan.30 22)

アイ子ちゃんから連絡を受けて、EMSで同じ書類を再度送った。町の郵便局ではアメリカ側で大変な滞納でているからEMSでもいつ着くかもわからないという。通常5日から7日で着くEMSが未だ着かない。アメリカからのクリスマスカードはクリスマス前に届いたのに、届けられたアメリカ側では処理ができないのだ。

アイ子ちゃんによると、息子が務める会社でも半数の人員が出社できずに人手が足りないのだという。感染の療養中か、待機中か、ワクチン未接種で待機か。

先の記事でアメリカも今が踏ん張り時だから。と書いたのだが「お前は日本でぬくぬくと暮らしているくせに無責任に、、」と思う在米の方が居られこともあると思う。

その方々には、明るいニュースかも。例の問題で検索をかけていたらひょんなことにUS Censusにぶち当たってしまったのである。いきなりグラフが!

アメリカで頑張っている皆さんにまず見ていただきたい。

グラフは月別のビジネス申請数の推移だ。
おばちゃんもえっと驚いた。
2020年がCovidで一番落ち込んでいるが、去年21年から今年の申請数はスカイロケットと言っていい。

Covidで社会の在り方が変わってしまったので、それを新しいビジネスのチャンスととらえる人もいるのだ。申請スタートしたビジネスがすべて成功すると確約されたわけではないけれど、過去15年の平均申請数の2倍近くのビジネスがスタートしているのは確か。

アメリカはとっくにCovidとともに活動し始めている。
アメリカの社会は10年くらいを単位に変わってきた気がするな。
のんびりした90年代、テロで始まった2000年代、リセッションを挟んだ2010年代、近年10年はセルフォンの10年。

新時代のビジネスがどんな分野と傾向なのか、Censusをもっと詳しく分析すればわかるかもしれない。

さて、その新ビジネスの台頭する場所だが、人口が密でアメリカの進化の最先端であった都市と州は残念ながら回復がまだ遅いようだ。

マップで寒色が濃い州はビジネス申請数が前年月よりマイナス
オレンジ色が濃くなればプラス

感染被害が最大だったカリフォルニアは-4.8 テキサスは-0.3 イリノイ-1,7
ニューハンプシャー+8.3アイダホ+5.7 オレゴン+0.9 バーモント+5 ミシガン+1.1 ニューヨーク+0.9ニューヨークは意外と頑張ってる。

カリフォルニアはまだ始動しきれなくて、オレゴンは好調なわけだ。昔からカリフォルニアからオレゴンにビジネス・チャンスを求めて移動する人はいた。Grays Anatomyでシアトルタワーは見慣れたものになったし。

アイダホは遥か遠い気がするが、ジャガイモ不足を考えると思い切ってアイダホで温かくなるまで働くのもいいかもしれない。

夜明け前が一番暗いという。今少し踏ん張ろう。

あとは出くわしたおまけのスクリーンショット。
誰かがこんなニセ・アカウントを作っていた。イカンですね。

ジャネット広報局

隣のベーカリーのジャネットおばちゃんは、ここのショッピングモールの私設・広報局だった。先代のベーカリーが、現オーナーのクルスに売る時、ジャネットも付いていた。先代からの勤めなので、テナントの歴代のオーナーも管理会社の従業員もすべて知っていた。

アメリカ人には珍しく、愛嬌があって親しみやすくモールのみんなから愛されていた。管理会社の前のマネージャー:ごうつくばりのアーノルドもジャネットには強く当たらなかった。ただし、おばちゃんはゴシップがチョコレートと同じくらい好きだった。

ヘア・サロンのサラの息子がスピード違反でポリスに追いかけられて、ショッピングモールに逃げ込んできて、サラのヘアサロンの目の前で逮捕された時は、一部始終をかぶり付きで見ていた。

サパー・タイムという食品ビジネスはオープン当時から不振で1年持たずある日曜日にトラックをテナントに横付けして、備品を運び出している現場にトコトコと見聞に出かけ、あの人たちSneakOut (夜逃げ)するんですって、と他のテナントに言いふらした。

金髪でブルーグレーの瞳に、いつも寝ぐせが突っ立っているくせ毛のショートヘアで、ポチャッと小柄だった。

ある土曜の昼下がり、帳簿をつけていた私。ウチは角地で窓の外は駐車場だ。その駐車場に、するっとパトカーが2台止まった。続いて覆面が一台止まった。車から制服が5~6人と私服が2人ほど降りてモールの正面に回った。おかしい。

私はフロントのドアを開けると、ポリスの後姿を観察した。ポリスたちは、ビル中ほどのテナントのドアを開け入っていった。1,2,3、4、、6番目のドアは鍼灸師のマイクのところだ。

私は隣のベーカリーに飛び込んで、ねぇジャネット、ポリスが鍼灸師のマイクのところへ行ったわよ。何だろう?
ジャネットは目を輝かせて、私に任せて!と鍼灸クリニックに偵察に出かけた。私は帳簿に戻ったが、ジャネットが戻ってきた。マイクが逮捕されたの!ハラスメントですって!はぁ?

外へ出てみると、モールのパーキングはエライことになっていた。クリニックの前にピカピカを光らせた救急車が止まり、クリニックから誰かがストレッチャーに載せられて運び出されてきた。

施術中の患者?はハリを突っ立てたままで、バスタオルをかけられていた。マイクは開けたまんまのドア元にしゃがみこんで、手は後ろに回されている。

うつむいた顔が歪んでいた。泣いていたようだ。ジャネットのおばちゃんは我慢できず、ずんずん歩いて泣いているマイクに話しかけ同情するようにハグした。そしてポリスとも2,3言話すと、また戻ってきた。
ポリスは逮捕したっていうの。でもマイクは何もやってないって言ってるの。それで私、マイクに聞いたの。ねぇ今どんな気持ちって?

逮捕されて泣いている本人に、今どんな気持ち?って聞くあんたの料簡が分からない。

次の朝、コーヒーを買いに行くとカウンターにはCounty Register。おばちゃんは頬っぺたをますますピンクにして夕べの7時のchannel 7ニュースでもやってたわよ。見た?長話をするわけにもいかないので、新聞を借りた。

マイクの鍼灸クリニックは、何回かポリスに不必要な肉体接触があったと患者から通報されていたのだという。リポートの回数もあったので、ポリスがオトリを送り込んでそのオトリがセクシャル・アサルトあり!とポリスに報告して突入となったのだそうだ。

運び出された患者がオトリで、刺したままの針は医師か鍼灸師しか抜いてはいけないんだそうだ。新聞にはマイクの妻の証言が載っていて、あの人は良き夫でありよき父なんです。セクシャル・アサルトなんてなにか患者さんの勘違い何だと思います。

ジャネットのおばちゃんは開店するビジネスに挨拶に行き、閉めるビジネスには寂しくなるわとハグしコロコロとよく笑いながら、ゴシップを話し
コーヒーを売るのであった。

馬酔木

伊豆の山の家の隣の地所には2mを超える馬酔木がある。
ほんのりピンクのベル型の花が、春に見事な花をつける。花穂を切ってかんざし代わりにしたのは遥か昔少女の頃だ。
馬酔木には毒があるので、素手でさわってはいかん。いたずらをせぬように表庭には植えず、裏庭に植えるのだ。と父から教わった。

サブプライムから始まったリセッションからようやくアメリカが回復し始めたころ、主人と私がやっているショッピングモールが、外観のリノベーションを決めた。こういう場合、アメリカのビジネスは休まない。
All businesses are open during construction というでっかいサインやバーナーをだして、顧客に知らせる。
経済が回復期にあるからこそ、ショッピングモールもリモデルをし競争相手に劣るまいと、改修工事があちこちで見られたものだ。

半年ほどで建物も駐車場も改装が終わったが、駐車場に植える木で大家が拒否権を発動した。若いオリーブを駐車場に1ダースくらい。店子の前に何本かStrawberry Treeを植える計画だったのだが、オリーブは大家には十分Fancyではなかったそうで、マグノリアに取り換えられた。

あの、風と共に去りぬのMagnoliaマグノリアか。多少ワクワクしながら待つと、何のことはないビワのような葉をした地味~な木だった。

店子には飛び切り大きいStrawberry Treeを選んだのだと言っていた。
植えられて初めて、Strawberry Treeが馬酔木だと分かった。日本と寸断かわらない馬酔木がアメリカにもあると知ったのが驚きだった。

さてその馬酔木だが、ベトナム人経営のネイルサロンの前の馬酔木は元気がない。気候が合わないのかと私はさして気に留めなかったが、。

ところで、ウチと隣のベーカリーは仲が良かった。毎朝、私はコーヒーと朝ごはんのペストリーを買って、ジャネットからモールのゴシップを聞く。ベーカリーは玄関が全面ガラス張りで、駐車場がすべて見渡せるので
モールで起こる事件はジャネットがすべて知っている。

お向かいのイタリアンが強盗に会ったときとか、タコ屋が元従業員に金庫の現金を盗まれたとか、ヘアサロンの従業員が駐車場のポールにぶつかって、ポールがギギギーバタンと倒れた場所が、ヘアサロンのオーナーのサラの車だったとか、、。

20年も同じベーカリーで働いているので、店子のオーナー達をすべて知っているのだ。そして、毎朝コーヒーを買いに来る店子のオーナーや従業員から新しいゴシップを仕入れる。

そのジャネットがヒヒっと笑って言うにはネイルサロンの前の馬酔木が元気がないのは原因があるのだという。

毎朝、ネイルサロンのベトナム人の女の子達がカップに入れた何かを木にかけているのだという。ジャネットおばちゃんは気になって、コーヒーを買いに来たネイルサロンの女の子に何をかけているのか聞いたらしい。

熱い湯だった。
なんでもベトナムでは馬酔木は縁起が良くない木なんだそうだ。イケナイ木が玄関にあるのが困るので、皆で湯をかけて枯らそうとしているらしい。

ケ・ケ・ケと思った。
私が知るころには他の店子のオーナーもほとんど事情を知っていたはずだが、誰一人として管理会社や地主には知らせなかった。モールのどのビジネスも、全面改装の工事の間は売り上げを減らした。

どんなに不自由や減収を訴えようが、家賃をビタ・1セント負けなかったのでみんな大家と管理会社を恨んでいたのだった。馬酔木はとうとう枯れた。

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