国籍法第11条 その2 二重国籍

国籍法第11条
1、日本国民は、自己の志望によつて外国の国籍を取得したときは、日本の国籍を失う。
2、外国の国籍を有する日本国民は、その外国の法令によりその国の国籍を選択したときは、日本の国籍を失う

第12条
 出生により外国の国籍を取得した日本国民で国外で生まれたものは、戸籍法(昭和二十二年法律第二百二十四号)の定めるところにより日本の国籍を留保する意思を表示しなければ、その出生の時にさかのぼつて日本の国籍を失う。
国籍法:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=325AC0000000147

国籍法第11条にも関わらず二重国籍になる人が出るかといえば、世界は二重国籍を認める国と認めない国が混在し、他国の市民権(国籍)を取ったとき本国に自動通知されるような国際システムが無い。国籍法で日本国籍の自動喪失を日本が宣言したところで、他国の市民権を取ったあと国籍喪失届を律義に手続きする日本人のほうが稀かもしれない。つまり何もしない故に二重国籍になる。

喪失届をださなくても特に罰則はない。第16条―日本国籍 選択の宣言をした日本国民は、外国の国籍の離脱に努めなければならない。―――努力義務

複数のパスポートを使うことで入管法に触ることがあるかもしれないが、厳罰を受けた例をあまり聞いたことがない。
罰則がなければ法律にチャレンジしても特に不利益がないと考える人は一定数いる。特にフレキシブルな考えを持っている関係方面とかね。法律で罰則規定があれば抑止力があるからあえてチャレンジしようと考える人も少なくなるかもしれない。

さて、日本国が断固として二重国籍者の排除に向かっているかというといままではそうでもない。
元記事のコメントには鋭い指摘があった。

ペルーのフジモリ元・大統領の亡命事件だ。
フジモリ元大統領は日系2世のれっきとした2重国籍者。
一世の両親が大使館に出生届を出したため日本国籍をとった。一方ペルーの法律では二重国籍者が大統領になることを禁じている

さらに
国籍法の改正:1984年以前から日本国籍と外国籍の双方を保持している者は1985年1月1日の改正国籍法施行の日に外国籍を取得したものと見なされるので成人の場合2年以内(1986年12月31日まで)に国籍の選択をしなければ自動的に日本国籍の選択の宣言をしたとみなされる

彼は2国の国際法をくぐった2重国籍者であるようだ。

ところがフジモリ大統領への弾劾と追訴が起こって彼が2000年11月、APEC首脳会議の帰途東京に入国した後、日本国は彼を日本人として保護した。事実上の亡命

改正法の何もしなければ自動的に日本国籍を選択したとみなされているわけ。
ところが、ところが、彼は2005年10月、2006年に行われるペルー大統領選挙に出馬するために日本を離れた。改正法ならば成人後、彼はペルー国籍を放棄したとみなされるのではないんかい?

Wikiより
同法第16条第2項には、国籍の選択宣言をした日本国民が自己の志望で外国の国籍の必要な公務員になった場合に、その就任が日本の国籍を選択した趣旨に著しく反すると認めるときは、法務大臣は聴聞を経て日本国籍を喪失させることができる旨の規定があるが、フジモリは「みなし選択宣言者」で「実際に選択宣言を届け出た者」とは区別されるため、この第16条は適用されないーーーではペルー国籍はしっかり保持しているわけ?!

当時の首相は小渕 恵三、外務大臣は麻生太郎であった。ええかげんな人達やのう。

フジモリ氏もペルー人と日本人をカメレオンのように使い分ける人であったようだが、日本の国籍法も相手次第でカメレオンのように適用されるようである。

日本人とみなしたり、大統領選に出馬する時にはペルー人になったり。それを擁護した外務省、法務省、日本政府。
自分が恥知らずと知っている恥じらずは、突っ込まれるのが嫌さに人の欺瞞に鈍感になるのかもしれない。目糞が鼻糞を笑っているような。

このような歴史的な背景もあって、日本国はなにがなんでも二重国籍を強固に排除する姿勢ではなかった。ちっちゃい声で言うのだが、二重国籍は2つの国で税金を払ってる。本来なら定住の国で租税を払うだけでよいのだが、戸籍と住民票を維持するには税金がかかるから。

おばちゃんはモニカ・ルインスキーのスキャンダルの時に、アメリカ大統領が恥ずかしくていたたまれなくなり、アメリカ国籍は金輪際取るまいと思った。2021年、アメリカ市民権と永住権者の放棄が過去最高になったという記事があった。パンデミックのせいか。

日本の在外領事館は一般日本人はゴミだから保護なんかめったにしてくれない。アメリカはアメリカ市民が他国で戦乱に巻き込まれたときは、特別機を準備してすぐ救出にむかうから、そこは頼もしいと思う。

参考:
こちらはカリフォルニアの日系雑誌の法律相談ページだ。市民権をとるかどうかと悩む場合に実際のどのような違いがあるかまとめられている。
https://www.us-lighthouse.com/life/feature-articles/citizenship-vs-greencard-02.html

こちらは35歳にしてアメリカ国籍があったことが発覚して、アメリカ国籍を放棄した人のブログ
https://dailyportalz.jp/kiji/161031197945

関連記事

国籍法第11条―2重国籍
国籍法第11条―その2 
国籍法 その3

国籍法第11条 その1 二重国籍

1、日本国民は、自己の志望によつて外国の国籍を取得したときは、日本の国籍を失う。
2、外国の国籍を有する日本国民は、その外国の法令によりその国の国籍を選択したときは、日本の国籍を失う

現在コメントが交錯している記事
https://news.yahoo.co.jp/articles/b3bd0dbddcfed3ad403e75856ab580ff08e88d36
「日本人ではない」と国がパスポート発給拒否 大学教授の女性が日本国籍の確認など求め提訴–

このオリジナルの記事がそもそも情報の細部を欠いてさらに不正確なため、推測と憶測が交錯して紛糾している記事。

内容のサマリー
)2007年にカナダの市民権を取得した日本人女性・大学教授が4年前の2018年に親の介護のため日本に入国。ここ、問題1-どちらのパスポートで入国したか?

本籍地の自治体では日本国籍を喪失していない状態だとして、(カナダ人)としての在留資格を認めなかった。–問題2

)女性はその後法律上の手続きなどはすべて履行したーー問題3)となどと訴え(どこに?入管に?)入管が「特例措置」として女性の日本国籍を認め在留資格が与えられた。

)ところが、法務省と外務省は女性がカナダの市民権を取得した時点で、日本国籍を自動喪失していて「日本人ではない」として女性への(日本)パスポート発給を拒否

)現在、女性は海外への自由な渡航ができない状態となっています– 問題5)

現状:女性は日本国籍の確認やパスポートの発給などを求めて15日、京都地裁に国を提訴

この記事を書いた記者自身が外国の市民権や2重国籍などに親しくなかったのだと思うが、おばちゃんを含め、多数の読者は疑問が噴出していて非常にfrustratedである。
問題となる個所をあげて内容を分析してみようと思う。

問題の1
どちらのパスポートで日本へ入国したのか?

推測:カナダのパスポートではないか。

理由1)有効な日本のパスポートがあればそれで日本入国に問題がない。
もし、日本のパスポートが切れていた場合、カナダ国内での日本パスポートの更新は日本から戸籍謄本を取り寄せる必要があって手間と時間がかかる。日本から連絡を受けて急ぎ帰国するような場合は間に合わず有効なカナダパスポートを使ったのかも。

)背景として:この彼女はたぶんカナダ永住権から市民権を取ったのではないかと思うが、市民権をとった時点で永住権は失効。一旦カナダ国外に出国してからカナダ再入国する際には日本パスポートは使わない。日本人としてカナダ入国するのでビザウエイバーかビザが必要になるから。日本パスポートはほとんど使わず、有効期間が切れていたのではないか。

以上の点を考えると彼女はカナダパスポートで日本入国したと思われる。

問題2カナダ人としての在留資格を認めなかった・・・・日本人だとしている
カナダパスポートで入国していると思われるのに、この「在留資格を認めない」状態とは?
カナダ人として一時ビザで日本入国。介護で滞在が長引き、有効滞在期間90日が過ぎるか「オーバー・ステイ」状態になりそうな状況になったのではないか?
カナダ人が日本に合法的に滞在できるのはtemporally で90日。ワーキングホリデーで12か月とある。

90日が過ぎてオーバーステイになったら、日本を一度出国すると、カナダパスポートでは日本の再入国ができなくなる、と思う。

推測:そのような状況を恐れて、彼女が自治体に問い合わせたら、日本国籍喪失届を提出していなかったので、日本の本籍はintactで彼女は日本人であるとし、のでカナダ人としての在留資格は認めないと返事があった。では安全のために日本パスポートをとっておこうと思う。―おばちゃんなら。

問題3)合法的な日本の滞在資格をえるためだろうか、女性はその後法律上の手続きなどはすべて履行した(ここ重要)となどと訴え入管が「特例措置」として女性の日本国籍を認め特別在留資格が与えられたーー

この「法律上の手続き」とは何か。これが一番の問題。記者はなんでこの法手続きの内容を書かないのか?
シナリオA)この法律上の手続きが、日本国籍の確認である場合、
カナダ国籍があることは触れずに、日本国籍の確認と主張をした場合、カナダ国籍も失効しないが、記録上オーバーステイがあってカナダパスポートでは再入国ができない可能性が残る。

シナリオB)母の状態が悪くカナダ国籍放棄を決めた。法に従ってカナダ国籍を放棄した。

この問題は)に関係する。ーー5海外への自由な渡航ができない状態となっている。

問題5)自由に渡航できない状態とは具体的に何か?
シナリオAではカナダ国籍は有効でパスポートも有効。名前と性別を変えない限り海外でのパスポートの更新は簡単だそうだ。ただし、いったんカナダパスポートで出国すると日本再入国が不可の可能性が残る。
シナリオBではカナダ国籍は放棄したので日本国籍しか残っていないが法務省が日本国籍は喪失したというので無国籍状態でどの国のパスポートも取れない。

◎さて、いったいどのような法的手続きをとったのか、記者さんそこんとこが大事なのに!
彼女はオーバーステイのカナダ人なのか?それとも無国籍者なのか?

二つのパスポートを持つのは活動の利点がある。選択肢が増える。
2つのパスポートを持つ日本人がいるのは否定しない。
この記事は実はもう一つの問題をも提議する。

海外に移住するのは30代半ばまでの年代が多い。移住して永住権を取った時点で親はまだ元気だ。帰国していつでも会える親は親!と思っていたのにある日突然知らせを受ける。
親や親が亡くなって残った兄弟が倒れる。

帰国して1か月滞在し施設に入れる人。
兄弟姉妹でひと月交代で日本に帰国し介護する人。
アメリカ市民権を取り親の永住権をサポートしてアメリカに呼び寄せる人。
永住権をあきらめて家を売り、日本に永住帰国する人。
親の介護は兄弟に任せ介護費用を仕送りする人、あるいはバックレる人。


50代になると様々な海外在住の日本人が国と国籍を挟んで介護問題に奔走していた。
日本国内だって、親の住む実家から新幹線の距離に引っ越す、職をえてあるいは結婚して他県に移住すれば、親の介護で同じ問題が起こる。海外の場合はさらに国境と国籍の問題が絡んでくるのだ。

記事の否定的コメントには二つの国籍をもって「ずるい」「いいとこどり」も数多くあり、「親の介護があるのに海外に行くなんてそもそもあり得ない」と。このコメントは正直おばちゃんもコタえた。移住したときは親は元気だったのだよ!遊びに来るのを楽しみにして。

日本の入管と法務省はすべての出入国の記録を持っている。
日本を出国した記録がない日本人が海外から入国する。日本に入国した記録がないのに日本人・外国人が日本を出国する。これらの出入国に整合性がないと2重国籍ではないかという疑いをもたれる

基本、入国した時と同じパスポートを出国に使う。それができなくて2つのパスポートを使ってしまった場合は、最後は入管で止められ、ちょっとこちらへと別室に呼ばれあなたはもう一つパスポートを持っていますね?とやられることになる。日本のマイナンバーカード取得が進んで、2重国籍者もいずれ腹はくくらねばならない。

人の数だけ解決法は違うと思うが、彼女の場合はカナダ市民権取得の時に日本国籍を放棄しておけばよかったかもしれない。元日本人の外国人が日本の「永住権」を取得するのは簡単だという。元日本人だから。
カナダ人の永住者として日本で暮らせる。ただし、法的に親権者とか保証人としての手続きは難しいかもしれない。最後に、彼女の職業:大学教授は一体どちらの国の職なのだろう?4年カナダを留守にして、職が安泰なカナダの大学があるとは思えない。日本の大学なら日本人として就職したのだろうか?すると介護が終わった後カナダに帰国する意思はまだあるのだろうか?
この裁判の結果を注視する人は多いだろう。

関連記事

国籍法第11条―2重国籍
国籍法第11条―その2 
国籍法 その3

  • footer