Set foots to others shoesという慣用句がある。
他人の靴に足を入れてみる、、、他人の気持ちを考えてみる という意味だが、。
もしこの人の靴に足をそっと入れてみて歩いてみたらどんな気がするだろう? この人の人生に成り代わってみたらどんな風かしら?と、それ以上に解釈したいときもある。
文字通り他人の靴に足を入れてみて、その生活の一編を味わえる個人動画がYouTubeにあふれている。
コタツから一歩も出ずに他人の靴に足を入れて人生を覗きみちゃうのね。
テンのFIP治療、屋根の吹き替え、車の修理、Thinkpadの買い替えなどがつづいて、おばちゃんもヘロヘロ笑ってばかりいられなくなってきた。おばちゃんは35歳で酒もやめてしまって庭も休眠で草取りもできず気を休めるものがない。
スイッチを切ってしまいたい。
手術の全身麻酔はまこと最高だった。プチンと意識が途切れる。マイケル・ジャクソンがはまった理由もわかる。あ~あ、意識が切れたらいいのに。ブラウザーでお気に入りを巡回しているとOff Gridと、キーワードが目に留まった。
Off Grid !ええやん。
斧一本を手にして北極圏の針葉樹林でシェルターを建てる男。文明から逃れて山の岩陰に一人入れる避難小屋を作る男と犬。手にしているのは斧かノコギリ。明かりはロウソク一本。
はぁ、静か、、。
動画サイトのおすすめはOff Gridばかりになり、ふと気をそそられたのは、アジア系のお姉ちゃんが竹を切る動画である。竹を切って家を建てている。
竹で家を建てる?
おばちゃんはぐっと興味をそそられた。どうやらベトナムのようだ。
竹藪やバナナが無造作に生えている野っぱら。ベトナムお姉ちゃんが手にしているのは無骨なナタである。
ナタをふるって竹をたたっ切り穴を掘って支柱として建てる。竹を割って枝折り戸のように編んで壁と垣根を作る。屋根を葺くのはその辺にいくらでも生えているニッパヤシの葉だ。
竹で家が建つのか?!
何もなかった野っぱらに竹の家が一軒建った。電気はない。
昔、曽野綾子がバナナの育つ国では人はたやすく生きていける、との意味を書いていたが、おばちゃんはそれを、バナナを食べれば生き延びられると解釈していた。どうやらもっと広範囲の意味のようだ。
バナナが無造作に育つ気候の国では、竹も無造作に伸び、年中タケノコが育ってヤシの実、果実、山の芋、カエル、淡水貝などが無造作にとれる。
Ly Thi Caというプリプリとした健康そのもののお姉ちゃんは、無尽蔵の竹を切り出して鳩小屋、ヤギ小屋、鶏小屋を作る。太い竹を縦に割れば犬や猫や家畜のご飯皿代わりになる。
タケノコは茹でて塩漬けにすれば保存がきくし、タケノコを刻んで塩と唐辛子を混ぜて調味料を作り、また竹は節をぬけば樋となって渓流の水が引ける。
建ててよし、食べてよし。竹はバナナより活用の幅が広いのではないか?
二の腕もぱっつり張った健康そのもののリー・チー姉は庭や畑では裸足だ。冬に長袖スエットを着るくらいで、半そでのシャツ姿。土間の竃には長いままの竹を燃料としてくべる。きちんと切りそろえて薪にせんでもええんやで、という新鮮な常識!果物のチェリモヤに似た釈迦頭を枝からもぎ取って皮を剥き、その場で無造作にかぶりついて、タネはぷっと吹き飛ばす。衒いもない自然体のリー・チー姉さん。
ある日、近所の製粉所に出かけていくと米を買いその場で挽いてもらってさらに麺にしてもらっていた。ベトナム・フォーだ。角がなくソウメンのように丸いやつ。もしかしてブンというやつかな。おばちゃんは人生でベトナム麺の製造過程をこの目で見ることができるとは思ってもみなかった。NHKよりよほど有益である。チャンネル登録をした。
ジャーナリストで作家の近藤紘一は、かつてベトナム駐在派遣員の時にベトナム女性と結婚した。彼がジャーナリストとして著作や会社業務で悩んでいるときに、ベトナム人の奥さんは、辛かったら会社なんか辞めればいい。ベトナムの田舎ならコメとヌクマムがあれば生活費がかからないから、と彼に提案していたが、リー・チー姉さんをみるとどうやら本当だ。
リー・チー姉さんが飼う豚やヤギや鶏は小柄だがみんな健康そうだ。挽いたトウモロコシやミミズ野菜くずなどを食べ庭で走り回って育っている。人生、生きていくには大したものはいらないんだ。必要なら竹で作ればいい。
おじちゃんも姉さんの動画をタブレットで見ている。
時々この動画は誰が撮ってるんだと疑問がわく。
おじちゃんは絶対映さない母屋に衛星アンテナと太陽光パネルと最新型マックがあるんじゃないか?と毒を吹き込むので止めてくれと思う。
心が疲れた時のおばちゃんのおすすめ動画は
イギリスの草刈り動画Home Renovation Dreamer
Off Gridでシェルターを建てるLuxon Bushcraft
アゼルバイジャン村の生活Kənd Dadı
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トルコの獣医 Tugay İnanoğlu
ベトナムの粉瘤つぶし(とても器用で手際がいい)