Boy in the Box

65年前に身元不明の4歳の男の子の名前が米国DNAデータ・ベースのおかげでついに判明したという記事である。―CNN ほうほう?
https://news.yahoo.co.jp/articles/06d305dac8e4e0cb81785beefba0abe3bfb2d4c8

渡米したころ80年代からカリフォルニアでゴールデン・ステート・キラーとかフリーウエイ・キラーとか呼ばれた連続殺人事件があった。犯人はどうも警察関係ではないかとささやかれていた。全米で一番安全な市というのに2人殺されていた。先人の日本人おばさまからこういう事件があるので、フリーウエイで警官に止められても気を付けてねと念を押されていたのだ。

このゴールデン・ステート・キラーが2017年ついにDNAデーターベースのおかげで解明・逮捕された。世界仰天ニュースだか2~3の番組で紹介されたのでご存じの方もいるかもしれない。

今度は65年前の未解決事件である。
1957年フィラデルフィアで男の子の死体で見つかった。名乗りでる家族もなく身元不明のまま65年未解決事件として眠っていた。
男の子は名前を付けられることもなくBoy in the Boxと呼ばれていた。

ヘッドラインの記事では短すぎるので事件を報道していたフィラデルフィア・インクワイアラーを掘ってみた。
https://www.inquirer.com/news/live/boy-in-box-philadelphia-name-identity-solved-20221208.html

要約すると事件解決のきっかけはこんな風に起こった。
2017年クリスマスが近づく中、ジャスティン・トーマス(40)がガールフレンドのプレゼントとしてAmazonでDNAキットを買った。アメリカ人だから自分自身のルーツご先祖を探すのは面白いだろうと思ったのだろうね。

ところがジャスティンと彼女はクリスマス前に破局してしまって、結局キットをあげることがなかったのだ。で、彼は、彼女が使わなければ俺が使えばいいんじゃね、って自分で試した。DNAサンプルをAnsestry.comに送ったのだね。

その結果、法医学家系学者forensic genealogyから電話が来たのだ。彼のDNAはフィラデルフィアの未解決事件の被害者につながるもので、この未解決事件を解決するためにはサンプルが足りないので家族のDNAも欲しいと。そこでジャスティンの姉妹と母がDNAを提供した。

その結果、65年前の4歳の男の子Boy in the Boxと呼ばれていた子はジョセフ・オーガスタス・ザッレッリJoseph Augustus Zarelliだと判明した。

ジャスティンの家族は男の子が母のいとこではないかと信じている。母のおじさんはザレッリで祖母の兄弟もザレッリ。デラウエア郡に引っ越してくる前は、ザレッリ・ファミリーはフィラデルフィアの西に住んでいた。

男の子Boy in the Boxは殴られほとんど裸でデパートJC Pennyの箱の中で見つかった。それから何十年、コールド・ケースの解決のため2016年に解剖写真から被害者の2Dの復元画像が合成された。それでも手掛かりになるものはなく、2017年にジャスティンがDNAデーターベースにサンプルを送ったことから一気に身元が特定されることになった。

ところがだ、Boy in the Boxの名前を公開したフィラデルフィア警察のキャプテン、ジェイソン・スミスはジョセフの両親の名前を公表することを拒んでいる。ジョセフの両親はすでに亡くなっているが、父方母方の親族は多くいるので敬意を払うために情報は公開しない。捜査中なので情報は差し控える。

だそうなので、おばちゃんとしては消化の悪い油ものが喉につっかえているようにすっきりしない。ゴールデン・ステート・キラーのようにきっちり解決しないのであろうか?
目星がついているようだが捜査中なので公表できんというニュアンスもあるようだ。この事件の続報を待ちたい。

ただ、この記事でわかるのはDNAデーターベースの発達と犯罪解決へ応用できる社会の柔軟性である。移民の国アメリカ人は自分のルーツへの渇望というか、広い国土と多くの人口の中で自分という人間の民族・レース・出身を知りたいという欲望は古い国の民族より強いかもしれないと思う。

主人は北欧系だから背が高くて色が白いとか、この人が小柄なのは先祖がフレンチ系だからとか自分のルーツを語るときアメリカ人は何か嬉しそうだ。自分がJohn Doe やJane Doeではなくて、自分が帰属する確固とした民族と家系と血脈につながる安心感が味わいたいのだろうか。

最後の徳川将軍の別荘がその辺にあったり家臣の子孫がその辺に生きていたりする日本。庄屋の子孫で江戸時代から同じところに住んで、自分も歴史の一部であるような地方。
自分のルーツは調べなくても同じ姓の親族がそこらに生きているのが日本の地方である。

日本で国民のDNAデータベースが構築されてそれが未解決事件の犯罪捜査利用されるのはたぶんないかもしれないなぁ。マイナンバーカードでさえ普及させるのに苦労する国と国民だから。DNAの登録など究極のプライバシーを国に与えるかっての。

それにしてもこのフィラデルフィア・インクワイラーの記事って文章がひどいよね。

mikie@izu について

海外在住何十年の後、伊豆の山に惹かれて古い家を買ってしまい、 埋もれていた庭を掘り起こして、還暦の素人が庭を造りながら語る 60年の発酵した経験と人生。
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1件のコメント

  1. 凄いお話ですね。それにしても、DNAキットが売られているなんて知りませんでした。それをクリスマスプレゼントとしてあげようとするのもどうかと。。そしてその結果は誰かがしっかりモニターしていると。。結局お金を払って自分のDNAを国に提供しているようなものなんでしょうか。。でも、この件は身元が分かってよかったと思います。これからどうなるんでしょうね。映画になりそうなスト-リ-です。あのドラマのコ-ルドケースは好きでよく観ていたんですが終わってしまったみたいですね。

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