シウマイ弁当

おばちゃんは学校が横浜だったのでシウマイ弁当は1個260円だったころから愛好家だ。何せサークルの野外活動はランチがシウマイ弁当だったので青春の味なのだった。

横浜市内の大きな駅なら大抵シウマイ弁当は買えたのだが、アメリカには崎陽軒がなかった。当たり前だ。
シャウエッセンは現地のソーセージで埋め合わせがついたが、シウマイ弁当は口にするのが不可能だった。グリーンカードが取れた年に一時帰国して弁当はしっかり食べたが、持ち帰りは無理なので真空パックのシウマイだけをお土産に帰った。それから日本へ永住帰国するまで幻の味覚だった。

静岡と神奈川は隣り合っているが、シウマイ弁当が買えるのは東名上り 海老名サービスエリアだった。なんで上りなの?これから横浜方面上りに向かう人にまだお土産は必要ないでしょう?
横浜を離れる人にさあどうぞと下り海老名で売るべきものではないか?メロンパンなんかどうでもいいんだ。

東名で何度も煮え湯を飲まされて、この間シウマイ弁当を買える場所で検索をしたら足柄SEが出てきた。なんだ海老名より近いじゃない。
でも、伊豆から出撃して足柄でシウマイ弁当を買ってトンボ帰りするのは60歳過ぎてあまりにも人聞きがわるい。アホと違うか。もうちょっと別な方面でついでに弁当を買った体で大人の体面を保ちたい。

おお、小田原駅にあるではないか。高速料金を払わなくてもいい。
そうだ!小田原駅に行こう!

9時過ぎに家を車を出して、10時半には小田原駅の崎陽軒についた。
本日は、弁当の入荷が遅れておりまして12時半に到着予定でございます。
あら~!それじゃその時間に戻ってきます。


おじちゃんとおばちゃんは小田原の駅前で、伊豆より都会だねぇ。人が多くなったねぇ。とぶらついていたが、しかし、不安に駆られた。崎陽軒には行列ができる。以前静岡駅の弁当売り場でおばちゃんの前の人でシウマイ弁当が売り切れて悔しい思いをした。
行列が長くてもし買いそびれたらどうしよう?弁当の予約はできるかしらと、また構内に引き返して弁当の予約をした。

さらに駅をぶらついてパンを買ったり金目鯛の開きを買ったり(沼津港より安いじゃん)忘れずに竹輪とかまぼこも購入して、12時半に崎陽軒に戻った。首尾よく買えてルンルン。

また海沿いの国道をトコトコと走り、真鶴を超えて熱海の峠を越えて無事家に着いた。2時だった。


お茶を入れてウキウキと黄色い弁当のヒモを解き蓋を取った。
おばちゃんは家の女王さまであるから、おばちゃんのポジションはコタツのそばのビーズクッションである。人間をだめにするソファにどっかりとめり込んで、シウマイ弁当を召し上がろうと思った。

箸袋を破いて右手に箸を持ち左手で弁当本体を持ち上げようとしたら左手首がへたった。
ノリ佃煮を除くおかずが全部クッションとコタツ布団にこぼれた。
ああ!おばちゃんのシウマイ弁当が!

ご存じのようにシウマイ弁当のご飯は若干のもち米が混ぜられていてモチモチする。ご飯はしっかり弁当箱にへばりついて落下した米粒は一つもなかった。きっと弁当箱を逆さにしても落ちないだろう。
しばらくご飯とこぼれたおかずを眺めて、おばちゃんは箸でまずぶりの照り焼きを拾った。次は黄色い卵焼きだ。細かく散っているのはタケノコの煮つけだ。箸でつまんで弁当箱にもどす。汁気がなくてよかった。

やたらタケノコが多い。唐揚げはどうした?大事な唐揚げは1っ個しかないのに。
シウマイは?5個のシウマイの安否は?
シウマイは無事全部回収した。カマボコは白いのでよく目だった。回収する。大事なデザートのアンズはどこだ。私の大好きなアンズ?

今日のアンズはあまりにも小さくタケノコの大きさとほとんど変わらなかったので、タケノコにまじってすでに回収が済んでいた。
よく見ると、たった一つのから揚げも今日は極小でやはり回収済であった。

無事おかずがそろったのでおばちゃんは食べ始めた。
コロナのせいで3年ぶりくらいだ。
今日のぶりは少ししょっぱい。タケノコがいやに多いぞ。おじちゃんがタケノコの煮物はいつもより甘いなと言う。
シコシコとするシウマイはおいしくいただいて、極小だったアンズは甘酸っぱくて以外にも大変うまかった。デザートが上出来だったのでおばちゃんは満足。900円だ。

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ど~うでもいい話だが、
小田原駅の新幹線ホームの音楽は「お猿の駕籠屋」だ。
え~っさ、え~っさ、えさほいさっさ。
お猿の駕籠屋だ ほいさっさ。
小田原ちょうちんぶらさげて
ほら、やっとこ どっこい ほいさっさ。

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