ガレージの攻防

ウチのアパートの部屋のガラージの前に、まっ白いBMWを停める隣の小太りで白人のおっさんがいた。たびたび止めるので、私はガラージから車を出すのに、思いっきり切り返さないと出られない。

ある日、当のおっさんがランドリールームから帰ってきたらしく、自分の部屋に入ろうとするので、文句を言った。するとそいつは
「俺の部屋のガラージ・ドアが壊れて、
 アパートの管理オフィスに修理をするように言ったが、
 修理がまだ来ねえんだ。だから文句はオフィスに言え」
「そんなの関係ねぇ。ウチの前に停めるのが邪魔だってんの。
  あんたの目の前にパーキングがあるからそこに停めろ」
アメ人「俺の愛車をそこへ停めたら、誰かぶつけたんだ。
  このへっこみ見てくれや」
「そんなの関係ねぇわ。どけろ、ガラージから出にくい」
アメ人「If you can’t get out from that garage, drive different county」と私の人種にあてこすってバカにしてきたのだ。
それで、私は「Then, you drive!」と

手に持っていた私の愛車の鍵を、おっさんの頭を狙って思いっきり投げつけてやった。
すると、何ということか!

おっさんはランドリーを抱えたまま右手でひょいと鍵を受け止めやがって、怒髪天ついている私をすりぬけて私の車に乗り、一動作で車を出してきやがったのだ。こうなったら止められない。

私はアパートの管理事務所に駆け込み、たった今あったことをチクって対処を要請した。すると、オフィスのお姉ちゃんは3枚複写の紙をくれた。

人のガラージ・ドアの前に停めるのは交通違反だから、もし次に違反駐車を発見したら、この違反リポート・チケットに時間と場所と相手の車のナンバーを記入して、ここに持ってきてね。ここから警察に回るので、彼は罰金を払うことになるから。若きおばちゃんは、違反チケットを握って思った。やったる!と思った。

おばちゃんは待ち伏せに入った。
違反切符を車に張れるのは現行犯の時のみである。隣のおっさんがいつ車を止めるのか、まずは知らねばならない。アパートの部屋からはガラージ・ドアが見えないので、頻繁に斥候にでる。

結果、おっさんは夜8~11時に帰宅し、朝は5~6時に出勤することが分かった。当時私は夜10時半から11時に主人を迎えに車を出すので、違反を捕まえるなら、夜がいい。ところが敵もさるもの、奴の帰宅時間が遅くなって
どうしても現場が捕まらない。

おばちゃん、早起きは大っ嫌いだったけど彼奴をとっちめるために早起きをして、ついに違反駐車を抑え、違反シールをあいつの車に張ることに成功した。複写の違反切符を管理事務所に届けて、おばちゃん勝利宣言である。ざまみろ。

その夜、ダンナを迎えに行こうとガラージの前まで来ると、あいつの車に貼ったはずの違反切符が丸めて、ウチのがラージ・ドアの前に捨ててあった。腹いせだろう。ふん!
おばちゃんはアメリカに勝った。

mikie@izu について

海外在住何十年の後、伊豆の山に惹かれて古い家を買ってしまい、 埋もれていた庭を掘り起こして、還暦の素人が庭を造りながら語る 60年の発酵した経験と人生。
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