おじちゃんとの仲が険悪である。
理由はテンJr.がおばちゃんの懐で寝てしまったから。
テンは隔離のケージから解放されて、大興奮で家じゅう探索中である。人間も家具も区別なくよじ登って面白そうなものがあればカジる。テーブルの上の紫音のカリカリを見つけてカジる。アイ子ちゃんから届いた野沢菜漬けを油断したすきに一切れ盗んで逃げる。コタツ掛けのフリンジにぶら下がってカジる。
動き疲れるとパタッとその場で寝てしまうーー電池切れ。たまたまおばちゃんのダウンジャケットのあわせ目までよじ登ってきて、そこは柔らかいしあったかい。テンのあごをこちょこちょしたらコテンと寝てしまった。それをおじちゃんに見つかったのである。
おじちゃんは憤怒にかられたようだ。
俺が毎日カリカリを秤で計ってごはんをやって、お前のマットを毎日洗い、俺がケージを消毒して俺がトイレの掃除してやったのに、どうしておばちゃんの胸で寝るのか?バカ!テン。お前なんか知らない!紫音をおじちゃんの子にしちゃうぞ。
その日の夕食は冷え冷えしたもので、紫音に声をかけるときだけはネコナデ声であった。
四十余年間、おばちゃんが、猫をなでるときは、アゴの下から。喉、顔を撫でたいなら、額をこちょこちょ。真正面から頭にむかって手を伸ばすなーって言っているのに。おじちゃんは人差し指で猫の鼻をツンツンする。頭を掌でポンポンする。犬じゃねぇってんの。何度言っても治らない。
次の日も、テンはおばちゃんの胸に登って、一心不乱にフミフミ運動をしているのをおじちゃんが見て嫉妬交じりの悪意満面で、バカテン、お前なんかおばちゃんの子になれ。と抜かすので、
このフリースのセーターが好きみたいよ。毛足が柔らかくてふわふわするから母猫のおなかみたいに気持ちがいいみたい。
そっかぁ?じゃあ、俺もフリースのセーターにするかな。おばちゃんとおそろいのセーターがあるのである。
正常なアメショウの大きさの半分で体重も3か月でやっと1Kgになったテンは毎日58gのベビー用カリカリを食べる。400g用袋のロイヤル・カナンあっという間になくなるので、今日はまたペットショップに買いに行かねばならない。
怖いもの見たさでペットショップの販売中の猫を見てしまうと、テンより1週間も後に生まれたスコティッシュが、のびのびと大きく育って体長はどうみても3倍ある。おばちゃんは、うむ~と唸って目をそらした。
テンは3か月ちょうどでやっと1Kg超えたばかり。小さく生んで大きく育てるというではないか。大きい子は紫音に受け入れられるのが難しかったわけだし。騒ぐおばちゃんの胸の内であった。
紫音は吐き下しで点滴をされたことなどなかったように、表情も穏やかになって、テンの体を点検するように舐める。ご飯時にテンの隔離が間に合わず、紫音のウエットフードに頭を突っ込んできてかぶりついても、シャーと威嚇をすることがなくなった。庇護すべき存在と受け入れたようである。
テンは遊んでほしいようで、紫音の後を追っかけていき、紫音はシッポを膨らませて全力ではないセーブした速度で逃げる。
昨日の夕方は4時の遊べコールがなかった。
このまま順調にいってほしいと願うばかりだ。
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