英語学校を経営する

アイ子ちゃんの話である。
アイ子ちゃんはかつて日本で英語学校を経営していた。

すべての教師はアメリカ人であった。自己主張の強いアメリカ人を雇って働かせるのは並みの日本人のできることではない。

アイ子ちゃんのご主人はアメリカ人だが、彼女の日本語学校とは全く関係していない。
ご主人とは日本で知り合ったのだが、

アイ子:あなたの人生を話して!
ご主人:ワタシはアメリカであんなことやこんなことをやりました。
アイ子:アンタ、ビジネスに向いてないわ。

とご主人はアイ子ちゃんからバッサリ切られ地元の女子大の英語教師におとなしくお勤めしていた。

アイ子ちゃんは最初は小さな教室から始め、次いでそろばん学校が使わない夜間の教室を又借りするやら経費をかけずに徐々に大きくしていった。

ターゲットの生徒層は初級の英語会話を習いたい一般女性や学生ではなく、一通り英語はできるがさらに教えるほうに回りたい上級者向けの英語学校であった。モチベーションが固いので継続率が高かったろう。

生徒の持続力をささえるのは教える先生の質である。どれだけ日本人生徒に人気のある教師を雇えるかが売り上げを大きく左右する。アメリカ人教師を募集し面接でこれぞという人間をピックアップする。

他の英語学校で人気だという先生を引き抜く。
引き抜く?そうよ、引き抜くのよ。今貰っている給料の倍上げるって、言えば来るわよ。
人間何で動くかっていうと“お金”で動くのよ。
だそうである。

大阪商人の末であるアイ子ちゃんならではの技で、常に上の待遇を要求してくるアメリカ人に時には、アメをしゃぶらせ、夢を与え、人気が落ちてきた先生には警告を発しやる気を則す。 

繰り返すが先生はすべてアメリカ人である。
おばちゃんが日系2世を雇った時も、ことあれば自分がどれだけできるかアピールしてきて給与交渉をしてくるのでほとほと疲れた。待遇を上げなければすぐにやめてしまう。見切りをつけるのがものすごく速い。


そういうアメリカ人との交渉やコントロールの経験の土台はたぶんご主人との生活である程度補強されたのかもしれない。アメリカ人をコントロールする学期ごとのEvaluation system=評価システムはご主人の入れ知恵だろう。

カレッジでセメスターの終わりに教師の評価をつけるアンケートのアレである。
1、 教師の教え方はどうか?2、わかりやすいか? 3、生徒の疑問に答えたか?、、、、20、教師の点数をつけるとしたら1から10のスケールのうちどれか?

学期の終わりに全生徒にそれぞれの先生の授業について評価アンケートを回答させて、教師の能力評価を客観的な数字で出す。アイ子ちゃんは、このシステムを活用して給料交渉をしてくるアメリカ人教師には、冷静な数字を見せてコントロールしていった。

他の英語学校から引き抜いた先鋭のアメリカ人教師でも、異国で暮らすストレスなのか突然情熱がぶつんと切れる教師がいるらしい。生活態度が悪くなり、生徒サービスもおざなり授業もやる気がなくなって、そのくせ注意すると自己弁護ばかりして手に負えなくなってくる。


雇用契約書には、生徒評価が連続して一定基準以下が続いた場合に解雇条項を入れておいたので、第三者からの数字を突きつけると、態度が悪くなったアメリカ人に解雇通知を出してもぐうの根も出なかったという。

大きくしていった学校を切りのいいところで売ってご主人とアメリカに移住した。

一番驚いた英語学校の内情の一つ。
日本人に人気のある英語教師の条件は何だと思うか?

金髪でブルーアイズ。外人らしい容貌を選ぶことだそうだ。いかにも白人らしい要望のアメリカ人を選べば生徒から人気が出るのだそうだ。

はぁ、とおばちゃんは力が抜けてしまうよ、日本人の白人コンプレックスには。
英語に変な癖がなくて発音がきれいでも、本国で教えた経験があっても、アジア系の容貌では、生徒の勉学の意欲はいまいちなのだそうだ。アイ子ちゃんが面接でこれはというという人物は白人こーけ試案いかにも外人らしい日本人受けしそうなアメリカ人を選んだのだそうだ。
あれから25年ほど経つと思うが、日本人の英語コンプレックス、白人コンプレックスはさほど変わっていないだろうなぁ。


mikie@izu について

海外在住何十年の後、伊豆の山に惹かれて古い家を買ってしまい、 埋もれていた庭を掘り起こして、還暦の素人が庭を造りながら語る 60年の発酵した経験と人生。
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1件のコメント

  1. Mikieさんのお友達の方は、25年前に既に、とても合理的に上手に英語学校を経営されていたのですね。職種によっては、当時から引き抜きがかなりあったと思いますが、個人の英語学校でと言うのは、中々なかったのかもしれません。私も昔はヘッドハンターの人から電話があって、転職では大変お世話になりました。ヘッドハンターも信頼できる人とできない人がいるので、注意が必要でした。職場の同僚でも、ヘッドハンターからの電話で話しているとすぐに分かりました。気をつけなければならなかったのは、会社が社員をリストラ首にしたい時に、わざとヘッドハンターを使って他の会社に移動させるといったものでした。

    日本人の白人コンプレックスはまだまだあるでしょう。欧米でアジア系の男性と知り合って結婚すると、他の日本人から下に見られるとか聞いた事があります。日本人女性で国際結婚は白人が多いようだし、基本的に白人コンプレックスですね。(私自身もそうだと思います。)後、少し関係ないんですが、日本人女性が思うかっこいい、ハンサムな男性と、現地の女性が思うのはだいぶ違うようです。日本人は、白人金髪青い目、背が高い、りかちゃんのお父さんみたいなのをかっこいいと思う様ですが、海外だとそういうのは当たり前の事なので、ハンサムの基準は少し違うように思います。

  2. りんどう

    記事のアップありがとうございます。

    英語「を」話すから、英語「で」話す。
    日本の外国語教育にも少しづつ良い変化が出てきているように思います。
    問題は何をどう話すか。思考力と表現力。基礎となる教養を若い人は鍛えてほしいと思いますし
    良い環境を提供するのも大人の責任ですね。

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