アメリカのパンはなぜバサバサか

アメリカの食パンはガサガサである。
大手の食パンなどを買うと、生地が荒くて指が入りそうな穴がぼこぼこ開いてる。こういう食パンをトーストすると、舌と唇にささる。がっさがっさのバッサバサ。アメリカ人はこういうトーストを喜ぶ、クリスピーと言って。

外はカリッ、中はフワッじゃないのか。厚切り食パンは存在しない。ふわふわ超熟もご飯のようなモチモチなパンも存在しない。クリスピーが命。

しっとりキメの細かいライムギパンとかもない訳でもないが、、。そしてそれがケーキになると、もっと顕著になる。スポンジケーキが本当にスポンジでできてるんではないか?と食べながらケーキを観察せねばならない。シフォン・ケーキはまかり間違っても、フワフワではない。ぷよんぷよん。

なんでこうなるのか?
おばちゃんは世界で最初にクロワッサンの生地を自動で作る機械を作った日本の会社の駐在員に聞いた。この駐在員はベロ・メーターを持っている。

一口食べると、粉の配合が分かるというベロの持ち主。世界中のパン屋とみれば、買って食べてみるというパン道を究めんとする駐在員である。

彼によると、ピルグリム移民のむかしから、アメリカには収穫した小麦粉を細かく挽く機械がないのだという。荒い粉でパンを作るからこうなるのだという。

元々クリスピーが命だから、あるいはがさがさの荒い小麦粉の製品ばっかり食べていた結果、フワフワ・しっとりを受け付けなくなったのか、それは定かではないが、アメリカには小麦をできるだけ細かく挽こうという意思も細かく挽く機械を作ろうという意思もなかったんである。

そこへ、世界初のクロワッサン生地を作る日本の会社が製パン機械をいろいろ持ち込んできた。主に機械を買ってくれるのは、アジア系である。米食でフワフワモチモチ系が好きな民族。細かく挽いた粉で作る台湾系のシフォンはしっとりして日本と変わらないおいしさがあった。

機械でなくて、フワフワモチモチを別の方法で解決したパン屋があった。
ハワイに。King’s Bakeryという。

King’s Bakeryの袋の後ろに、ベーカーリーの起源が書いてあっておばちゃんは、とても暇なときに何気なく裏を返して読んでしまった。

ハワイの人はパンが次の日に固くなってしまうのが悲しかった。次の日も固くならないパンが食べたい。それでKing’sの先代は試行錯誤をして、次の日にも固くならないパンを開発したのであった。

King’sのパンは確かに固くならない。うっすらと甘い。ふわふわである。だから、おやつのようにパンを毟ってたべる。うちのおじちゃんの好物であった。

King’sの創始者はハワイの日系人である。カリフォルニア州に大きな工場ができて、フリーウエイから降りると目の前にある。

将来アメリカ人の指向が変わって、しっとり柔らかなパンが好まれるようになるとしたら、それは日本人日系人の努力のたまものかもしれない。

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