人種差別

人種差別はあったかというと、いろいろ人間の区別もあったし、移民のうちらからすると、そんなことをいちいち気にしていられないというか、。
アメリカのメインストリームはやはり白人なので、訴えるにしても白人以外が白人を訴えるという図式がよくある構造だった。

デニーズで席に案内されるのを待っていて遅いから早くしてくれないといった中国系の男性にデニーズの従業員がそんなに待てないならお向かいのチャイニーズレストランに行けば?という発言をして訴訟になった。
デニーズに勝ち目がなさそうで何ミリオンで決着がつくのかという噂になったから、まともなアメリカ市民は人種差別を連想させるような表現は避けていた。

日系の3世のおばちゃんたちは他人種の客のことを
Who are they?とは聞かず
What’s language do they speak?と聞いた。
もし、口が滑ったらやられるかもしれない。

珍しい例だが日本の寿司屋が人種差別と白人から名指しされることがあった。経営者が日本人で、評判を聞いて白人が入ってくるとすし飯がなくなったから今日は店じまいというのだそうだ。オーナーに親しい人から言わせると、そんなことは一言も言ってないと否定するのだが。

アイ子ちゃんとアメリカ人のご主人が晩御飯を食べに行って、ご主人がカリフォルニアロールを頼んだら、オーナーが怒ってそういうものは置いてないと機嫌が悪くなったのは事実。

一番の人種差別・人間差別があったところ。
それは合衆国政府の役所:移民局だった。今思い出しても腹が立つ!

永住権の最終段階で移民局から指紋の採取に出頭せよとハガキが来て、LAの移民局の場所と日時が指定されていた。ほとんど着ることもないジャケットを二人で直用し、待ち行列が長いよと脅かされて2時間も前に到着したところ、3ブロックぐらい離れた専用駐車場から延々と色のついた人達が
歩いてゆく。誰もジャケットなんか来ていない。

政府のビルが見えてくると、人の行列がビルを何周にも取り巻いていた。おばちゃんたちは時間を指定してあるハガキを持っているので、迷わずビルを入り列の先頭に行こうとするのだが、まず、ビルの入り口で追い払われた。本当に追い払われた。

アポがあるのだとハガキを見せるのに、列に並べ。ハガキがあっても並べ。しっ、と言われビルを出されて今来た道を戻って、さらに道にまではみ出した行列の最後尾についた。

何度ハガキを見てもアポのハガキなのに。列はじりじりとしか動かず、追い出されたビルの入り口に再度たどり着くまで2時間かかった。

やっと内部に入ると、ゴールデン・ウイークのディズニーのようにロープを張り巡らして、その行列の先がどこの窓口に行くかもわからない。アポの時間は迫ってくるし、誰かに聞くための窓口に行くために、誰かに聞かねばならないのに、その誰かも窓口もわからない。

ロープで仕切られていないフロアを行列とは違う政府職員の白人が通っていくので、思わずロープをくぐって二人組に呼びかけたのが、驚くべきことに私は透明人間だった。
ハガキを見せているのにも関わらず、声をかけているにも関わらずまるっきり人間がいないものとして扱われたのは人生初だった。

屈辱に顔が赤くなって又行列に戻りさらになん十分も待って、最初の窓口についた。ハガキを見せるとオマエラはあっちの窓口と指をさされる。この時は腹が立つというより、早くアポに行かねばと焦っていてこの列に並べっといったのはオマエラだと言い返すこともできず。

ガラガラの窓口では黒人のおっさんと隣の窓口のおばさんが噂話か陽気に笑っており、誰も並んでいないのでおっさんにハガキを出すと、いきなり表情が変わって仏頂面になってなんだと顎をしゃくられた。


フン、指紋をとるから右手を出せいい、おばちゃんが手を出すと不潔なものでも触るように手首をつかみこのパッドに指を乗せろ、おばちゃんの指をつまんでインクパッドに押し付け採取用の紙にぐりぐりと押し付けるのだが、プリントの付き方が悪いらしく、チット舌うちをされた。

10本の指紋をとるのに、何度も舌打ちをされた。
アメリカに来て以来最も人間扱いをされてない不快な体験だった。この指紋採取が終わればおばちゃんたちは面接を免除されているので晴れて永住権が取れるのだが、隣のロープの中を延々と進んでいる色のもっと濃い人たちは請の過程、その過程で問題がある人、返事が来ない人、ステータスを聞くための人で、永住権からまだまだ遠い人達なのだった。

たまにその列の中に、白人と別人種の女性がカップルでいることがあり、その白人の男性が職員に聞いたり食って掛かったり、おばちゃんがやられたような透明人間の扱いではなかったが、やはりケンもホロロ、つっけんどんに扱われていた。

アメリカ人が他国人と結婚して移民局で妻の永住権手続きをしようと、政府職員とよくケンカになる。妻のことを人間扱いしないので口論になるのはよくある話だと知った。

この政府のビルの中では唯一はっきりしたルールは、窓口の中にいるのが人間、窓口の外に並んでいるのは人間以下。アメリカで永住権の申請過程にいる人はまだ人間ではない。

移民局での経験を経て永住権を手にしたが、アメリカ人と同等になったわけではない。法的な身分は持てたが、
今度は別なハードル:


へたくそな英語、なまりのある英語、教育程度、
社会的な信用度、安定した職、資産の額、自宅


などの人種以外の壁が立ちはだかっているのだ。それらのハードルを戦って超えていくことがアメリカで生きていくことだった。

アメリカ社会での生活が長くなってくると、小さなことは気にしていられないが、相手をみて言葉尻をとらえれば訴訟に持っていけなくない場合もあることに気づく。それをチャンスとして考えるかは人それぞれ。

デニーズの件もそうだ。
実際向かいのチャイニーズレストランに行けば?というのは人種差別というより待てないお客に嫌味を言ったというレベルだが、相手が全米チェーンのレストランでDeep Pocketだと思えば一つやってやろうかと思うのも理解できる。
別に中国人だから中国レストランに行っておかしくもなんともないが、嫌味を言われて相手が白人で自分が黄色なら人種偏見だとゴネられると思う。相手がパパママレストランなら大した金が取れないなら誰もやらないだけ。

アジア系の人口が多かったけれど、裕福で安全な街だったので、ひどい差別があるというわけではなかった。貧しい南部の州などはアメリカのもっと深い暗部が潜んでいたであろうとは思う。

  • footer