駐在員の奥様会

ああ、怖ろしい。
おばちゃんは禁断の領域に踏み込んでしまうのかしら。伏字だらけになりそう。

おじちゃんの会社は商社でもなく独身社員とローカル社員だったので、もちろん奥様会などという怖ろしいものはなかった。

駐在員は長くても7年ほどで帰国するから、おばちゃんが永住権を取って一回りすると交友関係は同じ永住権者とローカルが中心になった。

友達のアイ子さんは駐在奥様に人気のお習い事を教えていた関係で、駐在の奥様たちと交友があった。日本を代表する一流企業の駐在員の奥様は何年かに一回奥様会を催すのだった。

アイ子さんはその中の一人、知り合いの奥様からどうしたらいいかしらと泣きつかれて困っていた。親睦を深めるため奥様会が今度あるのだが、その席で当然ながら自己紹介をせねばならない。It sounds normal. それで?と思うのだが

この自己紹介が大変なのだという。
自分のざっとした履歴:上の人の奥様より華々しいと大変!どのように”抑え”て紹介するか、会社の社員であるご主人とのなれそめエピソード!つまんないエピソードでは受けが悪い。

かといってロマンチック過ぎると”上の方”の妬みを買うかもしれない。つまらなすぎず華々し過ぎず、適度にユーモアを散らして自分の地位=ダンナの役職にふさわしい自己紹介を考えないといけないらしい。

服装バッグも上の人を超えてはいけない。アイ子さん、どうしたらいいでしょう?どんなエピソードを話したらいいのかしら。まるっきりのウソではバレるわよね?

かつての□コ□奥様会は、上座から下座まで地位順に席が作ってあったのだが、さすがに対外に聞こえが悪いと反省したのか、近年は席を決めるのにくじを引くそうだ。途中に軽いゲームを行って、さらに席替えをするのだそうだ。

ある情報によると、XXXの奥様会は集合時に席に座っていらっしゃった奥様は会社の上様のお局で、他の出席者が誰一人手を付けられないお茶と茶菓子をおひとりだけ悠々と召し上がっておられたそうである。

お局様は”卒業式から結婚式”とご自分の経歴を披露なさり、社会生活に穢れることなく、ひたすらご主人と会社のために尽くしてこられたことがご自慢であられたそうな。21世紀の時代に?!いくら席をシャッフルしようとも、”お局様”がどなたかは一目瞭然だったという。

○○○の場合はもう少し小規模の会社で割と皆さん庶民派で和気あいあいだったらしい。

X菱の場合は、超一流にも関わらず奥様会が無かった。
元社員の本人から聞いたが、かつてX菱奥様会でバトルがあったのだそうだ。奥様同士がご主人を巻き込んで会社を2分するような紛争が起きたそうで、以来ではX菱奥様会はご法度らしい。

深田祐介は奥様会や駐妻生活はあまり書かなかったけど、一流商社の△△△△の奥様によれば、ダンナは仕事・仕事・夜討ち・朝駆け・出張・出張で子供を抱えていて学校関係の手続きも自分でやり病気でも引っ越しでもダンナはあてにできず母子家庭と同じ環境なの!とこぼした。

商社マンの勤務は激務で、重圧のあまり同僚で気が狂う人も珍しくないのだ、とおっしゃっていた。△△△△の毎月の給与明細には、支給額の他に今月退職するとしたらあなたの退職金=金額が記載されているのだという。

日本に帰国したときに日本の教育に遅れないように日本語学校の宿題も付きっ切りになって奥様が教えていた。

ダンナは一流商社で働いていて頭がいいのは証明済みなので、子供の出来が悪ければ奥様の出来が悪いことになってしまう。奥様だって想像もできないほどの重圧にさらされていて無論壊れてしまう方もいる。アパートのドアから一歩も出られないようになって、こうなると日本に送り返すしかない。

奥様会ほどの大げさなものではなくても駐妻持ち回りのお茶会があって、今週はこの方、次はこの方とめぐっていく会社もあった。会社は奥方を現地の文化や学校で自分磨きをさせるために派遣したのではないので、現地交流禁止などとオフレを配布する会社もあった。

会社を一歩外に出ればただの知り合い、会社と配偶者は無関係といかないのが日本社会のややこしい文化であった。(アメリカでもあるが日本ほど支配が濃密でもない)

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