素人経営者の告白 ビジネスシュミレーター

21世紀が始まってすぐおじちゃんの会社が日本に撤収すると決まった。
おばちゃんは独立のためにビジネス・モデルを設計し始めた。何せおばちゃんは1つの店舗を経営したことは一度もないので。

ビジネスはロケーションそれは事実だが、いいロケーションは店舗もレントも目玉が飛び出る価格。おばちゃんたちには到底手が届かない。では、うちの資金で可能な手ごろな物件は一体どのへんなんだ?

エクセルをひっぱたきGoods of Sale 物品コスト、原価率、月のレント、人件費を変数にし予想セールの金額を変えて入力していく。逆にセールの額を一定にして、原価率、人件費を変えていく。客単価を5ドル刻みで変えて入力し、予想される一日の売り上げをシュミレートする。
税引き前利益NetIncomeがどれだけ残るか、損益分岐点Break Even Pointはどこか?

具体的な数字としておじちゃんの会社が仕入れていた当時のインボイスやバイト先のインボイスも経費の参考にした。テナントの広さによって冷房費Utilityはどのくらい変わるんだ?

今日はこのショッピングモールと決めて、空きテナントがあれば、モールの管理会社かリアルターに電話をして、レントとNNN(管理費トリプルネット)の数字を聞く。魅力のあるテナントは内検をさせてもらう。

内見したテナントもシュミレートしてみる。1年の間、ビジネス・モデルのシュミレーションを繰り返しおばちゃんはある方程式を発見してしまった。おったまげた。おばちゃんは日本の経営の本は一度も読んだことがないし、英語ならあるけど)

ビジネスのオーナーが損益分岐点について誰かが何かを言っていることも1度も聞いたことがなかった。が、おばちゃんが発見したのは月のレントと損益分岐点には明確な方程式が成り立つのだった。レント/月 × 7.5=売上額=損益分岐点

レントが相場より法外に高い/低い でない限り7.5倍が分岐点だった。
レントの7倍の売り上げでは経営はまず赤字になるのだった。

おばちゃんのビジネスは物品の小売りだから、おばちゃんが設計したシュミレーターは人件費が高いサービス業や、原価が高い小売には違う変数が必要だが、設定次第で別のビジネスにも応用が利くビジネス・シュミレーターなのだった。

おばちゃんはこの定理の発見をおじちゃんに勇んで話したのだが、はかばかしい反応がない。リアルターのタカコもそれで?って反応。ビジネスを始める前に、儲かるか赤字かわかるんだよ?すごいと思わない?
お前ら知的興奮って味わったことがないのか?こういう時、おばちゃんは深~い孤独を味わってしまう。

まあいいや、。とにかく原価が30%を超えたり、人件費が30%を超えたりすると、おばちゃんのビジネスでは趣味になってしまう。

おばちゃんたちに払えるレントもこれで分かった。客単価も目安がついた。日本人客のトラフィックが見込めるロケーションに物件捜索範囲を狭めてGoだ。

1年後、実際営業を始めてみると方程式は正しかった。仮定の客単価も売り上げもシュミレートに近かった。あたしって天才! おじちゃんからも褒めてもらったことがないので、おばちゃんは自分で褒めるしかない。

さらに、1枚目のシートにビジネスモデル、2枚目にはキャッシュフローをリンクさせる。
手持ちの資金(銀行預金)の数字を入力しておけば、月末の売り上げを入力すると、キャッシュフォローが表示され資金がどれだけ増えたか?あるいは赤字なら何か月後に資金が枯渇するか一目瞭然、カリフォルニアの陽の下に明らかになってしまうのであった。

静かな客

おばちゃんは小売業で、働いたことがなかったから、売り上げで出てくる数字がわかんなかった。開業前シュミレートした数字とだいたい額が同じなのだが、「意味」が分かんなかった。

どういうお客さんからこの数字は上がってきたのだろう?うちのお客さんはどういう人なのだろう?おばちゃんは分析することにした。

単純だけど原始的な方法で。お客さんを見る。
伝票にチェック項目を書く。人種、白人、アジア系、日本人、日系人、国際結婚かどうか支払い方法、現金かクレジットか伝票の売り上げ額、客の単価、客の利用頻度特に重要だったのは最後の2つだ。

あたりまえだけどお客に使用頻度は聞けない。おばちゃんがお客の顔を記憶して頻度を分別するのだ。週に1,10日に1,2週に1、3週に1,1月に1などと。

一日の伝票にチェック項目を書き込みスプレッドシートで分類集計していく。これを2か月続けた。そしてまた結果におったまげた。なんじゃぁこりゃ!

2か月の集計があらわしていたのは、週に1回買うお客さんが総売り上げの3分の1を占めていたのだ。へぇ~~?1番静かで文句を言わず、客単価は高くないけど毎日の売り上げを上げてくれるお客さん。
なるほど!Silent Majority

この分析のおかげで、おばちゃんは自分がどういう客層にどんなビジネスを展開すべきなのか、どの層のお客さんを大事にしなければいけないのか経営の方針が明確になった。

巷の話で聞く:テレビで紹介されたショップが大人気になって有頂天になり2か月後には閑古鳥が鳴くというパターン。
テレビにつられてきた客のリターン率は?元の客層は?
おばちゃんは確実に言えるが、年に一回来る客は、週一回の客より声がでかい。ホントに物理的に声が大きいのだ。比喩ではない。Silent Majorityは静かに来て静かに帰る。

もう一つ大きな発見は、クレジットカードの売り上げだ。クレジット・カードの売り上げは現金売上より必ず5%多い。現金を握って買う人は予算以上の商品は買わない。ところがクレジットカードの客は5%だけ気と予算が大きくなる。
ただし、C国人は別。
そして、単価が80ドルを超えるとほとんどクレジットカードになる。
ただし、C国人は別。

観光地の熱海でも現金取引のみという店舗があって、キャッシュを持たないおばちゃんはほんとに困ってしまった。手数料を取られるからいやだ?
手数料は一番高いAmexで3.5%だが、それでもクレジットにすれば売り上げが5%増えるので、引き算しても1.5%売り上げが増える。Amexみたいな傲慢な会社と付き合わなければ、普通2%-2.5%前後で済む。

ベテランの経営者は知識と経験で知っているのだろうが、経営素人のおばちゃんは自分で分析してこれらがやっとわかった。

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