さてコンピュータースキルはおばちゃんをすごく助けてくれた。
例のエステティシャンのせいでコートに行くことになってしまったが、彼女の違法行為を立証するのはなかなか難しかった。密室で第三者がいなかったのね。幸いと言うかおばちゃんはエステで施術を受ける2時間前に整形外科にボトックスを射ちに行ってた。クーポンを配ってて安かったんだよ。
ドクターが注射を打つ前におばちゃんの眉間(マイクロソフトのおかげで皺が深くなった)を撮影し、注射を打った後にまた写真を撮った。
そうだ!あの整形外科のカルテ・コピーがあれば、少なくとも同日2時間前の顔にレーザーの跡はなかったことが証明できる。
おばちゃんは早速整形外科に電話し秘書に要件を伝えたが、断られた。この国では患者にMedical Releaseの権利がある。自分のカルテをコピーしてもらう権利がある。それなのにこのドクターも秘書も外国人で患者の権利に疎いらしい。困ったわ。
おばちゃんは手紙を書いてカルテのコピーが欲しい。コピーなどの事務費は払いますとクリニックに送った。秘書から返事がきてドクターはこのような要求を受けません。患者の権利を知らないらしいクリニックにホントに困ってしまった。
弁護士を使えば確実にMedicalReleaseはとれるけど、証拠固めの段階でコスパが悪すぎ。おばちゃんはどうしたらドクターKに直接こちらの要求を伝えられるか考えた。電話では秘書の壁が突破できないから郵便を使うしかない。
秘書が封筒を開けずにドクターに渡すようにするにはどうしたらよいか?
この国で暮らしていてビジネスをやっていて一番緊張する郵便物はガバメント系である。
白の横長サイズ10封筒で左端に州のロゴが付き、差出人の役所フォントはHelveticaだ。税金の未払いとか、ライセンスの更新とか、クレームの通告とか、。秘書にはさわってほしくない封筒であったりする。
そこでPhotoshopの出番である。まず同心円を書きフリー画像でギリシャの女神像を拾い女神の背景にリンゴの木かなんかを配置する。オレンジの木だと詐欺罪に問われるのも嫌だからね。
パイナップルでもよかったかも。同心円の間にネットで拾ったラテン語を円のカーブに沿わせて配置する。
確か「税金は払ったか」だったような気がする。ロゴの下にはこれまたラテン語で「鉄は熱いうちに打て」を配置した。
そのロゴをサイズ10の封筒の左端に印刷し宛名は無論ドクター本人宛てである。
中の手紙にはMedicalReleaseは患者の権利であるので私のカルテのコピーと顔の写真を送ってくださいとお願いした。事務費として10ドルの小切手と返信用封筒を同封した。返事が来た。チャンとカルテのコピーが入っていた。小切手はそのまま返されてきた。
カバーレターがあってドクターKは何故かすごく怒っていたみたい。おばちゃんはOCに住んでるから封筒に住所OCと書くのは不思議じゃないし自作のロゴはメディカル・ボードや州政府とは似ても似つかないから、おばちゃんは何も間違ったことをしていない。
