おばちゃん役所で暴れる

売買エスクローがオープンしてから、おばちゃんは会社の登録に忙しかったエスクローの必須事項をクリアしていくためにスケジュールをたて必要なライセンスの取得、物品の購入、テナント内の改装、業者の選定と契約などすべてをビジネスがオープンする日に向けて収斂させていかねばならない。

一番面倒くさいのは、ビジネスに必要なXYライセンスだったがこのXYだけは申請・登記して済むものではなく2~4か月かかるややこしい手続きがあった。

アメリカ人は大概フレンドリーで嫌な奴もたまにはいたが、役所の奴は違う。一番不快で下劣な奴がそろっているのが移民局で次が税務署。

市役所はややましだったライセンスの役所は電話をかけても待ち時間が長く、今どんな課程にあるの質問してももうちょっととか、いつ頃かと聞く前に電話が切れてしまうのだった。

ビジネスをオープンさせる日を決めるにはエスクローがクローズするのか知らねばならない。エスクローがいつクローズするかは、ライセンスがいつ登録完了するのかにかかっている。

そのライセンスがどうなっているのか、エージェントのタカコに聞いても”え~と?”と頼りない。
エスクロー会社に役所から何か通知があるか聞いても分からない、と。
おばちゃんは胃がキリキリとして役所に申請課程を確かめに行くしかないのであった。

お役所は古いガバメントのビルの5階にあり窓口にはすでに長い行列ができていた。窓口は4つあるのに、稼働しているのは2つだけで窓口から見える中のオフィスでは、職員のおばさんが何かぐだぐだとしゃべって笑っているのだった。

おばちゃんが申請書の受付ナンバーを言ってライセンスのステータスを聞くのだが、黒人のおばちゃん職員は早口で、今プロセスが何たらでこうたらするとどうなる、ネ~クスト、とおばちゃんの次を呼んだ。

おばちゃんはかッとして、そんなに早口で言われても分からない。
もう一度言って!と頼んだ。
黒人のおばちゃんは、明らかに揶揄する感じで何たらがどうなのよ、は~ん。早口で繰り返した。

おばちゃんこれが勘所のライセンスなのも、ここが役所なのも忘れた。
「あなたは毎日同じ仕事をしてて、自明のことだろうけど
 私はこれが初めてだから。わかりやすいように説明してよ」

窓口のおばちゃんも唇を突き出して、
ふん、だからさっきから言ってるじゃない。おばちゃんは窓口のカウンターを両手でバンバンたたき叫んだ。あんたの言うことは分かんないわよ。
黒人のおばちゃんも引けなくなって、
窓口で2人の女が怒鳴りあう事態になった。

おばちゃんは気が付かなかったが、いつの間にか管理職らしい上役が後ろにおり、ちょっとこっちへと白人おばさんのオフィスに導かれた。

窓口の黒人職員も同罪とみなされ一緒に連れてこられたもし、おばちゃん一人だけ連行されたのだったら、おばちゃんはもっとぐれて、ライセンスは取れずにビジネスはぱ~だったかもしれない。

この時の管理職の白人おばちゃんはわりと公平で冷静に何があったのか二人に尋ね、お互いの謝罪を促した。おばちゃんはライセンスが取れなかったらどうしようと氷点下まで冷えていたので、職員に謝罪した。こういう時、外国語は便利である。決まり言葉をつるつる言えばいいし。

その後もお役所仕事はのたくらと進んでいくのであった。

mikie@izu について

海外在住何十年の後、伊豆の山に惹かれて古い家を買ってしまい、 埋もれていた庭を掘り起こして、還暦の素人が庭を造りながら語る 60年の発酵した経験と人生。
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