国籍法 その3 二重国籍

例の2重国籍の大学教授の件、京都新聞から詳しい記事が出ました。
https://news.yahoo.co.jp/articles/d3d15fc44dd6e801321450a8e522d0cec8457bae

続報によって欠けていたピースがパズルにはまり全景が見えてきたのだが疑問がまだ残る。

カナダ国籍の大学教授の置かれた状況はおおむね以下のようであった。
1) カナダ人男性と結婚し市民権を取得。国籍カナダパスポートで母の介護のため2018年日本に入国した。一時ビザと思われる

2)カナダ人として日本の永住権を得ようと本籍地・世田谷に国籍喪失届を出したが、受理されなかった。理由はカナダの市民権証に取得の日が記載されていなかったから――問題1

3) カナダのパスポートに「日本国籍抹消」と記されていることを根拠に特例で在留許可がでた。――問題2

4)温情で特別在留だが記録上は90日を超えるオーバーステイなので一度日本を出国すると再入国ができない。――渡航の自由がないと訴える状況

5)そこで日本国籍が残っていることとしてパスポートを取ろうとしたが、法務省から日本国籍が喪失していると拒否をされ
6)大阪地裁から国を提訴。


問題1一時ビザで入国と考えていいと思う。90日間が合法滞在期間
そこで問題なのが日本の永住権を申請したのはいつか?

シナリオA———–
合法期間中に永住権を申請したが時間切れになった場合。

ステイタスの変更はどの国でも期間順守Time Sensitiveだろう。
申請 —郵便で通知 —-問い合わせ —追加文書提出 —郵便で通知。問題が発生したときは問合せをするだけであっという間に時間がたつ。
役所は申請人の合法滞在期間がなくなっていくことなどまったく関与しないからな。急がねばならない。

結果は、彼女のカナダ市民権証に取得した日が記入していないとして世田谷区から不受理される。

彼女は結婚によって市民権をとった。カナダのイミグレから市民権取得の様々なドキュメントが通知されているはずである。カナダの家からドキュメントを送ってもらえなかったのか?なぜしなかったのか?カナダ国籍を証明するものが、市民権証たった一枚だけとはおかしすぎる。

世田谷から喪失届の不受理が判明したのはいつだろう?
もし滞在2月目か3か月目に不受理を知らされていたら危ない。自分のカナダ人としてのステイタスも危ない。このとき危機感を持つべきだった。

90日が過ぎる前に、いったん出国してカナダに戻り市民権取得の日が記載されたイミグレからの書類を確保して、世田谷区に再度国籍喪失届を提出し、カナダの日本大使館から永住権を申請すべきだったと思う。
彼女はどちらもしなかった。何故だ?
元日本人として法手続きを甘く見ていたか、日本の役所の仕事が遅くてあっという間に時間切れでイリーガル=オーバーステイ=違法滞在になったのか。

シナリオB——————-
90日の合法滞在期間が過ぎてオーバーステイ状態になってから永住権申請を始めようとした場合

90日をすぎて違法滞在になってからのステイタスの変更は非常に難しいだろう、どの国でも。
学生ビザF1が失効してI-20 が無くなってからビザの切り替えようとしても、どの弁護士も出国しなさいとアドバイスするだろう。観光ビザで入国し90日を過ぎてからビジネス・ビザに変えようったってそりゃ無理だわ。移民法を甘く見すぎ。

さらに疑問なのは、
問題2「日本国籍抹消」とカナダパスポートに書かれていた
どの国の役人がカナダ国籍のパスポートに「日本国籍抹消」と書いたのか

日本と米国の2重国籍者で2つのパスポートがあるとする。
お互いの国は自国のパスポートを発行するが、わざわざ本人が他国籍を持っているとしその国籍を抹消すると書くか?おかしい。
彼女の「国籍抹消」の書き込みは、日本入管が書き込んだのではないか

世田谷区はそのパスポートの書き込み「日本国籍抹消」をもって特別在留許可を出したのである。もし、そうなら本人が言っているのでその旨をパスポートに書いて、パスポートに書いてあるからその書き込みを認めます、って言ってるのでーーこのへんは入管と世田谷のほうがルーズ。証拠になりもしないものを証拠としてうやむやにするから事態が余計ねじくれたのだ。

彼女のステイタスは現在特別在留許可を得てカナダ人として日本滞在。
これは温情であって、いったん日本を出国すれば、オーバーステイだった違法滞在のカナダ人であるので、再度日本に入国するのは無理。

違法滞在を一度犯すとオーバーステイの年数と国の規定により5年から10年記録が消えない。あるいは一生消えない。首相の犬養毅の孫であった犬養道子がオーバーステイと不法就労で米国から強制送還された記録は、その後の政治家のコネでもっても消すのに大変な交渉と時間がかかったと本人が書いていた。

大学教授はカナダ人で違法滞在である。
国籍法がある限り日本国籍は抹消されており回復は難しいだろう。彼女はフジモリ元大統領ではないので2重国籍を認められることもないだろう。

ただ、おばちゃんが考えるに裁判の他に一発逆転の方法は2つある。
米国で同じようなことが起こったとして

1、 恩赦
2、 日本人男性と結婚して永住権を取得する

米国ならイリーガルのまま潜伏していて新大統領が誕生したときに恩赦があるかもしれない。8年から12年待てば、イリーガルからの復活のチャンスが0%ではない。日本の恩赦はどうだろう?

もう一つは、日本の男性と結婚して永住権を取得する
カナダの夫とはどうなったのか、記事には何も書かれていないが4年間に及ぶ日本滞在で夫の影がないのはすでに離婚済みなのではないか?

違法滞在状態から結婚・合法的な永住権を獲得するのは、普通より手間と時間はかかるだろうが不可能ではない。2重国籍を認めないなんて日本って遅れてるわ!とほざいたところで国は動かない。日本の男と結婚するほうが早い。

この裁判の結果は、現在日本国のまる抱えの庇護のもと生きているニューヨーク夫婦に子供が生まれた場合、確実に影響する。
子供が21歳になったときどちらの国籍を選ぶか。もし、日本人でもありアメリカ人でもありとかフジモリ的扱いをするなら、その時は日本国民は外国に出国してどんどん二重国籍の子を産もう。

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