ドクターに聞いてみよう・2

3週間前に突然食欲のスイッチが切れた。
朝目が覚めるとむかむかする。毎日、二日酔いか船酔いみたいだ。果物とスイーツなら食欲がわずかに動く。右横腹も痛む。熱はない。

熱がないので炎症や膿瘍は考えづらい。切除した肝臓方面の痛みではなくもと胆のうがあったあたりに一番近い気がする。胆のう切除後症候群かなぁ?

あるいは胆管か?おばちゃんの胆管は切除していないはずである。主治医は胆管を切除したとは言っていない。患者が聞かないことは何も言わない医者でもあるが。
切除後症候群はさっと検索しただけでは出てこなかったので、まったく知識がなかったおばちゃんは手術後の最初のフォローアップで主治医にちゃーんと聞いてみたのである。

胆のうは胆汁を貯める臓器であって切除すると胆汁が肝臓から流れっぱなしになるわけですが、実際それで消化器系には不具合が起こらんものですか?
すると、主治医は「大丈夫ということになっております」と含みを持った言い方をした。おばちゃんは「へーん」というしかなかったのだが。

「大丈夫ということになっております」としれっと口をぬぐっていた主治医は、なかなかのタヌキである。胆のう切除後症候群は胆のう切除の患者の3割から4割に発症するらしい。起こるか起らぬかわからない時点で素人相手に、症候群を説明するのは面倒だから何も言わなかったのだろう。

年間百人も胆のうを切っている50代半ばの脂ののった専門医にしてみれば、単純に素人に余計な疑問を持たせれば説明が面倒くさいだけ。時間を費やして患者を不安にさせるより、実際症状が起こった時に定期検査のデータをみて総合的な判断をして説明したほうが都合がよいだろう。

これと反対なのがうちの猫たちのかかりつけの動物病院の若先生である。
彼はペットの命を助けたくて熱意に燃えている。元気のない天を抱えてクリニックに行くと、若先生はすべての病気の可能性を考えてみましょう、FIPの可能性もありますね、、と自分の知識カードの手の内をすべて晒そうとする。

イヤイヤ、おばちゃんはそんなことをされると情報がとっちらかって面倒なので一番可能性が高い感染症からまず考えましょうや、と若先生を現実に引き戻すのだ。

腹の中はWindowsと一緒だ。
ブラックボックスになってしまって、何かのエラーがでて初めて不調がわかる。「プロファイルがありません」とか、アップデート後にエラーが出たりする。FAQを調べて対処法を試みたりするわけだ。

腹の中もWindowsと同じブラックボックス。
症状があれば切って開けてみればはっきりするが、不調が出るたびに毎回腹を切って中身を覗くわけにいかんじゃないか。外からわかる症状から推測するしかない。食欲不振が続くのは術後症候群なのかどうなのか。

またまたアスク・ど〇たーで掘ってみる。
おばちゃんと同じような症例が出てくる。CTをとっても異常はなかったという報告もついている。なるほど。12月には造影剤でCTの予定が入っている。

たまたまお昼にセールだった牛肉があったのですき焼きにしてみた。案の上、あまり食べられなくて食後胸焼けがして胃酸が上がってくる。
そこでハタ!!と気が付いた。

最近、そういえば寝付くときに左向きになるとのど元が胃酸ですっぱくて閉口していたのだった。あら、いやだ。逆流性食道炎じゃない。

胆石患者には逆流性食道炎がしばしばみられるのだ。
胆汁は肝臓で作られ胆管を通って胆のうに貯められる。食物が入ってくると胆のうは収縮してため込んだ消化液の胆汁を十二指腸?だかに送り込む。

胆のうを切除してしまうとため込むことができない胆汁が肝臓から流れっぱなしになる。食べ物の消化は肝臓から流れてくる胆汁に頼ることになる。したがって胆汁が十分でないせいで、揚げ物や肉の脂身などを多くとると消化不良や下痢の原因になる。胃液の分泌は増えるのか?胃酸過多ぎみになって胸が焼けるのだ。

おばちゃんの食欲不振の原因の一つは逆流性食道炎かもしれない。そういえば胆石で切る前にはよく胸が酸っぱくなって薬局でガスター10を買って飲んでいたな。それほど効果はなかったが。胃の括約筋みたいのが緩んでいる場合もあって薬だけではなかなか治りにくい。

二日酔いは逆流性食道炎にが原因の一つかもしれない。右腹の痛みは胆のう切除後症候群かもしれない。あるいは胆管か肝臓に再発があるのかもしれない。

肝臓には痛みの神経がないらしい。
「沈黙の臓器」は痛いといわない、ある程度は。がんが2センチを超えて発達して他の組織を圧迫するとか、組織を破るなどという場合になって初めて痛みが生じるらしい。ただし、おばちゃんは肝臓そのものを切られたらめっちゃ痛かったぞ!

アスク・ど〇たーの質問でも再発が発覚するのは術後6か月から2年の間が一番多いみたい。
食欲不振が再発の兆候ではないとは断言できないけれど、それは来月のCTと血液検査のマーカーの値が正常なら逆流性食道炎もひっくるめて切除後症候群だろうか。

可能性としては再発は排除できないわけで、アスク・ど〇たーを掘ってみる。
胆のうがん関連で2200以上の症例があるから。いまだに契約(月額330円)はしていない。患者の質問に対するドクターの回答は有料会員だけが読めるのだが、おばちゃんは今のところ読めなくてもいいのだ。

何故かというと、関連する症例ケースが多いので、質問自体が回答になりえるから。
例えば、
質問:ステージ4で黄疸が出ましたがどのような治療法があります?
という質問があるとすると、別ケースは
質問:黄疸のために胆道にステントをいれましたが炎症を起こして熱があがり入院中ですが、。
あるいは、、
質問:ステントは3か月ほどで詰まってしまい取り替えないといけないといいますが?
などと、別人症例の質問自体が答えになってたりする。

アスク・ど〇たーの質問症例を読むと胆のうがんのステージからの予後と再発・治療の方向がわかる。がんセンターやクリニックの情報ページでは、再発についての情報は様々な場合がありますので、、とか研究論文や治験方面に行ってしまう。限定的なニッチな方向になってしまうわけである。

アスク・ど〇たーの症例をだいたい総括すると、胆道がんの転移は以下のようになる。
再発はやはり術後6か月後とか1年ちょっととかに多い。
大抵は肝臓、十二指腸、すい臓、腹膜とリンパへの転移。CTスキャンで見つかるとしたら3ミリくらいの大きさ。定期チェックはしているのだが、3か月前では映らなかったという質問もあった。転移巣の進行はわりと速いようだ。

肝臓の転移の場合は黄疸が出る場合がおおい。
胆管がつまって閉そく性の黄疸が出るので管にステントの管をいれて減黄する。ステントの留置で細菌感染のリスクもあり、3か月ほどでつまるとか、3回までしか交換できないとか、あるいは天然で管の奇形があってステントが入らないという症例もあった。まことに転移というのは様々であって、ひとくくりにするわけにはいかんのだね。

腹膜に転移の場合は、手術でとってもまた再再発してきりがない。腸閉塞イレウスを警戒するのが腹膜播種だ。まれに骨の転移があって痛みが出る場合は放射線で焼く。

~とこのように段階的に予測できる症状と対処法がわかるわけだ。

ただし、こんな質問もあった。
うちの母は70代ですが先日胆のうがんステージ4肝臓に転移があると診断され手術も不可能だと言われたのですが本人は自覚症状が全くなく元気なんですけど、いったいどうなっているんですか?という質問が3例くらいあった。
幸せな症例じゃないか、とおばちゃんは思うのだが。

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