シルバータビー

おばちゃんは 猫を亡くしても同じ種の猫は飼えなかった。
白キジの息子は唯一の息子であって、2番目の白キジがいていいわけがない。ひとり息子の記憶を上書きするような同じ種同じ毛皮の猫を飼えるわけがない。
ショートコートのブルーはナナちゃんだけで同じアビーがいたらナナちゃんの思い出が薄れてしまう。

アメショウーの天は丸顔でおじちゃんの好みだった。
シルバータビーでやや横長の丸い頭とぱっちりした目。とどんくさくて声が出なくてフゴフゴ鼻を鳴らす。おじちゃんの膝には乗らないくせに、気が向くとおばちゃんの膝を狙ってじりじりとやってくる。あごの下を撫でられるのがお気に入り。

耳道が狭いために細菌感染で死にかかり手術をしたのだが、病院を嫌がらなかった。天ちゃん、大物ですね、とドクターに言われておっとりした性格はきつい性格の紫音にぴったりの相棒だった。

紫苑に食べかけのごはんを取られても文句を言わず黙ってお気に入りのキャットタワーかベッドの上で昼寝をするのだった。おじちゃんの枕もとのヒートパッドを紫音に取られたのでおばちゃんの足元に丸くなって眠る。おばちゃんは重みを感じてなるべく寝返りをしないように注意して眠るのだった。

紫音と天はトムとジェリーのようにベッドルームからリビング、リビングからオフィースと二匹で全力疾走を繰り返してじゃれあっていた。天は突然電池が切れてお気に入りのマットで爆睡する。活発な紫音についていくのが大変なのだ。

ふわふわとしたアメショウの毛ざわり。太目の足。水かきの間に指を入れてモミもみすると点は気持ちがよいのか指をパーに開く。もっとやってって。
アメショウにもう一度会いたい。それは天ではないかもしれないけれどもう一度モフモフしたい。
さみしい。

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